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2011年4月25日 (月)

地域別震災復興支援ファンドと事業再生手法(1)

このブログで何回か主張しました震災復興支援ファンドのうち、地域別に設立する震災復興支援ファンドの構造と中小零細企業への再生支援の方法について考えてみたいと思います。

漁業を例にとります。漁業に従事する方々は東北の被災地にあまたいますが、いずれも中小企業が保有し運用する漁船に雇われ漁業員として乗っているか、あるいは、個人個人で小さい漁船を所有し漁業を行っているかどちらかでしょう。

まず中小企業は、保有する船が完全にやられていると思ってよいでしょう。漁具も流されだめになっているでしょう。会社であれば、資産の部のうちの固定資産が完全にやられている状態です。借入金などの負債を考えれば、この状態では、おそらく債務超過の状態でしょう。民事再生法には、のせられません。事業そのものがとまっておりキャッシュフローがないばかりでなく、仮に事業が動き出しても、債務超過のレベルがひどく、民事再生の手続にはめるのは難しいように思います。仮に再生開始決定がでても(民事再生手続開始の要件は「債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」または「債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」です)、民事再生計画の承認に必要である再生を行えば清算価値を上回るという保障があるという要件(清算価値保障原則)を満たせないと思われます。

このような中小企業再生のためには、第一に負債の主要部分である借入金の免除により負債の部を軽くしてやること、第二に資本の部に新たな資本注入をして、漁船で修理可能なものは修理し、設備を回復し、ひと時でもはやく海にでたい従業員を海に送り出し、漁獲を確保してキャッシュを生む活動ができるようにしてあげることが必要です。第三に事業活動をささえるだけの無利息ないし低利の融資が必要です。

第一の部分の債務免除は銀行、信用金庫、信用組合、漁業協同組合などの債権者の協力が必要です。これを行うためには、債務免除により痛む自己資本に対する公的資金注入と、債務免除にかかる債権の無税償却が貸し手側には必要です。この役割は、今、政府が進めている金融機能強化法による金融機関の自己的な資本注入に頼ることになります。政府保証枠は12兆円ですから、相当の枠がありますが、これは結局、国の負担となります。

第三の部分は、公的融資、金融機関からの融資となります。これに付け加え、阪神・淡路大震災のときに考案された震災復興基金を設立し、機動性ある資金を確保してその一部を融資にまわすことも考えるべきでしょう。無利息融資の部分を増やしてやることが必要だからです。ただし、債務負担のレベルをあげると、震災後数年で耐えられなくなり、結局倒産にいたる確立が高いという事実があります。ですから、無利子の期間5年程度の融資割合を多くし、有利子負債の割合を抑えてあげるようなアドバイスが必要です。それには資本注入後、業務を再開した後のキャッシュフローと業務活動に必要な費用の予測が必要ですし、また無利子負債、有利子負債のバランス、資金繰表の作成なども必要です。

第二の部分ですが、この資本注入のために地域別震災復興支援ファンドが必要です。なぜならば、国や地方自治体の行う投資活動については、厳密な法的な意味ではないとしても投資対象となる事業は「公的な」ものでなければならないという政治的な制約があるからです。仮に公共目的がない純粋私企業に資本注入を行うことが可能だとしても、投資ができるレベルの中小企業は一定の規模以上に限定されてしまい、どの企業をえらぶのかどうかという公平性の問題がおきる可能性が大です。

それを避けようとすると、公益目的の事業を行う公営企業しかありません。しかし、何十もの私企業を母体として(というか解体して)公営企業とするしかないとすると(宮城県知事の提案はこの発想であろうかと想像しています)、公営企業としての根拠法が必要であり、しかも新設となりますから、役所主導でことが動かざるをえません。一般的な私企業を母体とすることでは公営企業とすることは難いと思います。

しかし、いくつもの私企業が被害をうけているからこそ、そこに働く経営陣と従業員の意欲に期待すべきで、被害の実情もやってきたことも違う人たちを無理に公営企業のもとに統合のは、組織が大きすぎる、チームワークをさせるまでに時間がかかる、効率が悪くなるなどのおそれがあります。餅は餅屋のことわざのとおり、事業の運営は意欲の高い民間にまかせたほうがいいと思います。うまくいくところもあれば、残念ながらうまくいかないところもあるでしょう。しかし、自助努力によって生き延びて強くなってくる企業こそ将来が担えるのです。モラルハザードをおこさないためにも、その淘汰も覚悟すべきでしょう。

また、このブログでみたとおり、国や地方自治体の財源には限度があります。地方自治体も公債を発行できますが、神戸市の実質公債費比率が震災後も改善しないのをみると、震災の影響が長く自治体財政を脅かすものであることが実証されており、なるべく避けるべきであると思われます。福島、宮城、岩手の実質公債比率は15~18%のレベルですから決して良くはありません。

ですから、地方自治体が仮に借金して用意したキャッシュは、一度、公共的な色彩を帯びた器にいれて、それから投資するほかないのです。それが地域版震災復興支援ファンドとなります。

ただ、ここで想起すべきは第三セクターのにがい経験があるということです。第三セクターの問題は、出資した自治体が補償していたことにより際限なく膨れ上がる債務について誰も止めなかったということです。しかしファンドの形態であれば、自治体はファンドを通じて出資はするが、補償はしなくてすみます。失敗すればファンドへの出資は返ってきませんが、出資額が一定程度に納まれば、自治体も耐えられます。自治体の出資比率を小さくして、民間の資金を大きくすることがポイントです。

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