« 阿久悠さんと坂本冬美さんに感謝 | トップページ | ボルカー・ルールの衝撃(そして日本のチャンス) »

2010年6月 3日 (木)

訂正内部統制報告書提出の必要性は何で判断するか

2年目を迎えた内部統制報告の話題の一つとして、前年度の内部統制報告については有効という内部統制報告をしていたが、前年度の評価範囲外から「重要な欠陥に相当する」不備が発見された場合に、内部統制報告書の訂正報告書を提出すべきかという問題があります。

この問題について、昨日行われた日本取締役協会で続いている研究会である内部統制WG(座長は私)で、TOSHI先生が報告をされました。TOSHI先生、どうもありがとうございました。TOSHI先生の報告は、内部統制報告書の訂正報告書を提出した会社8社の分析を含んでいました。私とはかなり意見が違いましたが、皆さんで検討する材料をたくさんいただきました。

その中で、金融庁Q&A問67と問71をどう解釈すべきかという問題を議論しましたので、少しご紹介します。

問67は、「基準及び実施基準に準拠して決定した」内部統制の評価範囲外から「重要な欠陥に相当する」不備が内部統制を有効とした内部統制報告書を提出後に発見された場合であっても、訂正内部統制報告書の提出は不要であるという回答をしております。

また、問71は評価範囲外から「重要な欠陥に相当する」不備が発見された場合において、当該不備が評価範囲内の財務報告に重要な影響を及ぼすような内部統制の不備から生じたものである場合は、訂正内部統制報告書を提出すべきである、としています。

私の意見は、そもそも問67の「重要な欠陥に相当する」不備とは、評価範囲内の財務報告の信頼性に重要な影響を与える(つまり金額的に重要な影響がでて、かつ発生可能性も肯定される)不備を意味するのではないか、だとすれば結局、評価範囲を適切に定めて行った財務報告には重要な虚偽記載がないということの合理的基礎を得ることができない内部統制の重要な欠陥があったということを意味するのであるから、問67はリップサービスで本当は問71の回答が本当の回答なのではないかというものでした。

しかし、いまよく読んでみると、問67は、評価範囲外のプロセスを評価対象に含めたとしたら「重要な欠陥」と見られる不備があった場合を「重要な欠陥に相当する」不備であると呼んでいるのではないかと思うようになりました。またあくまで評価範囲の決定は適切であることを大前提としています。これは、問71の3が、問67を引用して、評価範囲の決定は「適切に」行われていることと記述していることからも明らかです。

こうして問67を問71とあわせ読めば、問67は、評価範囲の決定が適切であって、評価範囲外のプロセスの不備がある場合に、内部統制に重要な影響を与えなければ訂正はいらないといっているにすぎないように思えます。そうであれば、問67は理屈のうえではそのとおりかもしれません。

他方、問71は評価範囲外の内部統制の不備でも、評価範囲内の内部統制に重要な影響を与えるならば、それは、評価範囲内の財務報告に重要な虚偽記載がないということの合理的な基礎を与えられない状態にほかならないので、結局、内部統制に重要な欠陥があるということだから、訂正すべきであるということを指摘していると解釈できるのではないかと思います。

しかし、そもそも、-これはWGで指摘された点なのですがー、評価範囲外の不備によって財務報告に重要な虚偽表示がないということの合理的基礎がえられないということは、内部統制の評価範囲の決定が誤っていたか、あるいはリスクの認識が誤っていたかということを意味するのではないかという疑問があります。したがって、問67の想定していると思われる「評価範囲の決定が適切であって、評価範囲外のプロセスの不備により、内部統制に重要な影響を与えていない場合」はありえない、あるいは、ありえても極めて限定されてくるのではないかと思われます。この限定された場合とは以下のようなものです。

評価範囲外になり得るのは、決算財務報告プロセス以外の業務プロセスです。引当金や固定資産の減損、繰延税金資産などの見積もりを伴う勘定にかかる業務プロセスが金額的な重要性の観点からみて評価対象からはずれることも多く、この部分から不備が発見され財務報告に金額的に大きな影響を与えたらば、有価証券報告書は訂正しなければならないことはまちがいないでしょう。

しかし、例えば繰延税金資産に係る業務プロセスを評価対象からはずしてしまった点は、本当に評価範囲に含めなくていいとの判断が正当だったのかとう観点から検討されるべきでしょう。もし当初から、当該業務プロセスに不備があれば有報全体の数値に大きく影響をするような事態が想定しうるのであれば、そもそも評価範囲に含めるべきであったという考えを否定することはなかなか難しそうです。ですから、問67の想定するような事態は、極めて限定的であると思います。

また、訂正内部報告書が提出された案件についての分析は、当該訂正が評価範囲に含まれているプロセスに関して不備が発覚したことによるものなのかどうかを細かく見ていくべきでしょう。みたところ、最初から評価の対象になっていた勘定に係るプロセスが多いようですから、そうであれば訂正は当然ということになります。

以上の検討から、問67は非常に限定されたことをストレッチして書いていてミスリーディングであると思わざるをえません。問67と問71は統合して、ちゃんとした理屈だった解説を明快にしていただく必要があるように思います。

« 阿久悠さんと坂本冬美さんに感謝 | トップページ | ボルカー・ルールの衝撃(そして日本のチャンス) »

内部統制・コンプライアンス」カテゴリの記事

金融商品取引法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1098026/35023471

この記事へのトラックバック一覧です: 訂正内部統制報告書提出の必要性は何で判断するか:

« 阿久悠さんと坂本冬美さんに感謝 | トップページ | ボルカー・ルールの衝撃(そして日本のチャンス) »