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2011年2月28日 (月)

再び会社法のガバナンスを考える

もう2月も末になってしまいました。1月11日に書き始めた下記記事を今出すなんてどうかな、と思いましたが、所詮、備忘録なので、書いておきましょう。

『月刊監査役』2011年1月号は、昨年10月に福岡で行われた日本監査役協会全国集会・全体会の報告記事です。トピックは「監査役制度の会社法制の見直し」です。

私は第2分科会の司会兼報告者で出席していましたが、全体会は仕事の都合ででられませんでした。すべてが終了したあとの懇親会で何人の方から「先生は分科会で日本企業の不適正会計事例はアジアで最高数で非常に困った状況になっていると発言していたが、葉玉先生は日本の会社法のガバナンスは世界にほこるべきものであると発言していたんですよね。」といわれ、びっくりしていたので、葉玉発言はどういうコンテクストでされたのかも含めて、月刊監査役の座談会の記事はとても興味深く読みました。

独立取締役設置義務化という議論に対して、葉玉先生や経団連の阿部さんはこう論じておられます。日本の会社の実態は取締役の大多数が同時に執行を担当しており、取締役会も会社法で決議事項とされている事項以外に比較的細かいことまで広く決定している。これは多数の社外取締役からなる取締役会が執行サイドをモニタリングするというモニタリングモデルではない。取締役と執行サイドが完全に同一化しているモデルとの中間くらいのモデルであり、監査役がモニタリングをしている。こういう実態があるのであるから、もし社外取締役を置くことを義務付けるならば取締役会の在り方は相当変わらなければならないが、それでは日本の経営はまわっていかない。

私の認識は、会社が適時開示を行った不適正会計事例が平成17年から100社以上、昨年だけでも私が調べた限りでも30社近くもあるという現状では、とても世界に誇るガバナンスなんて言えないと思っています。とはいっても、葉玉先生と阿部さんが全体会の討論で指摘された点は、確かにそうだと思いました。

といいますのは、監査役として取締役会のあり方をみていますと、取締役会には確かに会社法で法定されている事項以外にさまざまな事項が上程されてくることを実感します。それで、もし取締役会をモニタリングモデルでデザインするとすれば、取締役会の議決事項を減らして最重要な問題(配当政策、資本政策、長期的なストラテジー等)にうんと集中しなければなりません。

これを行うには条件があります。第一に、社外取締役も含めて、そのような検討が十分可能な実力をもった取締役によって取締役会を構成しなければなりません。当然、業界のことも十分研究し、さらに第三者的・株主的な目でみれる独立取締役でなければお話にならないわけであります。

第二に、代表取締役からさらに執行役員等への大幅な権限委譲が必要です。これには、執行役員が十分な力量をもっていなければなりません。肩書きではなく、経営者としての判断ができる十分な知識・経験が必要です。

第三に、権限委譲される執行サイドがリスクについて十分検討し、かつ検討できる体制が構築され、運用されることが必要です。例えば、経営会議にあがる前に、法務面、コンプライアンス面、税務面、会計面、財務面その他の観点から、ビジネスにまつわるリスクがしっかりと社内で検討され尽くしているという体制が必要です。

では、現状、取締役会に上程しているのは、「今の取締役会が上記のような機能を果たしているから」ということなのか。そうは言えないわけですね。全ての会社で取締役会がリスクを見逃していないかといいますと、決してそうではないわけであります。それは不祥事の数がそれを物語っていますし、それ以上に成長がない会社がたくさんあるということがあるわけです。

ところが、「上記のようなリスク検討は経営会議で十分なされて取締役会にあがっている。」というのが多くの業務執行担当の取締役さんたちの認識ではないでしょうか。「いまできていないというわけではないから、余計な世話でやらなければならないことを増やしてくれるな」という声には、確かに理解できる側面があります。ただし、本当に今できているかどうかですが。ここの認識の違いが大きく、議論がうまくかみ合わないのかなと思います。

「経営会議において徹底的に揉まれるならば、それは十分機能しているから、取締役会がセレモニーとなっても別に宜しい」というやや乱暴な意見もあるわけですが、取締役が業務執行担当を兼任しており、経営会議でしっかりとした議論ができていれば、「なにが問題なんだ、独立取締役も経営会議に参加してモニターしてればいいではないか」、という議論さえもありえるわけです。

そうすると、経営会議で、ちゃんと株主の利益やステークホルダーの利益をも考慮に入れた検討がしっかりなされているかどうかが、結局は問題の本質であって、モニタリングモデルを強く主張する方々は、「取締役会でもそういう検討はされず、ましてや経営会議でもなされていないではないか。だから変える必要がある。」ということをいわれているのであろうと推測いたします。

こうして検討すると、大きな問題の一つは、取締役ではない執行役員がどれくらい育っているか、社内体制としてリスクの検討が十分できるような人員を営業部隊も管理部隊も抱えているかであって、これこそ迅速な決定及び執行の鍵を握るのではないかと思っています。そうだとすると、モニタリングモデルを推し進めるにしろ、今のモデルで続けるにしろ、社内のマネジメント力強化こそ必要になりますね。これは大変なことです。資生堂さんはかなりモニタリングモデルに近くなってきているというお話しを聞いたことがありますが、それでも10年かかっているとか。企業全体でマネジメント力を強化するということに近いお話しですから、簡単にはいかないですね。そういうことができたら、初めて取締役が最重要な成長戦略、資本政策の議論にうんと集中できるということになるんでしょうね。

なお、月刊監査役No.579は臨時増刊号で、そちらに私の分科会「企業集団における内部統制と監査役監査-親子会社の関係を中心に」が掲載されていますが、この論点についてはまた改めて検討したいと思います。

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