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2011年5月19日 (木)

地域別震災復興支援ファンドと事業再生手法(3)

地域別震災復興支援ファンドについていろいろ検討してきました。前にも述べましたが、いかにして早く事業を復旧させるかが被災者と被災企業復興のかぎをにぎります。あれやこれやとファンドの構造を考えるより、既存の制度を流用できればそれがもっとも手っ取りばやいわけです。そこで、独立行政法人中小企業基盤整備機構が投資するファンドのストラクチャーが使えないかを検討してみます。

中小機構が投資しているファンドの構造は以下の図のとおりです。

Saiseifund100712 

投資事業有限責任組合を組成して、そこに金融機関、地方公共団体、中小機構が有限責任組合員(LP)として出資します。投資会社も出資し、投資会社が投資事業有限責任組合の無限責任組合員(GP)として出資し、かつ投資事業有限責任組合(投資ファンド)のGPとして段度の業務執行にあたります。GPは投資ファンドの運用者であり、投資対象である中小企業に投資を行います。ファンドの組成に当たって、中小機構は投資をするかどうかの決定をするにあたり提案者(GPとなる投資会社)から提案を受けてそれを審査します。審査に合格したときにファンドが組成されます。

現在、中小機構では、創業期の企業を支援する企業支援ファンド、成長が見込まれる新事業を展開する企業への中小企業成長支援ファンド、再生に取り組む中小企業を支援する再生ファンドの3つがあります。上記の図は再生ファンドの説明図ですが、企業支援ファンドや中小企業成長支援ファンドも同じストラクチャーをとっています。

再生ファンドの場合、中小機構の出資の上限はファンド総額の2分の1で、過剰債務等により経営状況が悪化しているものの、本業には相応の収益力があり、財務リストラや事業再構築により再生が可能な中小企業が投資対象となっています。

再生ファンドの主要な要件は以下のとおりです。(以下は中小機構ホームページからのコピーです)。

1.出資対象とする組合
 過剰債務等により業況が悪化しているものの、本業には相応の収益力があり再生が見込まれる中小企業の再生を中長期的に支援することを目的とすると認められる投資を行う投資事業有限責任組合(以下「組合」という。)であること。
 投資先企業の清算に伴う短期的な収益獲得を目的とする投資や買い取った債権の転売を目的とする投資などであって、投資先企業の再生を目的とすると認められない投資を行う組合は出資対象としない。

2.組合員としての地位及び出資限度額
 機構は、組合(既存組合であることを妨げない。)の有限責任組合員として参加することとし、1組合につき、出資約束金額総額の2分の1(地方公共団体が出資を行う場合には、当該地方公共団体の出資額と合わせて2分の1)を出資限度とする。

 機構の出資約束金額は、1組合につき、60億円を超えない額とする。ただし、機構が30億円を超える出資を行う場合は、その超過額を上回る金額又は5億円のいずれか高い金額を、適格機関投資家が出資することを条件とする。

3.組合の存続期間
 機構が出資する組合の存続期間は10年以内とする。ただし、有限責任組合員と無限責任組合員との合意の上で、3年を超えない範囲内で延長可能とする。

4.出資金の払い込み方法
 出資約束金額を確定した上での「分割払い」の方式であること。ただし、機構の出資約束金額が10億円以下の場合に限り、「一括払い」であることも可能とする。

5.組合契約に盛り込むべき要件
(1)投資対象 
 投資総額の70%以上は、日本国内に本店(企業組合及び協業組合の場合は、その主たる事務所、個人の場合は、その主たる営業所)を置いて、日本国内で事業を行う中小企業者であって、次の[1]. ~ [5]. のいずれかに該当する者に対する投資であること。
[1]. 産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法施行令第15条第1項各号に掲げる者
[2]. 民事再生法又は会社更生法に基づく手続開始決定会社
[3]. 資産の時価評価の結果等から一定の要件に実質的に該当する事業者
[4]. 中小企業再生支援協議会の再生計画策定支援を受ける者
[5]. 無限責任組合員が策定支援した再生計画に基づき、[1]. から[3]. までに掲げる者から事業を承継する者

(2)投資形態
 投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項各号に規定する投資形態によること。

(3)投資先企業に対する支援
 無限責任組合員は、投資後における投資先企業の業況や事業の進捗状況等を継続的に把握するとともに、投資先企業に対して経営、技術等に関する支援を行うものとし、その旨を投資先企業との間で締結する投資契約書、匿名組合契約書等に明記すること。

(4)利益相反
 無限責任組合員は、本組合に不利益が生じないよう利益相反に配慮すること。
[1]. 無限責任組合員は、組合存続期間の2分の1を経過した日又は組合の出資約束金額の総額に占める投資総額の割合が60パーセントを超える日のいずれか早い日までの間は、組合員の事前の承認を得ることなく、本組合の事業と同種又は類似の事業を行うことはできない。
[2]. 無限責任組合員は、組合員の事前の承認を得ることなく、無限責任組合員又は無限責任組合員が運営する他の組合の既存の投資先企業は投資対象としないものとする。

(5)報告義務
 無限責任組合員は、有限責任組合員に対し、次の事項に関し報告するとともに、有限責任組合員から要請があった場合には、投資活動に関する情報の開示を行うこと。なお、[2]. については投資実行の翌月末まで、[3]. については発生後遅滞なく、[5]. については処分収入を得た翌月末までに報告を行うものとする。
[1]. 組合の半期ごとの業務執行状況
[2]. 投資実行した場合の投資先企業の概要、投資額等
[3]. 投資先企業に発生した次に掲げる重要な事情の内容等

 [i]. 投資時点で予定されていなかった、合併、株式交換、株式移転、会社分割、事業譲渡、事業の休止又は廃止、破産、会社更生又は民事再生の手続開始申立等

 [ii]. 上場承認
[4]. 投資先企業の半期ごとの収支その他の経営状況

[5]. 売却・償還等による処分収入を得た場合の当該投資先企業の概要、売却等

(6)管理報酬
 無限責任組合員が組合財産から受領する管理報酬により賄われるべき費用の範囲は、次の各号に掲げるものを基本とする。
[1]. 組合の設立費用
[2]. 投資先の発掘・審査、投資先に対する支援及び組合事業の運営に要する費用

(7)中小企業再生支援協議会との連携
 無限責任組合員は、中小企業再生支援協議会から協力要請があった場合、投資可能な案件に関して再生計画策定支援に参画するなど、中小企業再生支援協議会との連携に努めること。

(8)その他
[1]. 組合は、資金の借入れは行わないこと。
[2]. 無限責任組合員は、出資約束金額総額の1%以上を自ら出資すること。
[3]. 無限責任組合員は、組合財産清算の努力を行った後に、なお残余の未公開株式等が存在する場合には、客観的かつ適正な時価で引き取ること。
[4]. 無限責任組合員が主催する投資委員会へ機構はオブザーバーとして出席することができることを明記すること。
[5].機構は、無限責任組合員の財務内容等の経営状況について、報告を求めることができる

この再生ファンドは、投資対象の企業の収益力があること、すなわち事業が正常な環境で運営されていることを想定して、キャッシュフローがあることを前提にしています。ところが被災企業は当該企業のみならず取引先も被災していて操業がストップしてしまっているので、キャッシュフローがないばかりか、将来の予測もできないので、この再生ファンドのスキームが使えない、というところで停滞しているようです。

そうであるならば、ファンドのスキームが将来使えるようになるために、カンフル剤を被災企業は注射して、とにもかくにも操業を再開してキャッシュの流れを作り出すことが必要です。取引先とも話して、中小企業庁の東日本大震災復興特別貸付を一緒に申請して利用すべきです。この融資は、貸付限度額が大きく、設備資金は15年以内、運転資金は8年以内の貸付期間であり、低利息、据置き期間も最大3年です。この融資を受けてまず復旧にもっていくべきです。

この融資を受けることができるのに受けない被災事業者は、そんなことをしても将来の見込みがたたず、早晩倒産するかもしれないと考えているのかもしれません。お金を借りても将来の見込みが立ちにくく、事業が不安定なのは確かにリスクです。しかし、操業ができずにそのままでいたら、廃業のリスクは日々高まるのです。前者のリスクは、操業が始まりキャッシュが流れ始め数ヶ月すれば将来の図式がすこしは描けるようになり、対応できる可能性がでてます。しかし後者のリスクには対応できません。

まわりの業者で融資を受けている人たちを見てください。少しづつ動き始めているのではないですか。従業員が働いて少しだけど厳しい状況の中で明るくなっていませんか。経営者だからリスクをとっているのです。リスクをとって希望の光をともす、そこから復興が始まります。

不幸にして、うまくいかなくてもまだ打つ手はあります。それが民事再生手続や特定調停手続であり、再生ファンドです。破産法という清算解体という法律ではなく、経営者が経営を続けながら再生をはかる民事再生法という手続があることを忘れてはなりません。また特定調停法もしかりです。

さて、地域別震災復興支援ファンドは、このようなキャッシュフローがなければ動けない再生ファンドから、さらにもう一歩踏み込んで、キャッシュフローが無い段階でも投資を行うことを構想していますし、キャッシュフローが出てきた後の再生ファンドとしての機能も想定していますが、残念ながら本日は時間切れなので(明朝、ロースクールで授業があります)、またこの続きを書きたいと思います。

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