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2011年5月に作成された記事

2011年5月19日 (木)

地域別震災復興支援ファンドと事業再生手法(3)

地域別震災復興支援ファンドについていろいろ検討してきました。前にも述べましたが、いかにして早く事業を復旧させるかが被災者と被災企業復興のかぎをにぎります。あれやこれやとファンドの構造を考えるより、既存の制度を流用できればそれがもっとも手っ取りばやいわけです。そこで、独立行政法人中小企業基盤整備機構が投資するファンドのストラクチャーが使えないかを検討してみます。

中小機構が投資しているファンドの構造は以下の図のとおりです。

Saiseifund100712 

投資事業有限責任組合を組成して、そこに金融機関、地方公共団体、中小機構が有限責任組合員(LP)として出資します。投資会社も出資し、投資会社が投資事業有限責任組合の無限責任組合員(GP)として出資し、かつ投資事業有限責任組合(投資ファンド)のGPとして段度の業務執行にあたります。GPは投資ファンドの運用者であり、投資対象である中小企業に投資を行います。ファンドの組成に当たって、中小機構は投資をするかどうかの決定をするにあたり提案者(GPとなる投資会社)から提案を受けてそれを審査します。審査に合格したときにファンドが組成されます。

現在、中小機構では、創業期の企業を支援する企業支援ファンド、成長が見込まれる新事業を展開する企業への中小企業成長支援ファンド、再生に取り組む中小企業を支援する再生ファンドの3つがあります。上記の図は再生ファンドの説明図ですが、企業支援ファンドや中小企業成長支援ファンドも同じストラクチャーをとっています。

再生ファンドの場合、中小機構の出資の上限はファンド総額の2分の1で、過剰債務等により経営状況が悪化しているものの、本業には相応の収益力があり、財務リストラや事業再構築により再生が可能な中小企業が投資対象となっています。

再生ファンドの主要な要件は以下のとおりです。(以下は中小機構ホームページからのコピーです)。

1.出資対象とする組合
 過剰債務等により業況が悪化しているものの、本業には相応の収益力があり再生が見込まれる中小企業の再生を中長期的に支援することを目的とすると認められる投資を行う投資事業有限責任組合(以下「組合」という。)であること。
 投資先企業の清算に伴う短期的な収益獲得を目的とする投資や買い取った債権の転売を目的とする投資などであって、投資先企業の再生を目的とすると認められない投資を行う組合は出資対象としない。

2.組合員としての地位及び出資限度額
 機構は、組合(既存組合であることを妨げない。)の有限責任組合員として参加することとし、1組合につき、出資約束金額総額の2分の1(地方公共団体が出資を行う場合には、当該地方公共団体の出資額と合わせて2分の1)を出資限度とする。

 機構の出資約束金額は、1組合につき、60億円を超えない額とする。ただし、機構が30億円を超える出資を行う場合は、その超過額を上回る金額又は5億円のいずれか高い金額を、適格機関投資家が出資することを条件とする。

3.組合の存続期間
 機構が出資する組合の存続期間は10年以内とする。ただし、有限責任組合員と無限責任組合員との合意の上で、3年を超えない範囲内で延長可能とする。

4.出資金の払い込み方法
 出資約束金額を確定した上での「分割払い」の方式であること。ただし、機構の出資約束金額が10億円以下の場合に限り、「一括払い」であることも可能とする。

5.組合契約に盛り込むべき要件
(1)投資対象 
 投資総額の70%以上は、日本国内に本店(企業組合及び協業組合の場合は、その主たる事務所、個人の場合は、その主たる営業所)を置いて、日本国内で事業を行う中小企業者であって、次の[1]. ~ [5]. のいずれかに該当する者に対する投資であること。
[1]. 産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法施行令第15条第1項各号に掲げる者
[2]. 民事再生法又は会社更生法に基づく手続開始決定会社
[3]. 資産の時価評価の結果等から一定の要件に実質的に該当する事業者
[4]. 中小企業再生支援協議会の再生計画策定支援を受ける者
[5]. 無限責任組合員が策定支援した再生計画に基づき、[1]. から[3]. までに掲げる者から事業を承継する者

(2)投資形態
 投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項各号に規定する投資形態によること。

(3)投資先企業に対する支援
 無限責任組合員は、投資後における投資先企業の業況や事業の進捗状況等を継続的に把握するとともに、投資先企業に対して経営、技術等に関する支援を行うものとし、その旨を投資先企業との間で締結する投資契約書、匿名組合契約書等に明記すること。

(4)利益相反
 無限責任組合員は、本組合に不利益が生じないよう利益相反に配慮すること。
[1]. 無限責任組合員は、組合存続期間の2分の1を経過した日又は組合の出資約束金額の総額に占める投資総額の割合が60パーセントを超える日のいずれか早い日までの間は、組合員の事前の承認を得ることなく、本組合の事業と同種又は類似の事業を行うことはできない。
[2]. 無限責任組合員は、組合員の事前の承認を得ることなく、無限責任組合員又は無限責任組合員が運営する他の組合の既存の投資先企業は投資対象としないものとする。

(5)報告義務
 無限責任組合員は、有限責任組合員に対し、次の事項に関し報告するとともに、有限責任組合員から要請があった場合には、投資活動に関する情報の開示を行うこと。なお、[2]. については投資実行の翌月末まで、[3]. については発生後遅滞なく、[5]. については処分収入を得た翌月末までに報告を行うものとする。
[1]. 組合の半期ごとの業務執行状況
[2]. 投資実行した場合の投資先企業の概要、投資額等
[3]. 投資先企業に発生した次に掲げる重要な事情の内容等

 [i]. 投資時点で予定されていなかった、合併、株式交換、株式移転、会社分割、事業譲渡、事業の休止又は廃止、破産、会社更生又は民事再生の手続開始申立等

 [ii]. 上場承認
[4]. 投資先企業の半期ごとの収支その他の経営状況

[5]. 売却・償還等による処分収入を得た場合の当該投資先企業の概要、売却等

(6)管理報酬
 無限責任組合員が組合財産から受領する管理報酬により賄われるべき費用の範囲は、次の各号に掲げるものを基本とする。
[1]. 組合の設立費用
[2]. 投資先の発掘・審査、投資先に対する支援及び組合事業の運営に要する費用

(7)中小企業再生支援協議会との連携
 無限責任組合員は、中小企業再生支援協議会から協力要請があった場合、投資可能な案件に関して再生計画策定支援に参画するなど、中小企業再生支援協議会との連携に努めること。

(8)その他
[1]. 組合は、資金の借入れは行わないこと。
[2]. 無限責任組合員は、出資約束金額総額の1%以上を自ら出資すること。
[3]. 無限責任組合員は、組合財産清算の努力を行った後に、なお残余の未公開株式等が存在する場合には、客観的かつ適正な時価で引き取ること。
[4]. 無限責任組合員が主催する投資委員会へ機構はオブザーバーとして出席することができることを明記すること。
[5].機構は、無限責任組合員の財務内容等の経営状況について、報告を求めることができる

この再生ファンドは、投資対象の企業の収益力があること、すなわち事業が正常な環境で運営されていることを想定して、キャッシュフローがあることを前提にしています。ところが被災企業は当該企業のみならず取引先も被災していて操業がストップしてしまっているので、キャッシュフローがないばかりか、将来の予測もできないので、この再生ファンドのスキームが使えない、というところで停滞しているようです。

そうであるならば、ファンドのスキームが将来使えるようになるために、カンフル剤を被災企業は注射して、とにもかくにも操業を再開してキャッシュの流れを作り出すことが必要です。取引先とも話して、中小企業庁の東日本大震災復興特別貸付を一緒に申請して利用すべきです。この融資は、貸付限度額が大きく、設備資金は15年以内、運転資金は8年以内の貸付期間であり、低利息、据置き期間も最大3年です。この融資を受けてまず復旧にもっていくべきです。

この融資を受けることができるのに受けない被災事業者は、そんなことをしても将来の見込みがたたず、早晩倒産するかもしれないと考えているのかもしれません。お金を借りても将来の見込みが立ちにくく、事業が不安定なのは確かにリスクです。しかし、操業ができずにそのままでいたら、廃業のリスクは日々高まるのです。前者のリスクは、操業が始まりキャッシュが流れ始め数ヶ月すれば将来の図式がすこしは描けるようになり、対応できる可能性がでてます。しかし後者のリスクには対応できません。

まわりの業者で融資を受けている人たちを見てください。少しづつ動き始めているのではないですか。従業員が働いて少しだけど厳しい状況の中で明るくなっていませんか。経営者だからリスクをとっているのです。リスクをとって希望の光をともす、そこから復興が始まります。

不幸にして、うまくいかなくてもまだ打つ手はあります。それが民事再生手続や特定調停手続であり、再生ファンドです。破産法という清算解体という法律ではなく、経営者が経営を続けながら再生をはかる民事再生法という手続があることを忘れてはなりません。また特定調停法もしかりです。

さて、地域別震災復興支援ファンドは、このようなキャッシュフローがなければ動けない再生ファンドから、さらにもう一歩踏み込んで、キャッシュフローが無い段階でも投資を行うことを構想していますし、キャッシュフローが出てきた後の再生ファンドとしての機能も想定していますが、残念ながら本日は時間切れなので(明朝、ロースクールで授業があります)、またこの続きを書きたいと思います。

2011年5月18日 (水)

東電に融資する金融機関の債権カット議論の非論理性について

原発事故の賠償をめぐる議論で、枝野官房長官が金融機関の東京電力に対する貸出債権の免除が必要との見解をのべて、各方面から厳しく批判されていることはご承知のことと思います。私も最近始めたTwitterで「おばかな官房長官が銀行株を数兆円下げてしまった」とけなしました。市場関係者からは東証の斉藤社長をはじめ、マスコミも含めさまざまな方から、思慮がないと厳しく指摘されました。

市場にかかわる者からは、枝野さんや仙石さんのような国民受けするかどうかということをのみバロメーターにものをいうのはよくないというのが共通した理解だと思ってました。(だいたいこの二人は弁護士ですから、法的に筋が通らないことをいっていることは承知しているはずで、確信犯的に市場をかく乱しているのではないかと疑いたくなります。)

ところが、市場関係者で有名な佐山展生さんがTwitterで、「東電問題は、本来リスクを取りお金を出した金融機関、社債権者、株主等が先ずそのリスクに応じた損失を負担すべき。電力株だからといって特別扱いするのであれば上場すべきでない。その認識を確認した上で、東電、安定電力供給システムのあり方につき議論すべき。企業再生支援機構の活用も要検討。」とつぶやいているのを発見しました。正直、びっくりしました。

この短い文から佐山さんの真の意図を測るのは難しいですし、誤解もあるかもしれませんが、そこにあるロジックには、やはり問題があるので議論しておきたいのです。

まず、金融機関は、なぜ原発事故で莫大な賠償責任を負った東電に対する貸付債権を免除しなければならないのでしょうか。

倒産法の秩序の下では、有効に存在する債権は倒産法秩序のもとでしか不利益に取り扱われません。すなわち、会社更生、民事再生、破産という手続の中で、担保権付債権か否かで違いはあるものの、債権額カットは一定の手続で決定されるが、法律上の優先劣後の中でも債権者平等の原則が支配するのであって、手続外でこのような取り扱いを強制することはできません。このような取り扱いはあくまで債権者と債務者の合意によるしかありませんが、金融機関にとってみれば、預金者の資産を預かっており健全な経営を行わなければならないという業法上の義務からいっても、取締役の善管注意義務及び経営判断原則からも、さらに回収不能債権には引当金をあてなければならないという事情からも、合理的な理由がなければ免除はできません。これは法律の立て付けからそうなっているのです。

それでは佐山さんのいっている「リスクをとりお金を出した金融機関」というのは何を意味するのでしょうか。金融機関は確かに信用リスクをとって貸付をしています。その貸付の判断となるのは、上場会社であれば有価証券報告書などの法定の開示書類や、貸出先からの聞き取りの情報、市場における分析等などで、さまざまな情報をベースに信用リスクを評価して与信判断を行っています。しかし、福島第一原発の津波への脆弱性のリスクや原発そのもののリスクというものは、東電の開示書類に記載されたことは皆無なのです。

それでは、金融機関は福島第一原発の危険性を知りえたのでしょうか。だいたい金を借りたい東電が原発は危険だというような情報を金融機関にいうわけもなく、金融機関も知りえないことであったのが実態で、金融機関が福島第一原発のリスクを認識しあるいは認識できる可能性がありながら貸し出したということは、非常に困難でしょう。なにせ多数の原子力の専門家をそろえていた政府からして、原発は安全という立場だったのです。ですから、金融機関は他の一般債権者と同程度の認識しかなかったというべきです。つまり、一般債権者よりも金融機関が不利に取り扱われるべき理屈はなりたちません。すなわち、債権の取り扱いという意味では、福島第一原発事故で東電に対して損害賠償請求権を有している多数の福島県民や企業・団体と同じ地位にあるのです。

それでは、社債権者はどうでしょうか。社債権者も東電の信用リスクをとっているのですが、彼らが信用リスクをとるかどうかの判断の第一の資料となるのは、有価証券報告書等の法定開示書類です。先ものべたとおり、原発のリスクは開示されたことはありませんし、その他の情報で社債権者が社債購入を決めていても、原発リスクを認識して購入しているということはありえないといってしまっていいと思います。ですから、社債権者がとっているリスクは、東電と取引関係に入っている債権者と同様に、東電の倒産リスクというもの以上ではないはずであって、これまた社債権者を特に不利益に扱う理屈はたたないわけです。

では株主はどうでしょうか。株主は有限責任をおっているので、最終的には責任をとらなければなりません。しかし、その責任の取り方は法的には出資相当額を失うということなのです。、有限責任は債権者に対する支払いに財産があてられ、たとえ支払に宛てる財産が足らなくてもそれ以上の負担をかぶらないという意味です。すなわち、論理として株主は株主たる地位がなくなるという意味の責任をとる必要はあるが、それ以上ではないのです。

また、債権者を犠牲にしないという観点から株式を減資するとしても、会社法上株主総会の特別決議が必要とされ、議決権ある株主の3分の2以上の賛同がなければできないことになっています。

現状は、電力株だからといって上場規則上特別扱いをしていることはないわけですから、おそらく佐山さんは、政府の原子力賠償スキームに既存株主の犠牲を一切求めないというアプローチがあると考えているのかもしれません。

本当の問題は、原子力事業者の原子力損害に対する無過失責任を定めながら、わずか1200億円を上限とする原子力損害賠償責任保険の付保をもって賠償措置額の措置を義務付けるのみで、「政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(外国原子力船に係る原子力事業者を除く。)が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。」とリップサービスで締めくくった欠陥法である原子力損害賠償法にあったのです。

その欠陥は、大民法学者である故我妻栄東大教授が1960年代に著したジュリストの論文で正当に指摘したとおり、原子力推進という国策をとりながら原子力損害についてはきわめて中途半端なフレームワークを打ち立てた政府と国会の対応にあったわけです。いってみれは、国の立法上の過誤及び時代の進展に対応すべき原子力損害賠償法の改正を行わなかった懈怠が、今回の困難を作り出しているわけです。東電に金を貸した金融機関は責任をとるべきであるという枝野官房長官発言のナンセンスさは、以上の検討によっても一層明白であろうと考える次第です。すなわち、同義的責任をいえば、欠陥法を放置してきた国会議員こそ全員責任をとって議員歳費を返上すべきであるといったほうが、論理一貫しているわけです。しかし、いつの時代にも決して責任はとらない政治家を抱える不幸に、今わが国は直面しているとしかいいようがありません。

2011年5月 8日 (日)

地域別震災復興支援ファンドと事業再生手法(2)

地域別震災復興支援ファンドは、どのようなストラクチャーにすべきでしょうか。このファンドの投資対象たる被災企業が所在する地域の特性を考慮すると、ファンドの資産(サイズ)もさまざまとなることが予想されます。であるとすれば私募ファンドとして地域の実情に応じたファンドのサイズを目指すべきでしょう。仙台市のような大都市であるならば資産百億円単位のファンドもありうるかもしれませんし、陸前高田市のような地域であるならば数億円から数十億円レベルのファンドサイズとなるかもしれません。要するに地域の実情に応じて、対象となる企業はどの程度あるのか、またどの程度の資本投下ができるのかを考慮して設立することになるでしょう。したがって、公募ファンドではなく、私募ファンドとならざるを得ないわけです。

金商法上の私募ということになると、適格機関投資家である銀行や資本金5億円以上の株式会社で金商法上いわゆるアマ成りを選択していない企業や、特定投資家ではない(一般投資家である)企業や個人の投資家の合計49名以下しか勧誘できないものであることになります。また、ファンドの構造はファンドの実際の運用をつかさどるため匿名組合の形態をとり、営業者として投資経験が十分ある企業ないし当該企業の設立する特別目的会社を無限責任業務執行匿名組合員とし、適格機関投資家や一般投資家には有限責任匿名組合員として出資してもらうことになるでしょう。その場合、ファンドの種となるシーズマネーはまず地元金融機関に出資してもらうことになるでしょう。複数の金融機関から一社あたり数千万円~数億円を出資してもらい、残りは地方自治体や、被災地に縁の深い企業、被災地出身の社長がいる上場企業や地元の有力な資産家に出資を求め、当初の目標とするファンドの資産を形成します。そして公募投信たるマザーファンドがこのベビーファンドに投資を行います、しかし、マザーファンドの形成には法的な問題や設立の実務上の問題をクリアするのに時間がまだかかるので、それができるまでは、ベビーファンドの資金で活動を進めていきます。

このファンドの投資対象は、被災のためバランスシートが大きく痛み、設備が損害を受け、キャッシュフローが入ってこなくなっている企業です。しかし、被災地にはその地域の基幹産業である業種を営む企業もあれば、基幹産業に製品・商品を供給している企業や観光・ホテル・外食のようなサービスを営む企業(「すそ野産業」と仮にいっておきます)もあるでしょう。どの業種のどのサイズのどのような企業を投資対象にするのかについては、このファンドの目的からみて、地域経済が立ち直るうえでもっとも重要な基幹産業にまず優先的に投資することが、結局は基幹産業に関連しているすそ野産業に属する企業に仕事とキャッシュが回ってくることになると考えられるので、基幹産業とならざるを得ません。

問題は、基幹産業だけでも復興に時間がかかりそうなのに、その間にすそ野産業に手を差し伸べないとすその産業そのものの存続がだめになってしまう恐れがあることです。優先順位は基幹産業でも、その周りにある産業にも投資の金がいくようなバランスのある投資が必要です。ただ、ここでいうバランスのある投資とは本来の投資の世界とちょっと違います。同一地域で、基幹産業に頼っている周辺産業に投資しても、なんらのリスク分散にはならないからです。基幹産業が倒れれば周辺の産業もだめになるというリスクの高いファンドが震災支援ファンドなのです。したがって投資してくれる団体や個人は、そのようなリスクを理解したうえで投資していただくことになります。

こうしてみると、地域の産業が復活するのに基幹産業またはすそ野産業に属するどの企業に投資していくべきかは、地域のことがよくわかっている者のアドバイスが営業者にとっては重要であることに気づきます。そのような知識経験を持っているのは、地元金融機関がまず第一でしょう。そうすると地元の金融機関は出資者であると同時に投資助言の役割もになうべきことになるでしょう。しかし、通常、地銀や信用金庫は金商法上の投資助言業登録はしていないと思われ、ファンドとの投資契約を結ぶことができないことになります。他方、地方自治体の産業振興担当部門や、事業再生事業に従事する企業で当該地域についての知識経験のあるところは、投資対象の選定について有益な助言ができるでしょう。そこで、これら団体が投資をしているとすれば、金融機関も含めた投資家たるこれら企業・団体をメンバーとするアドバイスを任務とする委員会を匿名組合の中につくって営業者にアドバイスすることが考えられます。金商法上の投資助言ということになると面倒なので、立て付けとしてはあくまでアドバイスをする委員会ということになるでしょう。

さて、ファンドの戦略は何でしょうか。正直いってリスクだらけのファンドです。戦略は、まず資本投下によって設備と雇用を確保して震災前の通常のオペレーションに戻る段階(第一段階)、次に企業として価値を高めていく段階(第二段階)、さらに投資家がexitする段階(第三段階)の3つのフェーズを検討すべきでしょう。どの程度の期間で達成していくかですが、第一段階は2年~3年、第二段階はその後3年~5年という期間でしょうか。第三段階で配当を出すには投資先企業の収益次第ですが、もしあらかじめ定める目標収益値を上回るリターンを出したら、ファンドを運営する無限責任匿名組合員に対する報酬についてボーナスを出すようなストラクチャーをもってもいいと思います。そして、高配当が現実に達成されても、設立後15年以内の配当については配当所得として算入する必要がないという祖税法上の特別措置をとれば、投資インセンティブを与えることができます。

次に投資対象となりうる企業には、どういう条件をつけるべきでしょうか。まず復興に強い意欲をもつ経営者と従業員がいる企業であることは大前提です。次に、復興によって少なくとも第一段階、第二段階の計画を描ける企業でなくてはなりません。この計画の実現可能性をあまり強く要求すると投資する先がなくなってしまいます。基本的には、被災前の売上、利益、ビジネスの成長ぶり等を考慮しなければなりません。しかしこのファンドは基本的には復興への意欲にかけるファンドなので、たとえ被災前の収益状況がよくなくても復興への希望がもてるならば対象からはずす必要はないと思います。

投資対象となる経営者は、このファンドは投資ファンドなのだということを忘れてはなりません。一定の条件を満たせば、どのような企業でももらえる公的な交付金や補助金とは性格がちがうことを、理解すべきです。投資の対象として善意あふれる投資家に答えるため、ちゃんとした復興計画を示し、それを実行することのできる強い意欲がある経営者と従業員の塊でなければなりません。そして、具体的な目標をたてることです。ある会社はファンドの第三段階での上場をめざし、またある会社はそこまでは無理でも第三段階でのROE7%を実現する、といった投資家に投資意欲をわかせるような目標がいるのです。これなくして投資ファンドは成り立ちません。被災しており右も左もまだわからない現状でこのことを語るのは厳しいかもしれません。しかし、運営にあたる無限責任匿名組合員たる企業は投資家に対して、投資について善管注意義務を負っているのです。そういう計画も語れない企業に投資できるわけもないという現実を受け止めなければなりません。

もし、そうではなく単に補助金がほしいならば、それは災害救助法23条1項7号の生業に必要な資金・現物の給付を強く国に求めていくべきでしょう。この点については、従前のエントリーでご紹介した兵庫県弁護士会が経済基盤が脆弱な事業者に対して適用すべきことを指摘しているところであります。実際、同条の生業資金の給付はファンドの投資対象とならならい事業者の最後のよりどころです。また、これまた前のエントリーで述べた震災復興基金を県が設立してその基金からの交付金を当てにすべきでしょう。ただし、阪神淡路大震災の震災復興基金やその他の制度貸付で現金交付しても、兵庫県では倒産率が震災発生2年後からは全国平均を上回っているという現実を想起すべきです。単純に現状にもどすためのカンフル剤としての現金給付や貸付だけでは、生き残ることができない厳しい現実があるのです。これを乗り越えていくためには、中小零細業者は助け合って皆でアイデアを出し合っていかなければなりません。たとえば、ファンドの投資対象となるべく、残された会社資産を利用して新たな共同事業を同業者が団結してできないかどうかなど、文字通り統合化して皆で起業していくような努力が要求されるでしょう。そのために、企業再生のプロである中小企業事業再生機構等が企業を支援しアドバイスをしていくのです。

2011年5月 3日 (火)

石巻に行きます。

石巻の方から以下のような支援を求めるメールが来ました。

「宮城県石巻市で会社を経営している者です。故郷石巻は大震災・大津波で甚大な被害を受け、弊社が運営していた飲食店2店舗も損壊し、現在休業状態です。地元の経営者仲間の事業所の多くも営業不可能に陥ったところが多く、そこで働いていた従業員もやむなく解雇・休業に追い込まれ町に失業者が溢れている状況です。経営者として早期の再開を望んでいますが、損壊した店舗・工場の再建資金が乏しいのが現実です。中小企業庁や経済産業省のHPを見ましても出てくるのは低金利の融資ばかり。被災前でも厳しい資金繰りを強いられていた事業所が多く、追加借入をしようという経営者はあまりいません。我々経営者は失業保険にも入れず、事業所は地震保険にも入れず、貯金を切り崩して不安な日々を過ごしております。(中略)補助金もあてにならず、借入もしたくなければ、民間の資金を活用するしかない、と思い色々考えました。不動産ファンドのスキームを被災地再建に応用できないか、と考えファンド運営会社にメールしたり、中小機構に問い合わせたり、日本政策投資銀行の東北支店「東北復興支援室」に出向いたりして相談しましたが、民間の資金を被災地に導入する有効な手立ては見つかりませんでした。そんな中先生のブログを拝見しました。先生のような方のご協力が得られれば、石巻しいては東北の被災企業が立ち直れるのでは、と思います。連休明けには地元の経営者の仲間と「石巻被災事業所復興委員会」を開き、再建について話し合います。先生若しくは先生のお仲間にお力添えをいただけませんでしょうか。」

日は先ですが、30日に石巻に行くことにしました。今日はこれから大阪に行きます。

国会議員の皆さん、この救援を求める声にこたえてください。

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