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2015年1月22日 (木)

会計監査人の選解任権の変更とその対応

上場企業の社外監査役ですので、私もこのブログの読者の皆さんと同様、平成26年改正会社法により次の株主総会まで何をしなければならないかが気になっているところであり、それがこのブログでやや自分の勉強としての手控えをアップしている主要な理由ですが、本日は、会計監査人の選解任等に関する議案の内容は監査役会が決定することとされた点について(改正法344条)とりあげます。一番気になるのは次の株主総会招集通知を発する際にはどうなるかという点です。

改正法の施行日は本年
51日予定とされていますが、改正法の施行日前に会計監査人の選解任等に関する決議をするための株主総会の招集手続が開始された場合における会計監査人の選解任等に係る手続については、改正後の344条の規定にかかわらず、「なお従前の例による。」、すなわち、改正前の規定に従うこととしています(改正法附則15条)。そして「株主総会の招集手続が開始された場合」とは、株主総会の招集の決定がなされた場合をいうとされています。つまりは5月1日より前に会計監査人の選解任等に関する決議をするための株主総会の招集の決定が取締役会でなされれば、改正前に従い、5月1日以後であれば改正法に従うというわけです。

3月決算の上場企業では、例年、株主総会招集の決定は、5月の定時取締役会あるいは決算取締役会で、計算書類・事業報告書の承認とともに行われております。この実務を継続するとすれば、本年の定時株主総会に上程される会計監査人の選任議案および解任・不再任議案は、監査役会が決定し、取締役会に決定を通知して取締役会が選任議案を総会議案とする旨の決議を行う必要があります。

この点、監査役会に選解任権等の権限が移る5月1日より前の4月に株主総会の招集と日時場所だけを取締役会で決議して、例年通りの実務を維持できると考えている意見があるようです。しかし、会社法298条は、株主総会を招集する場合には、株主総会の日時及び場所、総会の目的事項(つまり議案)、書面による議決権行使ができることとする場合はその旨、電磁的方法による議決権行使が可能な場合にはその旨、その他法務省令で定める事項を取締役会が決定することを要求しています。取締役会設置会社においては、株主総会は招集賢者が決定した議題以外の事項について決議を行えないので(309条5項)、議題は必ず決定しなければなりません。したがって、この意見の方法では、総会招集決議としては欠陥のある決議を行うことになりますし、また、上記のとおり、「株主総会の招集手続が開始された場合」とは、株主総会の招集の決定がなされた場合をいうとされていることからすれば、欠陥のある決議を行なっても「株主総会の招集の決定がなされた」といえるのか疑問が残ります。また、もしこれが可能であるとしても、適時開示ルールの関係では、株主総会の日時と場所を決定したというプレスリリースを打たないと上場規則違反になるでしょう。決議を2回に分けるというやり方では2回のプレスリリースが必要ということになります。やり方として適切なものであるとは言えないように思います。

なお、会計監査人と会社との会計監査契約は1年ごとですが、解任・不再任しない限りは、契約の更新を株主総会で決議する必要はありません。この場合、取締役会は更新の際に監査役会に意見を取るという実務を行っている上場企業もあると思っておりますが、これは厳密な意味では現行法上の監査役会の選任・解任・不再任の同意を取得しているわけではないと思います。そもそも不再任しないわけですから同意も不要です。

この再任を決定する権限について、現行法は取締役会に帰属するとしています。改正法はどうなのでしょうか。不再任にするかの権限が監査役会に与えているならば、当然再任を決定する権限も監査役会に与えられていると解釈するのが自然であろうと思われます。だとすると、会計監査人をそのまま継続する、あるいは不再任としないという決定を監査役会で行っておくことが必要です。したがって、5月1日以降に、株主総会招集の決定を行う5月の取締役会の前に、監査役会で再任の決議を行い、代表取締役に通知しておくという方法をとるのが適切と思われます。

監査役会として、再任を決定するまでどのようなプロセスを踏むべきでしょうか。会計監査人は計算書類の監査を終了して監査役会に提出するわけですから、計算書類の会計監査が終了し、監査役会が問題がないことを確認できた時点で決定するのが理想的であると思います。決算取締役会は株主総会の招集を決定するのが通常ですから、決算取締役会で計算書類・事業報告書の承認ができるならば(つまりそれまで監査役会の監査を終了することが可能ならば)、決算取締役会の前に監査役会を開催して、計算書類・事業報告書の監査を終了し、同時に会計監査人の再任を決議し、取締役会に監査報告とともに通知すればいいでしょう。

しかし、決算取締役会のタイミングで計算書類・事業報告の承認が間に合わず、その後の取締役会で承認を行っている上場企業も多いものと推察いたします。株主総会招集の決定を行う決算取締役会の前に、監査役会で再任の決議を行い、代表取締役に通知しておくという方法をとるのもやむをえないと思いますが、その場合に、監査役会が再任決定を行う基準として、それまでの会計監査人の活動からみて特に問題がないと認められることが必要でしょう。この点、会計監査人が適切な監査活動をしているかの監査役の相当性判断は事業年度を通じて観察し行いますから、会計監査人と監査役会との意見交換や情報共有の密度が高い企業ほど、その判断は楽でしょう。

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