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2015年1月 5日 (月)

執行力の強化とは内部統制の強化ではないか

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

前回、モニタリング・モデルと会社法の取締役会設置会社の発想の違いについて、藤田論文を引用しながら指摘しました。どちらも経営に対して敵対的ではなく、企業価値の増大のために執行の企画・検討・承認・実行を強化したいという方向については、何ら変わらないことを指摘しました。

でも、企業価値の増大のための執行の企画・検討・承認・実行とは具体的にはどのようなことをさすのかを、ここではもう一度考えたいと思います。

上場企業のガバナンスが論じられるとき、企業価値の増大の定義は結構あやふやです。しかし株主が何をすれば評価するかというスケールで考えれば、それは株価の上昇であり、時価総額の増大です。

さて、株価を上昇させるためにはどうするか。もちろん業績が良くなければ株価は上昇しません。市場環境が激変すれば業績の如何を問わず、株価は乱高下しますが、株価が下落する方向に動いていても、将来の収益に期待できる企業の株価は必ずもどってきます。着実に利益を出す企業に対して市場はポジティブです。ところが、毎年ちゃんとした収益を出す企業であっても(私が役員を務めている会社はその典型です)、株主はPER、PBRなどの指標を使って同業他社との比較をしてランク付けしたりし、利益について、あるいは成長性について同業他社と比較し投資行動を決定します。また、当該事業分野それ自体がリターンが少ないといって評価を低めたりします。この場合は事業分野自体の見直しと成長力ある事業分野へのシフトを行わないと、株主は評価してくれません。

したがって、企業が常に価値を増大しているという市場の評価を得るためには、当該事業における着実な利益の確保という戦術のほかに、当該事業が収益が期待できる事業なのかどうか、もし事業自体の成長に陰りがみえたときにどうやってその壁を突破するのかという戦略が求められます。企業自体がポテンシャルを発揮しているのかどうかを常にテストしているのが市場であり、株価であろうと思います。

企業は戦略から定められる長期目標と、戦術から決定される短期の収益目標が必要で、両者についてその目標を達成するための課題を洗い出し、リスクに見合う資金と人材を投入します。しかし、長期目標は、今の経営環境の変化の激しさからみて、立案そのものが難しくなっていると感じます。10年の戦略は意味がなく、5年の中期経営計画でもその意味を問われれていると思います。

また長期目標は短期目標の積み重ねを達成して初めて実現できるので、結局は、3年程度の短期目標の実現をめざして行っていく取引、例えばM&Aならば、第一に企画・検討段階におけるM&Aの目標の合理性、M&Aによる収益予測の確実性、その確実性を揺るがすリスクの洗い出しの見極めをしっかりと行っていく力がどれくらいあるかが執行力のレベルをあらわすものでしょう。さらにそれを実行に移したのちに、実際に現れれてくるさまざまな事象に対して迅速・的確に対応できる能力が必要です。とどのつまりは、企画・実行・フォローアップにスピード感がなければなりません。

執行力のレベルは短期戦略の企画力・実行力という言い方もできますが、その中には、確実性を揺るがすビジネスリスク、法務リスクの見極めがどれくらいできるかということも含まれることは明らかです。そして実行後に起きてくるさまざまな問題への対応と、顕在化していないリスクの指摘ができるかどうかもポイントとなります。これは内部監査の仕事です。

取締役会は企画から実行に移す段階で、さまざまな角度から目標の合理性、収益予測の確実性、リスクの洗い出しができているかどうかを検討すべきですから、社外取締役についていえば、やはり経営の経験値、あるいは法務や財務といった専門性の知見の高い人材でないと牽制機能は果たせないでしょう。

また、検討段階・実行段階・実行後におけるスピード感ある対応を期待できる人材が必要となります。この意味で、法務部に弁護士をそろえたり、財務部に公認会計士資格や税理士資格をもった人間を配置することはむしろ当然であり、専門教育をうけた人間を採用していくことが当たり前にならないと、企業の執行力強化はそうそう簡単にはできません。つまりは、執行部門における内部統制の強化がすわなち執行力強化なのではないでしょうか。日本企業は内部統制というと管理部門を想起しがちですが、それはイメージに片寄があります。

人材をどうやって確保するかを考えると、やはり、日本的な終身雇用前提、新卒から人間を育てていくというやり方が限界にきているように感じますが、これはまた別の機会に考察してみたいと思います。

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