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2011年3月22日 (火)

こんな時に忘れがちなインサイダー取引規制

大災害にあったときには、各企業さんとも損害の把握と企業活動の一日でも早い回復に目が向くでしょう。それは極めて当然のことですが、インサイダー取引規制ではちょっと注意してもらいたいことがあります。

金融商品取引法166条2項2号は発生事実を知って有価証券の取引を行うことを禁止しております。発生事実には、「災害に起因する損害」が含まれています(同号イ)。ただし、軽微基準があり、「災害に起因する損害の額が最近事業年度の末日における純資産額の3%に相当する額未満であると見込まれるとき」は重要事実とはなりません(有価証券等の取引等の規制に関する内閣府令50条1号)。物的損害においては、損害額はその物の再取得額ではなく、帳簿価額を基準に算定されるということになっております。保険による補てんは一切考慮されません。

上場企業の子会社について災害に起因する損害が発生したときも、まったく同じ基準で重要事実とされています。当該上場企業が発行する株を、会社関係者又は第一次情報受領者が右重要事実を知りながら取引するとインサイダー取引違反になります。

現状で把握している損害のレベルが、前事業年度の純資産額の3%に届くかどうかを注意してください。損害額の程度は概算でもいいので適時計算されるべきでしょう。重要事実であることの認識が、社内でちゃんとされているかどうか、重要情報としての管理が徹底されているかどうかもチェックしてください。

また、主要取引先との取引の停止も発生事実とされています。主要取引先とは、前事業年度における売上高または仕入高が売上高の総額または仕入高の総額が10%以上である取引先をいいます。立法担当官の解説によれば、「取引の停止」とは取引が停止されたことをいい、その原因を問わないとされています。一時的中止が該当するかですが、ある部品の仕入先が当該部品の製造を中止した場合は取引の停止となると解説されているところをみると、一時的中止はこれに該当しないと思われます。しかし、取引再開のめどもたたないような場合には、極めて微妙です。

してみると、これらの発生事実が発生した上場企業がどのていど当該発生事実を「公表」するかによってインサイダー取引になるかが変ってまいります。TDnetによる公表は、2以上の報道機関に対する公開後12時間の経過の方法によるよりも、公表の効果発生が早いのでこれを利用すべきでしょう。

なお、東証のほうでも損害の状況をいち早く適時開示するよう要請がでていると理解していますが、これは投資家への情報という側面もありますが、うっかりインサイダー取引を防止するためでもあります。

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コメント

とも先生、ごぶさたしております。また、関西では想像できないほど、東京の方々がご不便な思いをされていることも聞き及んでおります。

さて、本日のエントリー、実は今夜ブログで書こうと思っていたところでしたので、ビックリいたしました。実はすでに同様の相談案件もきておりまして、慎重な情報取り扱いを要請しているところです。先生のエントリーを読み、わが意を得たり、との思いです。

いよいよ東北の弁護士の方々による「無料法律相談」等が始まったようですが、我々阪神大震災の「青空相談」を経験した者もなんらかの形でお役に立てるよう、大阪弁護士会を中心に鋭意検討しているところです。

TOSHI先生

ご無沙汰しています。私が監査役をしている会社の被害状況が明らかになってきたときに、真っ先に同僚監査役と取締役に周知をお願いしたことであります。3日くらい原発関係に気をとられたので、本日のアップとなりました。

TOSHI先生がブログで指摘されどなたかがコメントされていた関東弁護士連合会編「Q&A災害時の法律実務ハンドブック」は、完全に売り切れており入手困難です。関弁連ですぐにでも増刷依頼すべきなのではないかと思いますが、東京の弁護士会の動きは何ら表にあらわれていません。日弁連のホームページにもなにもアップされないところをみると、もう少し被災地の援助が進むのをまっているのではないかと思います。私もボランティアで出動するつもりでおります。阪神大震災のときの大阪・神戸の経験は貴重なので、ぜひ情報共有化をお願いしたいと思います。例えば倒産・事業再生ネットワークのようにすぐに質問に答えられるように日弁連ないし大阪弁護士会でメーリングリストを作っていただけると、応援にいく弁護士だけでなく青森、岩手、宮城、福島、茨城の弁護士たちにとっては大変心強いものになると思います。

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