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2015年1月13日 (火)

社外取締役・社外監査役の要件の厳格化と実務対応

平成26年改正会社法の施行日は平成27年5月1日です。2月決算、3月決算の会社は、5月、6月の定時株主総会に影響のある改正点の対応準備を今すぐ開始しなければなりません。前回の社外取締役を置くことが相当でない理由の説明義務はその例ですが、今回は社外取締役・社外監査役の要件の厳格化が及ぼす影響とその対応を説明しておきたいと思います。

ところで、対応が必要といいながらも、今日のトピックは実は猶予が与えられているので、対応策を練るのに時間的にゆとりがあります。というのも会社法附則4条に、改正会社法の施行の際、現に社外取締役、社外監査役を置く株式会社の社外取締役、社外監査役については、施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結時までは「従前の例による」と定められているからです。「従前の例による」とは、改正前の要件に従うということです。

たとえば3月決算の上場会社で、平成26年6月の定時株主総会で現行法のもとで社外要件を満たす社外取締役1名(任期2年)と社外監査役2名(任期4年、監査役は定款上3名とされており、社外でない常勤監査役はその前年度に選任されていると仮定)を選任したとします。ところが平成27年5月1日に改正会社法が施行されると、当該社外取締役、当該社外監査役は社外要件を満たさなくなってしまいます。その時点で社外取締役、社外監査役ではなくなってしまうとすると、どういうことが起きるでしょうか。

第一に上場会社は、独立役員1名以上の確保を求める上場規則に抵触することになります。第二に、監査役会設置会社については、監査役の半数以上は社外監査役でなければならないとされているので(335条3項)、この規定に抵触します。そして、社外監査役の人数を満たさずになされた監査は手続的瑕疵があるとされますから、平成27年6月の定時株主総会に提出される計算書類・事業報告が適法な監査手続をへていないということになります。

なお、監査に手続的瑕疵があり計算書類・事業報告を承認した株主総会の決議が決議取消原因になるかという点ですが、監査役・会計監査人の監査をへない計算書類の承認は決議の方法の法令違反であるとされているところから見ると、少なくとも決議取消原因になる可能性は否定できないように思いますし、そもそも適法な監査をへた計算書類・事業報告の提出がないのに総会での承認があったのだから、決議は当然に無効であるという考え方もありうると思います。

こういうことになることを避けるため、改正法の要件を満たす社外取締役・社外監査役を選任するための臨時株主総会が必要となりますが、それも大変であり、また、臨時株主総会を開催するまでは、社外役員がいない状態が続いてしまうわけです。そこで、附則4条では、その施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会において改正会社法の要件を満たす社外取締役・社外監査役を選任すればよいと定めているわけです。

したがって、上記の例ですと、平成28年6月の定時株主総会終了時に任期満了する改正前の要件を満たす社外取締役のポジションを、改正後の要件を満たす社外取締役を選任して埋めればいいのですが、監査役についてはちょっと厄介です。改正前の要件を満たす社外監査役2名は当然に地位を喪失しないので、社外要件を満たさない監査役が3名いることになってしまいます。社外監査役は半数以上必要なので、新たに改正後の社外要件を満たす社外監査役を新たに選任しなければなりません。つまり、さらに3名の社外監査役が必要(!)ということになってしまいます。「なんとか2名、おやめいただけませんでしょうか。」とお願いしても、社外監査役が「うん」といわなければ、最悪、定款変更で監査役会を増員し、3名社外監査役を選任、なんていう異常事態が起こります。株主や市場から呆れられないために、しっかりと準備しておく必要があります。

改正前は社外要件を満たすとされたが、改正後はみたさないとされる関係として実務的に大きく問題になりうるのは、以下のものと思われます。

第一に、「親会社等」の定義が新設され(2条第4号の2)、親会社及び株式会社の経営を支配している者として法務省令で定めるものをいうこととされました(自然人も含まれます)。そして、親会社等の取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人は、社外取締役にはなれないことととなります。

第二に、兄弟会社(「株式会社の親会社等の子会社等」)の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人は、社外取締役にはなれません。

第三に、当該会社の取締役もしくは執行役もしくは支配人その他の重要な使用人または親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者または二親等内の親族である者は、社外取締役・社外監査役になれません。

第四に、親会社等の取締役、監査役もしくは執行役もしくは支配人その他の使用人は、社外監査役にはなれないこととなります。これは親会社等の監査役が社外監査役であっても、当該株式会社の社外監査役にはなれないということも意味します。

この点、子会社が非上場会社で監査役会設置会社である場合、いままでは親会社等の監査役や財務・経理・内部監査系の使用人が監査役を務めていたということが実務の一般的傾向であったと思いますが、この実務と真正面からぶつかることになります。対応としては、大会社でない子会社が監査役会設置会社から監査役設置会社に移行することが考えらえます。現にそうしている会社も多数あるようです。ただ、子会社不祥事がつい最近の話題であったことから、監査役会を廃止するという内部統制的にはマイナスとなる対応でいいのかという疑問が頭から離れません。監査役設置会社とするならば、親会社による内部監査や親会社監査役の子会社調査をかなりしっかり実施する対応をすべきではないでしょうか。

なお、会社法附則4条は、改正会社法の施行の際、現に社外取締役、社外監査役を置く株式会社の社外取締役、社外監査役についてのみ適用があるので、施行の際に社外取締役、社外監査役をおいていない会社はただちに改正会社法の社外要件を満たさなければならないことにご留意ください。

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