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2015年1月16日 (金)

社外要件の変更に伴う責任の一部免除と責任限定契約

社外取締役・社外監査役の要件が変更されたことに伴い、変更によって影響を受ける取締役・監査役のために平成26年度改正会社法では改正がなされました。

第一点目は会社法425条1項1号に定めている役員の最低責任限度額の変更です。

取締役、執行役、監査役等(以下、「役員等」という)は、その任務を行ったときは、会社に対してこれによって生じた損害を賠償する責任があります(423条1項)。職務執行を行う際に善管注意義務に違反して会社に損害を与えた場合の、役員等の個人の責任を規定するものですが、右の責任は、役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定められている最低責任限度額を控除して得た額を限度として、株主総会の決議によって免除することができます。その最低責任限度額の算定方法を定めるのが1号の規定で、その方法は、役員等が職務執行の対価として受け、または受けるべき財産上の利益として会社法規則113条で定める方法により算定される額(平たく言えば報酬)に一定の数をかけて得ることになっています。その一定の数ですが、現行法では代表取締役又は代表執行役は6、代表取締役以外の取締役で社外取締役でない者または代表執行役以外の執行役は4、社外取締役、監査役は2と定められています。

社外要件が変わっために、いままで社外取締役であったものが改正法施行後は取締役となる場合には、最低責任限度額が2倍に増えることになります。しかし、このような取締役は社外要件がかわったとはいっても、業務としては社外取締役と同様に特定の業務執行について責任をもっていません。したがって、経営に対する監督が期待できる一方、また自ら業務執行から発生するリスクを十分コントロールすることができる立場にはないということから、平成26年改正法では、社外取締役と同様の責任限度額とすることとするために、4をかける取締役を代表取締役以外の取締役で業務執行取締役であるものに限定しました。

第二点目は会社法427条1項に定めている責任限定契約の対象者の変更です。

社外取締役、社外監査役等(以下、「社外役員等」という)は、社外役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約(責任限定契約)を会社と社外役員等との間で締結することができるとされています(427条1項)。いままで社外取締役であった者が改正法施行後は普通の取締役となる場合には、責任限定契約を締結できなくなりますが、業務執行を行わないことは変わらないのにプロテクションだけはずれるのは合理的でないし、人材確保の点でも責任限定契約を継続することが望ましいと考えられます。そこで、この規定についても、業務執行取締役かどうかで区別することとし、業務執行取締役等でない取締役であって社外取締役でないもの及び社外監査役でない監査役についても、会社との間で責任限定契約を締結できるように改正しました。

この点、定款において現行法に従った責任限定契約に関する規定を設けている場合に、業務執行取締役等でない取締役であって社外取締役でないもの及び社外監査役でない監査役について責任限定契約を締結しようとする場合には定款変更を行い変更登記を完了することが必要となります。したがって、平成27年5月以降に株主総会を開催する上場会社では、定款変更を定時株主総会に議案として提出することを検討する必要があります。

なお、施行日前の行為に基づいて責任が認められる場合に、施行日後の上記の定款変更により責任限定契約の利益を得させるのは会社への賠償金額の減少を招き相当でないので、施行日前の役員等の行為にもとづく責任については、改正前の規律に従うこととしています(会社法附則16条前段)。

今、あらためて最低責任限度額についてみると、社外監査役に対してはかならずしもフレンドリーな規定になっていないことに気づきますね。監査役については社内であろうが社外であろうが、他の取締役に対する信頼の原則の適用がないですし、常勤監査役に対する信頼の原則なるものも免責理論として認められていないですから、社外監査役のおっている責任の重さを痛感します。例をあげましょう。

年収1000万円の常勤監査役1名と年収500万円の社外監査役3名を考えると、

改正前の最低責任限度額

常勤監査役・・・・・・1000万円×2=2000万円

社外監査役(非常勤)・・・・・・500万円×2=1000万円

改正後に一人の社外監査役が社外要件がなくなったとすると

常勤監査役・・・・・・・・・・・・・・1000万円×2=2000万円

監査役(非常勤)・・・・・・・・・・500万円×2=1000万円

社外監査役(非常勤)・・・・・・500万円×2=1000万円

改正前の責任限定契約に関する定款規定ですが、最低責任限度額を上限とするものがかなり多いという印象で、そうだったとすると、

改正前の責任限定契約

常勤監査役・・・・・・なし

社外監査役(非常勤)・・・・・・500万円×2=1000万円

改正後に定款変更をして監査役も同様のプロテクションをえられるようにし、かつ、一人の社外監査役が社外要件がなくなったとすると

常勤監査役・・・・・・・・・・・・・・1000万円×2=2000万円

監査役(非常勤)・・・・・・・・・・500万円×2=1000万円

社外監査役(非常勤)・・・・・・500万円×2=1000万円

定款変更をすれば、常勤監査役の保護がぐっと厚くなるようです。

非常勤監査役と常勤監査役では、必然的に監査の深度がちがいます。多くの場合に非常勤監査役は常勤監査役からの情報に依存するほかありません。おっている善管注意義務の内容そのものには常勤か非常勤かで有意な差は判例上認められていないように思います。監査役は、むしろ常勤と非常勤で責任について分けて、任務懈怠の有無について常勤監査役と非常勤監査役の過失認定について差異を認める(常勤監査役に依存せざるを得ない非常勤監査役の事情を過失認定にとりこみ、常勤監査役に過失ありとされ、非常勤監査役に過失なしとされることを認める)ことがあってしかるべきであると感じます。勉強不足で判例について十分フォローしていないので、すでにそういう判例があるならばぜひご教示下さい。

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