経済・政治・国際

2011年6月 9日 (木)

石巻訪問報告 ー 政策の優先順位をつけよ!

石巻と仙台を訪問して、諸事雑事であっという間に10日近くが過ぎてしまいました。現地の訪問で得た情報は、東京で聞いていることや想像していることと違っており、そのギャップに驚きましたが、まずはこのブログをお読みの方々にも情報共有させていただきたく、ご報告します。

まず、今回の訪問の目的は、中小事業者の現状を把握し、対策を法律家として考えることにありました。したがって、被災者一般の問題については必ずしもフォーカスしていないことをあらかじめお断りしておきます。また石巻からみた政策的課題の整理となっていますが、ここで論じることは東北のそれぞれの地域に適用が可能なものとなっていると考えております。

1.被災地の被災企業の支援策は、地域ごと業種ごとに策定し迅速に実施すべきである。

これはこのブログでもある程度想定をしていましたが、やはりそうでした。ただ現実はもう少しきめ細かい考え方を要求しています。

河北新報によると、石巻は津波による被災地域において被災した4人以上の事業所が1700社以上存在、その従業員数合計は約1万8千人、年間の売上高は推定で約4500億円に上ります。仙台に次ぐ人口16万人を抱える都市、石巻は、日本製紙石巻工場を核とする製紙業、建材メーカーのノダの子会社・石巻合板、セイホクなどを中核とする建材・合板業、ヤマニシなどの造船業、石巻港を基地とする漁業・水産加工業、そしてサービス業の5つに大まかに分けられます。

このうち製紙業、建材・合板業は中核工場の復旧作業が行われており、この業種のサプライチェーンにあたる下請・関係業者も大きな設備を必要とするものではないので、中核工場の復旧の日程が決まれば、サプライチェーンにある企業も中小企業庁の東日本大震災特別融資制度(最長3年間据置、低利・長期融資)を利用して設備復旧を行うので、徐々にではあるが復興し、負債比率はあがるが大丈夫であろうという見方がされています。ただし、海沿いの堤防や港のすぐそばにあるので、建築制限などの影響がでることも考えられます。

しかし、造船業は、韓国メーカーに対抗して技術力・価格競争力もあり、受注も受け、設備もシンジケーション・ローンで高額な資金を調達して設備を更新したばかりなのに、津波で徹底的に設備が破壊されてしまっています。復旧にむけての具体的なスケジュールも出せていないようです。したがって、このサプライチェーンにある企業群もまったく見込みがたっておらず、事業者も事業のめどがたたない以上は借入も起こせない状況であるということです。時間がたてばたつほど廃業のリスクのみが高まってきます。しかも港湾沿いにあり、土地が約80cm陥没し、建築制限も9月までは行われていることから、動きをとろうにもとれない状況です。

漁業・水産加工業は、基地である石巻港の設備が津波で破壊され、陥没しています。市では代替地を探しているようですが、漁港には排水設備、廃油処理設備、冷蔵設備などの機能が必要なため、その復旧には数億円から10億円単位の資金が必要ですが、復旧は遅々として進んでいません。

サービス業については、津波の被害地域以外の地域で営業する飲食・食品業は競合店がなくなってしまったこと、救援に駆けつけている政府・県関係者、NPO等ボランティア、企業の応援者などの企業関係者等で震災特需状況であるので、被災していない地域に代替店を設けることができれば再開して、それなりの営業を行える見込みがあります。しかし、現状はすべてが見えないということで、復旧への動きは弱いという現状です。

このように業種によって状況は違うので、それぞれの業種にあったメニューを用意する必要があります。

漁業・水産加工業にとっては、港の機能を一日でも早く回復させる必要があります。零細業者及び高齢者が多いこの業種では、港の復旧が遅れれば遅れるほど廃業のリスクは高まります。自営業者が多いので、自営業者に対する復興支援策がほとんどない現状では生活費を預金から取り崩しつつ日々を生活している状況にあると想定されます。しかし、港の復旧には港を管理する国・県・市、港を運営する県や市などが出資する会社、港に通じる道路などのインフラを管理する国、県、市が、それぞれ一定の分野について権限をもっており、復旧には国、県、市などが一体として迅速な対応を行うことが必要ですが、そのような体制にはなっていないようです。その体制を作り、港の復旧の工程表を一日でもはやく示すことが第一に打たなければならない対策となります。そのための資金についても、港を運営する会社に対する資本投下の方法を同時に考える必要があり、インフラ投資の方法を固める必要があります。

造船業については、アジアの競争の中で勝ち残ってきた高い技術力・価格競争力を誇る東北の造船会社の設備復旧を国策的に行う必要があり、そのためには公的資金による特別貸付のほか、この段階(すなわち、社会政策としてキャッシュフローもなく資産もなくなった会社への政策的投資を行うべき段階)でも投資してくれる民間資金を導入するための導管を設置する必要があります。そして早く設備復旧に着手し復旧させ、受注を引き戻すことが必要です。ここでも復旧への工程表が必要です。さらに、造船所を支える下請・関連会社もかなりの被害を受けている点からみて、造船会社を頂点とした資本関係がないが一種のグループ企業とみて、サプライチェーンを構成するそれぞれの会社への資本注入も実行しなければなりません。

サービス業については、浸水地域の土地利用がどうなるかでかなり左右されます。代替地を浸水地域以外に見出すことができる事業者で被災前も営業利益がそこそこでていたものは、特別融資制度で一時も早くキャッシュフローを回復するようリスクをとれる環境をつくってやることです。すなわち、石巻全体の復興の見通しがつかないことが、事業者の復興マインドに影を落としており、「もしここで特別融資で借りても返せなくなったら終わりだ」という心理に陥っています。しかし、このような事業者はリスクをとって復旧へと向かわなかったら廃業のリスクのみ大きくなるばかりであることを、存外気づいていません。さらに、特別融資制度は元利据置最長3年という融資とはいえ資本性資金を提供するものであり、それを受けてキャッシュフローを回復させ数ヶ月~2年操業すれば、将来の事業計画もみえてくる可能性があり、もしキャッシュフローが見えて営業利益が確保できそうならば、負債比率が上がりすぎても民事再生法を利用したリストラが可能であることが見えていないことが多いのです。したがって、こういう事業者には、今回特別融資で失敗すれば終わりというわけではなく、次のチャンスもありうるということを理解させ、リスクを今とれるところにはとってもらうことが、優先的な政策目標とならなければなりません。民事再生だけでない、中小企業向けの事業再生ADRのようなものが必要です(その場合は金融機関が貸出債権を無税償却できるようにすることが肝要です)。

2.地元金融機関は資金量が増加しており、運用先の確保が必要。二重ローン問題は将来起こりうるが、今の課題ではない。

金融庁の弾力的な監督指針の運用、保険会社の努力により、被災者への保険金支払いが迅速になされています。その結果、金融機関の預金量は3月に比べて20%も増加しているといわれています。今後は災害救助法及び災害弔慰金の支給等に関する法律による災害弔慰金(死亡の場合は一家族について500万円)などの弔慰金の支給が起こってきます。さらに、被災地にはまだ5%しか配布されていない1700億円の日本赤十字に寄せられた義援金の分配がおこります。被災企業に対する貸出債権の区分は当面見直す必要がないため、引当金を積む必要はありません。したがって、今後とも、しばらくは地元金融機関の預金量は増加していくものと予想されます。

他方において、廃業を決意した事業者の一部は借入金の弁済を行う方もあるようですが、多くは預金をそのままにしています。これは津波被害地域の建築制限が施行され、また、陥没地域の処置が国の復興会議の方針をうけて市レベルで決まってくるという政治スケジュールから、あるいは建築資材の確保が困難という状況から、建物の大幅立替が起こらず、せいぜい小修理にとどまっていることが理由として考えられるほか、日弁連が主導した二重ローン問題について、「徳政令」が発せられるのではないかとして様子をみている事業者も多いからであると推定されています。

地元金融機関の自己資本は当面は心配がいらず、むしろ運用が問題というのはなんともびっくりしますが、これが地元では現実に進行している現象なのです。地元金融機関の資金の運用は当然貸出が第一であって、したがって、金融機関にとっても1で指摘したような業種別の優先的対策を、日程がわかる形で工程を示してもらうことがもっとも重要なのです。中小零細企業が多い東北では、金融機関にとっては、地元中小零細企業と一連托生であり、被災事業者と金融機関の利害はこの点でまったく一致しています。

3.社会政策的投資を第一に行い、やがて純粋な投資を民間が行うための導管が必要。

復興の段階ではいまだに最初の段階にある東北にとって、今は社会政策的な投資が必要であります。たとえば造船業に対する投資、あるいは港湾設備等に対するインフラ投資を、国策として行う資金が必要です。

国の財政に十分余力があるときは、国からの交付金でこのような政策的投資を行うことが考えられますが、歳出90兆円、歳入42兆円であとは国債という借金で補っているわが国にとっては、非常な難題です。阪神・淡路大震災の復興総事業費16兆3000億円のうち、市街地整備に費やされた資金は実に9兆8300億円に上っており、これとは別にまちづくりに2兆8350億円が費やされています。道路、港湾等のインフラ整備にいかに資金が必要かが理解されるわけですが、30兆円とも36兆円とも言われている東日本大震災の復興事業費をかまなうには、民間資金を導入することが必要であることは、このブログで主張してきたところです。このためには、一日でも早い震災復興ファンドの設立が必要です。

ただし、この震災復興ファンドは第一段階では社会政策的投資を行いますので、その本質は義援金的色彩が強いです。しかしその段階を抜けて、企業にキャッシュフローが生まれて業務を1年~2年程度行い計画が見えてきたところでは、今度は投資としての事業再生が必要になるので、そのためのファンドになるという、企業の復旧の度合いに応じてファンドの性格も変わってくるという性質があるようなものでなければなりません。そのための構造はまた別のエントリーで論じますが、今、設立すべきはそのような変化していくファンドなのです。

4.事業者に対する支援策として、災害救助法23条1項7号の生業資金の交付を。

被災事業者はその規模が小さくなればなるほど、非常に厳しい状況におかれ、国からの支援策も貸付以外はないという状況です。しかし、被災者が復興に向けて立ち上がるためには、家族と一緒に暮らせる仮設住宅と働く場所が必要です。従業員は雇用保険等のセーフティネットがありますが、事業者にはなく、生活資金は預金を取り崩し、あるいは義援金を受け取るだけという状況にあります。これでは働く場所の提供が極めて困難になります。

たしかに、過去に出版された災害被災者の法律相談には、解雇された従業員の救済についての叙述はありますが、事業者が生活をどのように支えられるのかについての記述は皆無です。この点、ようやく日弁連も5月26日に声明を出し、災害救助法23条1項7号により、中小零細企業者に対する生業資金を給与すべきであることを訴えています。復興の第一段階にはぜひとも必要と思われる運用であるので、効果は予想よりも限定的かもしれませんが、業務を復旧できる中小零細事業者もでてくると思いますので、ぜひ政府は実行すべきであると考えます。

5.最後に

ー国、被災県市町村は一体となって優先順位が高い中小事業者への支援を即時実行せよ!

現在の菅内閣のもとでは、復旧に向けた対策は効果的に打たれているとは到底いいがたい状況です。早く退陣し、新しい首相のもとで国、被災県市町村が一体となって、きめ細かい対策を優先順位の高いものから次々にうっていくことを強く望みます。それが真の政治主導であり、政治の責任であると思います。

2011年4月25日 (月)

地域別震災復興支援ファンドと事業再生手法(1)

このブログで何回か主張しました震災復興支援ファンドのうち、地域別に設立する震災復興支援ファンドの構造と中小零細企業への再生支援の方法について考えてみたいと思います。

漁業を例にとります。漁業に従事する方々は東北の被災地にあまたいますが、いずれも中小企業が保有し運用する漁船に雇われ漁業員として乗っているか、あるいは、個人個人で小さい漁船を所有し漁業を行っているかどちらかでしょう。

まず中小企業は、保有する船が完全にやられていると思ってよいでしょう。漁具も流されだめになっているでしょう。会社であれば、資産の部のうちの固定資産が完全にやられている状態です。借入金などの負債を考えれば、この状態では、おそらく債務超過の状態でしょう。民事再生法には、のせられません。事業そのものがとまっておりキャッシュフローがないばかりでなく、仮に事業が動き出しても、債務超過のレベルがひどく、民事再生の手続にはめるのは難しいように思います。仮に再生開始決定がでても(民事再生手続開始の要件は「債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」または「債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」です)、民事再生計画の承認に必要である再生を行えば清算価値を上回るという保障があるという要件(清算価値保障原則)を満たせないと思われます。

このような中小企業再生のためには、第一に負債の主要部分である借入金の免除により負債の部を軽くしてやること、第二に資本の部に新たな資本注入をして、漁船で修理可能なものは修理し、設備を回復し、ひと時でもはやく海にでたい従業員を海に送り出し、漁獲を確保してキャッシュを生む活動ができるようにしてあげることが必要です。第三に事業活動をささえるだけの無利息ないし低利の融資が必要です。

第一の部分の債務免除は銀行、信用金庫、信用組合、漁業協同組合などの債権者の協力が必要です。これを行うためには、債務免除により痛む自己資本に対する公的資金注入と、債務免除にかかる債権の無税償却が貸し手側には必要です。この役割は、今、政府が進めている金融機能強化法による金融機関の自己的な資本注入に頼ることになります。政府保証枠は12兆円ですから、相当の枠がありますが、これは結局、国の負担となります。

第三の部分は、公的融資、金融機関からの融資となります。これに付け加え、阪神・淡路大震災のときに考案された震災復興基金を設立し、機動性ある資金を確保してその一部を融資にまわすことも考えるべきでしょう。無利息融資の部分を増やしてやることが必要だからです。ただし、債務負担のレベルをあげると、震災後数年で耐えられなくなり、結局倒産にいたる確立が高いという事実があります。ですから、無利子の期間5年程度の融資割合を多くし、有利子負債の割合を抑えてあげるようなアドバイスが必要です。それには資本注入後、業務を再開した後のキャッシュフローと業務活動に必要な費用の予測が必要ですし、また無利子負債、有利子負債のバランス、資金繰表の作成なども必要です。

第二の部分ですが、この資本注入のために地域別震災復興支援ファンドが必要です。なぜならば、国や地方自治体の行う投資活動については、厳密な法的な意味ではないとしても投資対象となる事業は「公的な」ものでなければならないという政治的な制約があるからです。仮に公共目的がない純粋私企業に資本注入を行うことが可能だとしても、投資ができるレベルの中小企業は一定の規模以上に限定されてしまい、どの企業をえらぶのかどうかという公平性の問題がおきる可能性が大です。

それを避けようとすると、公益目的の事業を行う公営企業しかありません。しかし、何十もの私企業を母体として(というか解体して)公営企業とするしかないとすると(宮城県知事の提案はこの発想であろうかと想像しています)、公営企業としての根拠法が必要であり、しかも新設となりますから、役所主導でことが動かざるをえません。一般的な私企業を母体とすることでは公営企業とすることは難いと思います。

しかし、いくつもの私企業が被害をうけているからこそ、そこに働く経営陣と従業員の意欲に期待すべきで、被害の実情もやってきたことも違う人たちを無理に公営企業のもとに統合のは、組織が大きすぎる、チームワークをさせるまでに時間がかかる、効率が悪くなるなどのおそれがあります。餅は餅屋のことわざのとおり、事業の運営は意欲の高い民間にまかせたほうがいいと思います。うまくいくところもあれば、残念ながらうまくいかないところもあるでしょう。しかし、自助努力によって生き延びて強くなってくる企業こそ将来が担えるのです。モラルハザードをおこさないためにも、その淘汰も覚悟すべきでしょう。

また、このブログでみたとおり、国や地方自治体の財源には限度があります。地方自治体も公債を発行できますが、神戸市の実質公債費比率が震災後も改善しないのをみると、震災の影響が長く自治体財政を脅かすものであることが実証されており、なるべく避けるべきであると思われます。福島、宮城、岩手の実質公債比率は15~18%のレベルですから決して良くはありません。

ですから、地方自治体が仮に借金して用意したキャッシュは、一度、公共的な色彩を帯びた器にいれて、それから投資するほかないのです。それが地域版震災復興支援ファンドとなります。

ただ、ここで想起すべきは第三セクターのにがい経験があるということです。第三セクターの問題は、出資した自治体が補償していたことにより際限なく膨れ上がる債務について誰も止めなかったということです。しかしファンドの形態であれば、自治体はファンドを通じて出資はするが、補償はしなくてすみます。失敗すればファンドへの出資は返ってきませんが、出資額が一定程度に納まれば、自治体も耐えられます。自治体の出資比率を小さくして、民間の資金を大きくすることがポイントです。

2011年4月13日 (水)

産業の復興はスピードと大胆さが大事

阪神・淡路大震災に関する林敏彦さんの資料にはたくさんのことを教えられますが、今日は復興資金16兆3,000億円がどの年度にどれくらい使われたかの棒グラフから考えてみたいと思います。

林さんの資料によると、震災が起きた年である1994年が約1兆円、95年約5兆円、96年約2兆円、97年約1兆9,000億円と、最初の4年間に10兆円近くを投入しています。実に復興資金の65%にあたります。

阪神・淡路の復興ができたのは、最初の4年間の集中的な資金の投入があったからであることがこれで読み取れます。それでも、神戸港はアジアのハブ港としての地位を釜山港に奪われてしまいました。

東北の製造業の主力は自動車部品、半導体、ILS、精密部品という高付加価値部品です。これらの部品は日本だけでなく世界の製造業を支えていました。今、サプライチェーンが途切れたことで、日本の製造業は代替品の調達を韓国、台湾、その他の国に求めています。それだけでなく、全世界の自動車メーカーは、供給が途絶えた部品を他国のメーカーに代替させようとしています。

代替が進み固定化してしまうと、神戸港がアジアのハブ港の盟主から滑り落ちたように、東北の製造業の地位を守ることはできません。いち早く製造能力を復活させ、そこで働く人たちの雇用を守ることが、東北の復興にとってきわめて大きな意味を持ちます。

被災者の方々の生活を守るため、生活資金提供と被災者用住宅建設をいち早く推し進めることと、職場に復帰できるように製造拠点を早く回復させることは車の両輪のごとく進まなければなりません。被災者は働けるようになって生活の糧をまた自分で稼げるようになることで、生きる気力と明日への希望がもてるようになるでしょう。このことは水産業、食品加工業でも同じことです。

ところで、政府は年3兆円規模の危機対応融資を以下のとおり実行すると発表しています。

政策金融を活用した大震災
対策「第1弾」の主な内容
●危機対応策の拡充 …年3兆円規模に
低利融資融資金利を0.5%下げ。国費で利子補給
CP購入2000億円規模の購入枠を政投銀向けに設定へ
損害担保融資が焦げ付いた場合の損失の5~8割を国費で補填
●産業再生法認定企業への出資円滑化
損害担保政投銀による出資が焦げ付いた場合の損失の5~8割を国費で補填

これを見ますと、いずれも融資を引き出すための方策です。製造業でいえば第一次サプライヤー、第二次サプライヤーで比較的規模が大きいところには政策投資銀行や商工中金から融資という形で資金がでていきますが、規模が小さい中小企業には、はたしてどれくらい効果があるのかが疑問として残ります。

この点に関連して、阪神・淡路大震災の後の兵庫県の企業の震災関連倒産状況について、帝国データバンクがレポートを発表しています。それによれば震災の年の95年は全国平均に比べると倒産が少ないのに対して、翌年以後は全国平均を上回る二桁倒産が長く続いています。兵庫県内の企業は被災で大きなダメージを受けましたが、緊急融資で一時的に存続できたものの、翌年以後は復興資金の供給があっても倒産の増加は食い止められなかったというのが事実です。特に業種的にみて復興需要が期待された建設業ですら増加し続けたこと、従業員5人以下の零細企業が過半数を占めていること、地場産業である履物、繊維、食品業者が多いことが特徴で、事業規模、企業規模が小さい業種ほどダメージから逃れることが難しかったということです。

つまり、低利融資のカンフル剤はカンフル剤としかきかず、もとから体力の弱い中小零細業者は、一時的にもってもその後続けていくのが難しいということを、このデータは物語っています。

この過去の経験からいえば、融資のみでは限界があるということであり、サプライチェーンにある中小企業を守っていくためには、負債をふやさない資本注入も方法として必要であることを物語っているのではないでしょうか。私がベンチャーキャピタルのようなリスクマネーが必要だという趣旨は、そこにあります。リスクをとって大胆に出資するということを主要地場産業を中心に迅速に進めるべきではないかと思います。

政府は、復興構想会議でぼけた議論をして復興資金の投入のスピードを落としたり、細やかな手当ての検討をおろそかにしてはなりませんが、鈍感力が着物を着て歩いているような首相のもとでは非常に心もとない限りです。

2011年4月 9日 (土)

第一次補正予算4兆円の財源はばら撒き4Kを使え!

東日本大震災の復興財源の問題については、すでに当ブログで4回論じました。いまだ荒削りな私の意見ですが、すぐさま行わなければならない大震災による被災地に残された膨大な瓦礫の撤去や被災者の当面の生活資金支援については、即時着手すべきであることに異論はあるはずもありません。これらの支援策について、政府が4兆円規模の第一次補正予算を財源とともに検討しているとの報道がなされています。

以前のエントリーでも説明させていただきましたが、瓦礫の撤去に始まる復興費が20兆円をはるかに超えるものとなる可能性が高く、安易な国債増発は国の財政を危うくするリスクが高いわけです。したがって、国庫からの支弁は、まず、予算の歳出項目の見直しをまず行うべきです。

そのなかで、ばら撒きと批判の強い4Kはすべて復興費としてまわすべきです。すなわち、子供手当2兆2,000億円、農業戸別所得補償6,000億円、高校無償化4,000億円、高速道路無料化社会実験1,000億円などは即刻やめて、これらの合計3兆3,000億円を第一次補正予算にまわすべきです。また、予備費が1兆円程度あるようですから、これも使えば4兆円規模の補正予算の財源はただちに手当ができるはずです。

民主党内部では基礎年金の国庫負担分2兆5,000億円を当てるという話が出ているようですが、言語同断です。この基礎年金負担分は、もともと財政投融資特別会計の積立金・剰余金(約1兆円)や、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の剰余金(約1.5兆円)を軸に検討されたはずのものです。国庫負担分2分の1を決めるのに長い長い先行きの見えない議論をして、結果は財投横流しを決定したものを、さらに復興資金とはいえ横流しし、ばら撒き4Kは維持するのは、どうみてもおかしいでしょう。穴のあいた基礎年金部分はそのままにできません。国債増発すればいいぐらいに思っている議員がいるならば、ほんとうにイラカンのように怒鳴り散らしたい気持ちです。

また、菅首相は、宮城県知事との会談で、「前に戻すだけでなく、もっとすばらしい東北、日本をつくるという方向でぜひあたっていきたい」と述べたと伝えられます。この混乱に乗じて、政治的野心から、後藤新平並の新都市計画をぶち上げるつもりならばご免こうむりたいところです。復興の理念の第一は、「被災者の立場にたった」復興でなければなりません。それは第一にできる限り「もとの状態に戻すこと」であって、その中で防災あるいは都市計画に寄与するところがあれば、若干の修正を加えるということであるはずです。困窮している被災者の立場を利用してみばえのいい町をつくるための区画整理や道路建設をやってしまおうというのならば、その復興の理念を問いたださなければなりません。被災者の「ふるさとの風景をとりもどす」という気持ちを踏みにじったものとなってはならないことを、菅首相は肝に銘じるべきです。

2011年4月 6日 (水)

震災復興に必要なコスト試算からみる民間資金の必要性

前回のエントリーまで、民間資金の必要性を論じましたが、本日は分かっている限りの資料で、どれくらいの資金がいるのかをはじきだしてみたいと思います。誤解があるかもしれませんが、あくまで備忘録ということでご容赦下さい。

被災者生活再建支援法に基づく指定被災者再建支援法人である財団法人都道府県会館の支援金基金から支出する住宅再建の支援金は、上限が一世帯300万円です。警察庁の調査によると建物の損害は約20万件です。他方、損保協会では推定で50万件の家屋が被災しているといっていますから、20万件くらいは全壊しているとみてもそんなにはずれてはいない数値であろうと思います。そうすると、住宅再建支援金だけで6,000億円の財源が必要です。

ところで、都道府県会館が積み立てている支援金基金の基礎財産と運用財産の合計は600億円しかありません。これから10年で住宅再建が完了するとして、毎年600億円を支援するためには、運用益4%として1兆5000億円の運用財産が必要となります。一つの都道府県あたり300億円の追加拠出が必要になってしまいます。しかも住宅再建はここ3年間くらいが一番集中するでしょうから、3年間で6,000億円の3分の2の支援が行われるとすると、3年で4,000億円、毎年1,333億円の支援が必要です。これを運用財産の運用益で出すとすると、年4%の利回りと仮定しても3兆3,325億円の運用財産が必要という計算になります。今の運用財産に3兆2,725億円を追加拠出しなければなりません。都道府県一つあたりの追加拠出額は、654億円余りとなります。これは無理なので、国が新たに右の金額を追加拠出しなければなりません。

また、阪神・淡路大震災復興基金の基礎基金は8,800億円で、兵庫県と神戸市が負担しております。この運用益が復興に使われましたが、その総額は13年間で3,300億円です。このうち、被災者の生活対策に51%(1,683億円)、住宅対策に31%(1,023億円)が使われています。この合計額である2,706億円が直接的な個人補償に使用されたという計算になります。

復興基金は被災者生活再建支援法成立以前に設立され、被災者生活再建支援法成立以後は補完関係にあったわけですから、復興基金の住宅対策は、被災者生活再建支援法の住宅支援金でも足りない部分をおぎなっていたということでしょう。また、住宅対策より生活対策に51%の資金が使われたということは、上記の住宅支援金6000億円に付け加え、生活対策資金が別立てで必要であることを示唆しています。

阪神・淡路大震災からみて、生活対策資金は住宅対策の1.5倍必要と仮定すると、10年間で6,000億円の1.5倍=9,000億円必要ということになります。年間900億円の支援ということです。これを復興基金の運用益で補うとすると、年4%の利回りとして2兆2,500億円の基礎財産・運用財産が必要という計算になります。この金額を被災した県と市などの自治体だけで債務負担するのは無理でしょう。

次にインフラ関係です。阪神淡路大震災に対する13年間の復興費用は合計で16兆3000億円(!)と報告されています。そのうちのインフラ復興に使われた金は9兆8,300億円です。今回の震災は死者行方不明者だけでも阪神淡路大震災の4倍以上で、広域の市町村が被害をうけていますから、10年で復興するという計画をたてる前提で、控えめに被害が2倍だと仮定しても、インフラだけで20兆円近くかかる計算になります。インフラはここ3年くらいがもっとも費用がかかるので、本年から3年間は毎年3兆円の支出が必要と見積もってもおかしくはありません。これは国が負担するほかなさそうです。

以上、赤い文字で示した10年間の住宅再建支援金、生活対策支援金及びインフラ関係復興資金を合計すると21兆5,000億円となります。

そしてその資金を運用益からひねり出すために、①国は住宅支援のための基金への追加拠出又は設立に当初3兆2,725億円が必要である、②復興基金の設立のため国や被災した県と政令指定都市等で2兆2,500億円の拠出が必要である、③国はインフラ整備に3年間は毎年3兆円の支出が必要である、ということになります。初年度だけで、8兆5,225億円が必要という計算になります

これ以外にも、阪神・淡路大震災では産業復興資金が10年間で2兆8,500億円、福祉の街づくり資金2兆8,350億円、都市防災資金3,150億円が投入されました。東日本大震災復興対策でもこれらの支出が必要ならば、復興に必要な資金はますます膨らみます。

なお、上記に説明した運用財産の規模は利回り率が低下すればさらに大きな金額が必要となりますが、運用益4%をあげるのは今の市場環境では難しいように思います。

仮にこれらの債務負担を国単独でやるとすると、歳入が48兆円しかない国が何らの予算使途の見直しなしに、これを全額負担すれば財政破綻のリスクはきわめて高くなります。

以上はあくまでラフな試算でありますが、ここから推測されるのは、巷間いわれている20兆円よりもずっと多額の復興資金は必要ではないかと思われます。感覚で恐縮ですが、10年間で30兆円は必要になるという感じがいたしします。政府災害対策本部は、被害の実情を捉えて10年間の復興資金の総額と、これから3年目くらいの資金はどれくらいになるかを早く見極める必要があります。また、こども手当に要する年間財源2兆円はこちらに振り向けるほかないことは余りにも明らかであり、その他ばら撒き予算の財源はすべて復興費にまわさなければならないと思います。

さらに、国の財源では足りず、民間資金を大幅に導入する選択肢を考えておかないと、10年での復興は非常に困難ということになります。ご紹介した林さんのプレゼンテーションによると、阪神淡路大震災の復興の総事業費16兆3,000億円の出所は国37%、県14%、市町18%、復興基金2%、国関係団体14%、県・市町関係団体5%、民間事業者10%の割合だったそうです。国関係団体や県・市町関係団体の負担は実質的には国や地方自治体が負担していると思われますので、復興資金の90%である14兆7,000億円が公的資金であったということです。9割の国・自治体負担をいかに民間資金で代用するか、ここが復興計画の成功を左右する要となりそうです。

2011年4月 3日 (日)

復興基金の構造とその限界ー民間資金導入が不可避な理由

4月1日付の日本経済新聞は、下記のとおり政府が被災地の各自治体に復興基金を設置する方針であることを報じました。

『被災自治体の復興基金設立、国が支援・資金拠出も

 政府は東日本大震災の復旧・復興に向けた基本法案に、被災自治体による「復旧復興基金」の設立支援を盛り込んだ。被災地が機動的に復旧事業を進めやすくするのが狙いで、基金への国の資金拠出も検討する。阪神大震災に比べて今回は被害地域が広く、複数の基金が設立されるとみられる。基金の規模は合計で数兆円となる可能性がある。

 基金は被災地の県や市町村による創設を想定している。予算による復旧・復興事業は議会の承認を得る必要があり、事業推進の資金確保に時間がかかるケースが少なくない。それに対し、基金は必要なときに機動的に資金を回せるのが最大の特色だ。資金の使い道に制限がある予算に比べて、使い勝手の良い資金を民間に振り向けられるため、早期復興を進めやすくなる。

 ■臨時増税で3案

 阪神大震災の際にも兵庫県と神戸市が「阪神・淡路大震災復興基金」を設立。県と市が拠出した計200億円の基本財産と、金融機関から借り入れた8800億円の運用財産で構成した。このときは国が地方交付税を通じて利払いの一定割合を負担した。今回はさらに踏み込み、被災地が設ける基金への国の資金拠出も検討。被災地のニーズに見合った復旧・復興を後押しする。

 基本法案の素案では復旧・復興の財源を確保するため、「震災国債」の発行や、特別税の創設も盛り込んだ。検討する特別税の例としては(1)所得税額を一定割合上乗せする定率増税(2)法人特別税(3)特別消費税――の3案を挙げた。

 有力になっているのが所得税の定率増税。所得の多い人ほど大きな負担を求める形になるうえ、被災者を免税しやすい利点がある。消費税は被災地だけを増税から除外するのは難しいとの見方が強い。

 ただ増税案について政府内では、被害の全体像さえもはっきり見えていない段階で、国民の負担論が先走ることに慎重論が強い。「歳出・歳入の見直しで財源を確保するのが先」との声も多い。

 ■水没地の買い上げも

 国が実行する政策としては生活再建などの支援措置の充実や、税制優遇措置の活用などを明記。素案には阪神大震災より踏み込んだ内容も盛り込んだ。津波による壊滅的な被害が相次いだことから、水没した土地を国が買い上げることを検討。再建を円滑に進めるため、土地所有権の制限を検討することも明記した。ただ国による「私権」の制限に批判が出る可能性もある。』

政府案のベースとなっている阪神・淡路大震災復興基金について調べ、林敏彦さんの『阪神・淡路大震災復興基金とわが国立法府の役割』という論文と、『阪神・淡路大震災復興基金と「財産法人阪神・淡路大震災復興基金」の役割』というプレゼンテーションを発見しました。

林さんによると、阪神・淡路大震災復興基金が設立された目的は、国および地方自治体の復興支援事業が公費支出に関する法令に縛られ、被災者の要求にきめ細かく対応する自由度が不足していたために、自由に使える資金が必要であったこと、とりわけ、国は個人住宅の再建を公的資金で支援することは、私有財産制度の原則に反するという立場をとったが、住宅の再建は被災者の生活再建、コミュニティの再生、街並みの復興に必要不可欠であったことから、いわば「マネーロンダリング」の仕組みを使って自由度の高い基金を作ったと説明されています。

阪神・淡路大震災復興基金のストラクチャーは以下のようなものでした。

①金融機関が兵庫県と神戸市に8800億円を貸し付ける(金利は5800億円については4.5%、3000億円は3%)。

②県と神戸市はそれをそのまま無利子で財団法人阪神・淡路大震災復興基金に貸し付ける。

③金融機関は兵庫県と神戸市に対する貸付債権を同額・同利率の債券にして、財団法人阪神・淡路大震災復興基金が全額を買い取る。

④財団法人阪神・淡路大震災復興基金は債券の利払金を復興事業に使う。

⑤兵庫県・神戸市の利払金については、地方交付税法を改正して75%を国庫から交付し、補てんする。

⑥この結果、利払いの25%は兵庫県・神戸市が負担するが、利払いについては縛りがかからない自由な資金として、被災者の住宅再建対策(生活費や住宅ローンの利子補給など)に使用されることが可能になる。

要するに、このような復興基金は、国は個人補償はできないが、地方自治体は個人補償を行いうるというダブルスタンダードを確立するための仕組みであったということができます。しかも、その財源をひねくりだすのに、兵庫県と神戸市は合計で8800億円の債務負担行為を行わなければなりませんでした。

なお、平成10年には被災者生活再建支援法が成立し、被災者自立支援金が創設されました。これは大規模災害にあった被災者に対する支援金として、住宅の被害程度に応じて支給する支援金(基礎支援金)と、住宅の再建方法に応じて支給する支援金(加算支援金)の2本立てを可能にするものになっています。これは国の指定を受けた被災者生活再建支援法人(財団法人都道府県会館)が、都道府県が拠出した600億円の基金から支援金を支出し、その半分を国が補助するものです。これもまた地方自治体と国の債務負担が求められるものでありますが、政府はあきらかに被災者自立支援金の規模を大きくすることを考えているものと思われます。

また、今回の政府の説明は、復興基金の設立だけでなく、水没した土地を国が買い上げることをも検討するというもので、国が一定の限度ではあるけれども、さらに個人補償に踏み込んでいくという制度の大きな変質をもたらすものです。

また、福島第一原発事故の関連では、事故の発端が地震による津波でもあり、原子力損害賠償法の制限を超えた補償を国が行うことを念頭においている可能性も含まれているのではないかとも疑っています。

東日本大震災の被災状況からみて、すべて公的資金の方向でことがすすめば、国と地方自治体の負担は極めて大きなものになることはまちがいありません。他にも選択肢はないのかを検討せずに進めると、際限のないものとなります。あまりにも被害が甚大であると思われる事態について、すべてを公的資金でまかなうという発想には、津波による補償以上かもしれない国家財政の破綻という大きな危険が含まれていることを認識すべきです。国家財政が破たんすれば、被災者の支援や復興はすべて遅延または停止し、かつ全国民が大きな負担を背負うことになります。1995年から2008年度までの13年間に阪神・淡路大震災の復興に要した財政資金は16兆3000億円(!)と、林さんは報告しています。

阪神・淡路大震災復興基金では、13年間で3606億円を執行しました。これは16兆3000億円の2%にすぎませんが、生活対策に51%、住宅対策に31%、産業対策に15%、教育その他に3%が使われ、確かに大きな役割を果たしました。しかし、基金の財源たる利子について国が補給した負担は3606億円の75%に及びます。

死者・行方不明者の数だけでも阪神・淡路大震災の4倍以上である今回の震災では、被災者の生活再建や住宅対策だけでも莫大な金額が必要になります。そのほか、道路、港湾設備などのインフラ復旧を加えると、復興基金だけのスキームで今後10年は続く復興作業をまかなうのは困難でしょう。阪神・淡路大震災で必要だった財政資金16兆3000億円のうち2兆9500億円が産業復興費にまわり、市街地整備等だけで9兆8300億円もかかっているのです。慄然とせざるを得ない数値であり、いままでと同じ対策のみではだめだと考えざるをえません。

特に、今回は、東北という産業基盤がすでに他の地域に比較して弱い地域が被災にあっているのですから、被災企業に対する資本投下、資金提供を考えなければ、地域復興計画としてはまったく足りないものになってしまいます。そしてこの分野も公的資金に対する法律の縛りをはなれて、柔軟に対処しなければならないものであり、また、自助努力をベースに支援するという構図がもっとも妥当する分野でもあります。

危機管理能力を問われている民主党政権が、危機対応策でさらなる危機を招く愚は絶対にゆるされません。民間資金の活用は不可避な選択肢であり、今すぐに検討を始めるべきです。

2011年4月 2日 (土)

民間資金の活用と被災者・被災企業のニーズの合致は?

前回のエントリーでは民間資金をどのように集めそれをどのように配分するかを考えました。こんどは現場レベルから考えてみたいと思います。荒削りの思いつきですが、考えるきっかけになることを願って書いてみたいと思います。

被災地の現場では、大量のがれきを整理するところから再建が始まります。再生の意欲が高い経営者と従業員が一体となって復興にむけて頑張っているところが、いくつも報道されています。そういう中小企業も、大地震と津波に襲われる前には銀行や信用金庫、信用組合や農協、漁協から資金を借り入れていたと思われます。担保にとっている土地建物は津波などで失われました。底地は残っていますが、境界が動くなどしているかもしれず、その担保価値が大きく棄損されています。不動産に保険が掛けられている場合は、建物・土地の滅失により支払われるべき保険金請求権に抵当権の効力は及び、金融機関等は保険金請求権の差押・転付命令により貸付債権の回収ができます。しかし、金融機関等がすべて回収をはかったら中小企業の再建は不可能で、倒産処理する以外に道はなくなってしまいます。

被災者には一世帯に数百万円の復興支援金が給付されることになるようです。熱意ある経営者や従業員の中には、その復興支援金の一部をもちよって会社再建に使いたい方々がきっといるはずです。そういう方々を糾合して、そこにさらに資金を供給すれば、再建できるところもたくさんでてくるでしょう。また、経営者が亡くなってしまったが、従業員が生存していて、再建したいと考えているところもでてくるでしょう。既存の金融機関等の債権者との調整が必要になると同時に、復興資金が必要になります。

そこで、中小企業再生支援協議会のプラットホームを使うことが考えられます。既存の中小企業再生支援協議会をベースに「東日本中小企業震災復興再生支援機構」を10年の時限立法でつくり、そこに、リゾースを集中させ、復興のための診断と企業再生計画の支援、資金調達の支援を行わせるのです。

再生支援機構にきた被災企業は、まず被災状況の把握・説明と直近の事業報告書を提出(提出できないときは借入先の金融機関から取り寄せ)し、機構はそのまま再生ができるかどうかの初期診断を迅速にします。再生可能ならばすぐに再生計画の支援業務に移行します。再生不可能であるならば、破産処理等の処理をすすめ、金融機関の無税償却を支援します。こういう業務は弁護士なしでは無理なので、再生機構には各弁護士会が全面的に協力します。また再生支援機構には各金融機関からも金融のプロフェッショナルを派遣してもらいます。

そして、再生可能なところには、前回のエントリーで書いた震災復興公募投信であるマザーファンドから資金調達する地域の震災復興ファンドが出資してサポートしていきます。震災復興ファンドに金融機関に出資を求めるかどうかですが、なしでいくという考え方といくらか出資してらうという考え方があると思います。やはり少しは出資していただいたほうがいいでしょう。しかし、基本はマザーファンドからの出資で運用すべきでしょう。

仮に再生が無理だとしても、意欲ある経営者や従業員を生かすため、これらの方々を糾合した新会社を設立し、そこに経営者・従業員とファンドからの出資を集め、可能であれば銀行からの貸金を行い事業の再生をはかります。こういうメニューをそろえることで、すべてをなくした被災者に等しく希望を与えることができることになります。また、被災前にばらばらだったヒューマンキャピタルを糾合することも可能となります。

このスキームには、①地域の被災企業の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応が可能、②国や地方自治体の行政の関与が限定されており、民間の力により効率的な再生業務が可能、③意欲ある被災者を資金がでないということだけで追い込まないような新会社設立等の手段が容易できること、④機構がはいることで、銀行等の金融機関もさらに余力のある範囲で貸金を行うことが可能になること、などの利点があると思います。

ところで「再生できるか」という判断は、これまでの事業再生の基準と根本的に発想を変える必要があります。経営者・従業員の意欲はこれまでになく高まっているが、設備や資本がない状態なのです。すべてをなくした人間のこれしかないという強い意欲に投資しましょう。通常の再生の基準をあてはめてはうまくいかないので、事業再生法の運用はフレキシブルに行うことが重要です。

事業再生ファンドには信用保証協会の保証がありますが、今回も同様な保証を求めていくか、保証協会で対応ができないところは、メガバンクの協力で保証をもらうということもあり得ます。

きわめて荒削りですが、意見を述べさせていただきました。金融と事業再生の知識経験、人材をフルに動員して日本を再生させましょう。コメントは大歓迎です。

2011年4月 1日 (金)

民間資金を復興のために使うアイデアは何かないか?

地震からの復興について議論が始まっていますが、政府関係者が議論しているのはいずれも国庫からの出費のスキームであります。20兆円を超えるかもしれない復興資金を国や地方自治体が負担することを考えるのは、順序としてはそのとおりかもしれません。しかしこの国の財政赤字を考えれば、全額を国庫負担することでは財政破綻を避けることができないように思います。震災復興国債も国の借金であることに変りはありません。地震前から落ちてきた税収を増税で増やしても限度があり、非常に難しい問題です。

さらに、被災された方々や企業の規模を考えると、さまざまなスキームを打ち出していかなければなりません。個人に対して復興資金を供与することから始まり、打撃を被った企業に対する復興資金の提供を企業規模に応じて細かく考える必要があるように思います。

大企業については、社債や場合によっては公募増資による資金調達も考えれます。また、銀行がローンで資金需要をまかなっていくことも可能でしょう。しかし、銀行も非常時とはいえ、バーゼルIIIの縛りがあり、貸出の健全性管理を長期間緩めるということはできないでしょう。銀行も困難な状況にある取引先を助けたい気持ちはとてもあると思いますが、全ての規模の会社、かつ壊滅的被害をうけた会社にローンを出すことはできず、そこには限界があります。

さらに、今回の地震で大打撃をうけている中小企業、特に製造業関係、水産関係、農業関係、物流関係の中小の企業に対するサポートとなると、都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、農協、郵政が提供する資金には非常な限度があるように思います。たしかに、地方銀行の増資、信金や農協に対する信金バンクや農林中央金庫からの資金提供は現に行われているところですが、これからくるなにもかもなくしてしまった方々へ、資本規制がかかっている金融機関等が貸出すことには限度があります、他方、サプライチェーンの一環をなす中小企業、さらにはその下にある零細企業に対する支援なしに、日本が復興することはありえないと思います。

ではどうやったら資金が回るのか?野村證券が災害復興の投資信託を500億円程度募集して、社債等への投資を行うことにより復興資金の提供を支援するという記事が数日前の日経にでておりました。これは優れたアイデアであると思いますが、公募投信ですとどうしても規模が比較的大きな上場企業への投資しかできないでしょう。水産業のように小企業や零細業者に支えられている業種では、船も網も水産加工工場もすべてなくしてしまった方にも支援をしないといけません。どうしららいいのでしょうか。

私もない知恵を絞っています。思いつきを並べます。

一つは、製造業・水産・農業・物流関係の上場会社を通じた復興支援金供与です。これは上場会社が社債等で調達した金銭を、取引のあったところへのグループバンキングで低利かつ長期に貸し出す方法です。しかし、ネックは壊滅的打撃をうけたところに若干の投資をしてグループ化し、さらにそこに資金を貸し付けるということに、どれくらい経営陣がたえられるかです。リスクは大きいのですが、そのリスクをどの程度合理的とみるか、株主からみても納得できるかが重しになります。長期投資ですから、腹の据わった経営陣が、「今共存なければ我が社の発展の道なし」とどんと構えなければなりません。しかも取引先であったところですから、資金提供後情報の取得ははるかに容易で、物心両面の支援も可能です。また、このタイプには投資信託からの上場会社の社債等への投資との組み合わせが使えます。

二つ目は、ベンチャーキャピタルのような発想で私募ファンドを設定し小規模業者へ直接資金援助できないかです。報道をみているとこの大災害による甚大な被害にあっても、水産業は絶対に捨てないとすでに一から活動を始めている漁業関係者がいるようです。農業については福島第一原発による放射能の汚染が懸念される地域については容易でないと思いますが、そうでない地域の農業の復活への動きをはじめているところもでてきているようです。これらの方々は、長年蓄積されているノウハウもあり復活への意欲は非常に高いわけですが、既存の設備に大打撃を被っているわけで、こういう方々の復興資金需要に直接答える私募ファンドの設定を数多くできないかという発想です。この投資はハイリスクでリターンも最初のことはなしですが、経営の現代化・経営資源集約も一挙に行い災いを福となすというコンセプトで、長期の投資を求めるものとなります。正体がつかないネット企業にあれだけの資金を投資した投資家がいるわけですが、リターンがあまり期待できないかもしれませんので、平時は設定は無理です。今だからこそ設定できる、あるいは今しか設定できないファンドなのではないかと思います。

三番目は公募投信と二番目の組み合わせです。大きなマザーファンドを公募投信として設定し、そのマザーファンドから、いくつもある私募の災害救済支援ファンドに投資するというスキームです。これは、民間の金を大きく集め、その資金を効率よく配分していくことに資すると思います。これも今だからこそ設定できる、あるいは今しか設定できないマザーファンドです。

国難の時、金融関係者の知恵が求められています。よいお考えがあったらぜひお聞かせいただきたいものです。

【4月1日午後6時追記】

考えてみると日本は1500兆円の金融資産をもっているわけですから、復興費用はその1.5%程度なのです。30兆円かかっても2%です。そうすると国民一人が自分の金融資産の2%を第三に指摘したマザーファンドに投資してくれれば、相当な規模の金を集めることができます。投資にインセンティブをつけるため、配当がもし出た時でもファンドの設定期間中は課税しないことにする、一口の出資額を通常の1万円ではなく5000円にして小さい子供でも投資できるようにする、もし損失がでたときは投資損としての通算を認めるといった優遇策をとれば、国民はよろこんで投資してくれるのではないでしょうか。

次に私募ファンドについては、投資対象となる地域産業について知見がないといけません。そこで、県レベルが設定主体になり、そのファンドの運用についてはプロに委託して任せてはどうでしょうか。あるいは設定者は投資信託委託会社として、県レベルで各地域の実情をしる復興アドバイザーを助言者として選任すれば、さらに効率的投資が可能でしょう。プロに対する運用報酬にはやはり課税上のインセンティブをつけて、報酬料率が低くても収益がちゃんと上がる仕組みをとり、さらには成功報酬も認めてやったらどうでしょう。こうすれば運用ガイドラインづくりにも、各地域差が反映できますし、運用を任される人も復興に強い意欲とヒューマンキャピタルを糾合できそうな中小企業群を選ぶことができるのではないでしょうか。

2010年4月12日 (月)

21年度目黒区包括外部監査報告書を公開中。

私が包括外部監査人をしている東京都目黒区の平成21年度包括外部監査報告書が公開されております。

包括外部監査という仕事はあまり知られていないようなので、若干解説します。

外部監査は平成9年の地方自治法改正で新たに作られた制度です。平成7年に地方分権推進法が成立し、従来の国と自治体との間の主従関係から脱却し、対等・協力関係へ進化させるべき方向性を模索するため地方分権推進委員会が検討を始めました。

地方において政府の審議会であった地方制度調査会も平成9年に「監査制度の改革に関する答申」を発表しました。この答申は、地方分権の推進による自治体自らのチェック機能の強化が必要という考えから、現行の監査委員制度では、自治体の退職職員等当該自治体に関係のあったものが議会承認のもと監査委員に選任され、また議会によって選任される議選の監査委員との組み合わせではおのずと限界があるという考えから、当該自治体と利害関係のない公正な第三者である弁護士、公認会計士、税理士、国又は自治体の実務経験者という専門家に監査をしてもらうというシステムを作りました。

監査は自治体の長との契約によりますが、その契約には①包括外部監査契約と、②個別監査契約があります。①が義務付けられているのは、都道府県、政令指定都市、中核市、契約による監査を受けることを義務付けることを自ら条例で定める市町村となっており、東京都の特別区は条例を自ら定めている場合にのみ包括外部監査を受ける必要があります。

監査テーマの選定は包括外部監査人が選定できます。地方自治法252条の37は「包括外部監査人は、包括外部監査対象団体の財務に関する事務の執行及び包括外部監査対象団体の経営に係る事業の管理のうち、第2条第14項及び第15項の規定の趣旨を達成するため必要と認める特定の事件について監査するものとする。」と規定しています。他方、第2条第14項は「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と、第15項は「地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。」と規定しています。

つまるところ、包括外部監査人は、住民福祉の増進の観点及び地方公共団体の組織及び運営について合理化、効率化の観点から任意に監査テーマを選択し、効果的な監査を行う必要があります。

地方自治法の条文では、特に経営管理の合理性、効率性が強調されています。おそらく地方公共団体である以上は、法律を守ることは当たり前で、法令違反があれば指摘すべきことも当たり前のことであるけれども、それだけでなく、第三者である専門家をいれて税金の無駄使いにつながる不合理・非効率的業務を指摘することこそ有意義なのだということが、立法の精神なのであろうと思います。

今回は初めての包括外部監査で、監査チームも手探りで始めましたが、だんだん慣れてくるにしたがって、要領がつかめてきました。監査を進めれば進めるほど、地方自治体の管理運営上の問題点は国の問題点の縮図であるという印象を強く持ちました。監査テーマを選ぶのに、少しでも国や地方自治体の問題点を研究すれば、いくらでもでてくるということです。

包括外部監査人及び補助者には守秘義務が課されているので、監査中に知り得た秘密を在職中も退任後ももらすことはできませんので、今年の監査結果については監査報告書を読んでいただき、我々がどのような問題意識をもって監査に臨んだのかをご理解いただければと思います。

たいへんやりがいのある仕事なのですが、手間隙がかかるので、報酬からみると採算はまったく合いません。こちらも効率的監査を迫られているということなのです。時間と資料と戦いながらどの程度深堀ができるかが勝負です。とはいっても関係部署の問い合わせの回答の待ち時間や資料の読み込み、関係者のヒアリングは時間を使う作業ですし、その結果の問題点の検討や報告書の書き振り、監査人団の意見の統一など、どうしても時間がかかることばかりです。

また、問題点を指摘しなければというところに意識を持ちすぎて、解決不可能な指摘や改善指示をだすことも避けなければなりません。問題があるとき、現実的解決ができるような方向付けや提言をするコモンセンスも我々には問われています。

また、包括外部監査は行政の監視ですが、PDCAを回すためのものでもあります。行政側にこのことが意識されず、指摘されたことだけをパッチワークのごとく直していくだけでは真の改善にはつながりません。外部監査は時間が限られているもの、指摘された部において原因をよく自己分析しそれに対応する対策をうっていくことこそが期待されるのではないかと考えております。まさに行政におけるPDCAサイクルが機能することのための包括外部監査なのです。皆さんの県、市町村も、包括外部監査を行っているところは必ず報告書を公表しているので一読されてみてはいかがでしょうか。

2009年11月 4日 (水)

NHKスペシャル「永田町・権力の興亡」

NHKスペシャルで三夜連続で放映された「永田町・権力の興亡」、実に見ごたえありましたね。55年体制の崩壊と細川政権の成立からはじまったこの証言ドキュメンタリーは、我が国の政治の転換について、時の権力者、あるいはその近くにいた者、それと対峙した者の証言で、その実相を描きだすことに成功していました。

中でも第三夜めの、小泉純一郎元首相の登場と、その陰で復活を誓って着々と準備していた今の民主党幹事長、小沢一郎氏のひそかなる戦いは圧巻でした。

自分たちがやろうとしていたことを小泉政権がやろうとしていることで、自分たちの立ち位置がどこにあるのかわからなくなり、大変苦労したということが、菅直人氏や前原誠司氏らから語られると、小泉構造改革の理念そのものが今の民主党の中核をなしている人間と共有化されていたことに改めて驚きます。

対立軸の喪失、それが民主党の郵政選挙敗北の最大の原因でした。それを見破った小沢さん、本当に恐るべき人ですね。

小沢さんは他方において、選挙の川上戦術を語っています。選挙は団体であろうがなんであろうが、終局的には個人の決断で投票を決めていくこと、その個人のレベルできめ細かくあたるという田中角栄の教えをじっくりと実行していったわけです。その戦術の考え方について「政府に甘えないで自分で自分のことを決める自己責任が民主主義の基本である」というところに求めるという小沢さんの発言を聞いていると、この人の基本的政治理念は、まさに大きなものに寄りかかる古い日本人の体質を転換、個人や自己を確立、小さな政府というところにあることが理解できたような気がしました。選挙民にいままでも厳しいことをいってきたと言ってましたが、それでは今回の選挙で本当はどうだったのか。そのような戦術と組み合わせるかたちで、自民党が進めた政策によって生じたひずみを実感しそれをきめ細かく拾い上げ、政策で自民党との対立軸を明確にしていったというのは、まさに政治の天才といえるのではないでしょうか。

他方において対する自民党は公明党との連立の中で、田中流選挙の基本をどんどん忘れ、小泉改革で既得権益にしがみつこうとする組織を切り捨てたのに組織票にたよる(最後は公明党の組織票にたよる)選挙に傾斜しきって、小泉劇場が終了したあと、敗れるわけです。民主党はというと、小沢流川上からせめる選挙。そして小泉劇場の陰でひそかに地方の格差・切り捨てが進行していることに対する国民の不満を拾い上げ、対立軸に仕上げていったーこうしてみると、55年体制のもとで、かつての自民党がとった選挙方法を自民党が忘れ、社会党や民社党がやっていた組織だのみの選挙を取り入れて、自民党をぶっこわす政策のなかでその基盤を失いながら転換せず、やがて政権から滑り落ち、他方、社会党右派や民社党を取り込んだ民主党が組織だのみの選挙を川上戦術に転換し、さらに連合と手をくんで組織票もとりこんでいった、ということにはたと気づくわけです。小沢氏の戦略に、自民党が敗北するのは必然だったのだという思いがします。

こうしてできてきた民主党の「国民の生活が第一」というスローガンに象徴される政策は、自民党との対立を作り出すためのものであったといえます。高速道路無料化や子供手当だとか、農家に対する直接的補助といったバラマキ政策は、このような小沢さんの対立軸をつくりだすという目的のために、意図的に作られたものであったといえるでしょう。それはまさに選挙に勝つための政策であったということができましょう。小沢さんの本音はいまだに国民は甘ったれてはいけない、自立せよというところにあるということが、インタビューを通じてはっきりとわかりました。でも今回のバラマキ政策をもし実行したら、どこで「もう終わり、自立せよ」というのでしょうか。

こういう政策について、はたしてそれが単純に戦術としてとられたものなのか、それとも長期的な国家ビジョンや政治ビジョンにもとずいてとられたものなのかが今真剣に問われているという山口二郎北海道大学教授の指摘には、多くの方がうなづいたのではないでしょうか。また、作家の高村薫さんが「生活が苦しくなっているときに政策が選挙民の生活に直結している時には、選挙民が短期的な視点で選択することが多いが、はたしてそれが長期的にみていいことなのかを示すことが政治家の役割なのではないか」という趣旨の指摘をされたことに、大きく共感した次第です。

大変勉強になる番組を放映してくれたNHKに感謝です。