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2011年4月 6日 (水)

震災復興に必要なコスト試算からみる民間資金の必要性

前回のエントリーまで、民間資金の必要性を論じましたが、本日は分かっている限りの資料で、どれくらいの資金がいるのかをはじきだしてみたいと思います。誤解があるかもしれませんが、あくまで備忘録ということでご容赦下さい。

被災者生活再建支援法に基づく指定被災者再建支援法人である財団法人都道府県会館の支援金基金から支出する住宅再建の支援金は、上限が一世帯300万円です。警察庁の調査によると建物の損害は約20万件です。他方、損保協会では推定で50万件の家屋が被災しているといっていますから、20万件くらいは全壊しているとみてもそんなにはずれてはいない数値であろうと思います。そうすると、住宅再建支援金だけで6,000億円の財源が必要です。

ところで、都道府県会館が積み立てている支援金基金の基礎財産と運用財産の合計は600億円しかありません。これから10年で住宅再建が完了するとして、毎年600億円を支援するためには、運用益4%として1兆5000億円の運用財産が必要となります。一つの都道府県あたり300億円の追加拠出が必要になってしまいます。しかも住宅再建はここ3年間くらいが一番集中するでしょうから、3年間で6,000億円の3分の2の支援が行われるとすると、3年で4,000億円、毎年1,333億円の支援が必要です。これを運用財産の運用益で出すとすると、年4%の利回りと仮定しても3兆3,325億円の運用財産が必要という計算になります。今の運用財産に3兆2,725億円を追加拠出しなければなりません。都道府県一つあたりの追加拠出額は、654億円余りとなります。これは無理なので、国が新たに右の金額を追加拠出しなければなりません。

また、阪神・淡路大震災復興基金の基礎基金は8,800億円で、兵庫県と神戸市が負担しております。この運用益が復興に使われましたが、その総額は13年間で3,300億円です。このうち、被災者の生活対策に51%(1,683億円)、住宅対策に31%(1,023億円)が使われています。この合計額である2,706億円が直接的な個人補償に使用されたという計算になります。

復興基金は被災者生活再建支援法成立以前に設立され、被災者生活再建支援法成立以後は補完関係にあったわけですから、復興基金の住宅対策は、被災者生活再建支援法の住宅支援金でも足りない部分をおぎなっていたということでしょう。また、住宅対策より生活対策に51%の資金が使われたということは、上記の住宅支援金6000億円に付け加え、生活対策資金が別立てで必要であることを示唆しています。

阪神・淡路大震災からみて、生活対策資金は住宅対策の1.5倍必要と仮定すると、10年間で6,000億円の1.5倍=9,000億円必要ということになります。年間900億円の支援ということです。これを復興基金の運用益で補うとすると、年4%の利回りとして2兆2,500億円の基礎財産・運用財産が必要という計算になります。この金額を被災した県と市などの自治体だけで債務負担するのは無理でしょう。

次にインフラ関係です。阪神淡路大震災に対する13年間の復興費用は合計で16兆3000億円(!)と報告されています。そのうちのインフラ復興に使われた金は9兆8,300億円です。今回の震災は死者行方不明者だけでも阪神淡路大震災の4倍以上で、広域の市町村が被害をうけていますから、10年で復興するという計画をたてる前提で、控えめに被害が2倍だと仮定しても、インフラだけで20兆円近くかかる計算になります。インフラはここ3年くらいがもっとも費用がかかるので、本年から3年間は毎年3兆円の支出が必要と見積もってもおかしくはありません。これは国が負担するほかなさそうです。

以上、赤い文字で示した10年間の住宅再建支援金、生活対策支援金及びインフラ関係復興資金を合計すると21兆5,000億円となります。

そしてその資金を運用益からひねり出すために、①国は住宅支援のための基金への追加拠出又は設立に当初3兆2,725億円が必要である、②復興基金の設立のため国や被災した県と政令指定都市等で2兆2,500億円の拠出が必要である、③国はインフラ整備に3年間は毎年3兆円の支出が必要である、ということになります。初年度だけで、8兆5,225億円が必要という計算になります

これ以外にも、阪神・淡路大震災では産業復興資金が10年間で2兆8,500億円、福祉の街づくり資金2兆8,350億円、都市防災資金3,150億円が投入されました。東日本大震災復興対策でもこれらの支出が必要ならば、復興に必要な資金はますます膨らみます。

なお、上記に説明した運用財産の規模は利回り率が低下すればさらに大きな金額が必要となりますが、運用益4%をあげるのは今の市場環境では難しいように思います。

仮にこれらの債務負担を国単独でやるとすると、歳入が48兆円しかない国が何らの予算使途の見直しなしに、これを全額負担すれば財政破綻のリスクはきわめて高くなります。

以上はあくまでラフな試算でありますが、ここから推測されるのは、巷間いわれている20兆円よりもずっと多額の復興資金は必要ではないかと思われます。感覚で恐縮ですが、10年間で30兆円は必要になるという感じがいたしします。政府災害対策本部は、被害の実情を捉えて10年間の復興資金の総額と、これから3年目くらいの資金はどれくらいになるかを早く見極める必要があります。また、こども手当に要する年間財源2兆円はこちらに振り向けるほかないことは余りにも明らかであり、その他ばら撒き予算の財源はすべて復興費にまわさなければならないと思います。

さらに、国の財源では足りず、民間資金を大幅に導入する選択肢を考えておかないと、10年での復興は非常に困難ということになります。ご紹介した林さんのプレゼンテーションによると、阪神淡路大震災の復興の総事業費16兆3,000億円の出所は国37%、県14%、市町18%、復興基金2%、国関係団体14%、県・市町関係団体5%、民間事業者10%の割合だったそうです。国関係団体や県・市町関係団体の負担は実質的には国や地方自治体が負担していると思われますので、復興資金の90%である14兆7,000億円が公的資金であったということです。9割の国・自治体負担をいかに民間資金で代用するか、ここが復興計画の成功を左右する要となりそうです。

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