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2010年5月26日 (水)

市場をコントロールしようとする人間の学習能力の欠如について

ギリシャの危機はヨーロッパを超え、全世界に波及しました。今日は、スペインの一地方銀行の破綻が、スペインやポルトガルの金融機関の健全性についての大きな疑惑を呼び、市場の売りがあっというまにすべての市場に波及し、日本では日経平均1万円割れ、ニューヨークもあっというまに9,000ドル台に突入という展開となっています。

昔、銀行の法務部に勤めていたころ、今はとても著名なクレジットアナリストが審査部長を務めていました。彼の言葉で忘れられないのは「市場は理屈どおりに動かない、時にはまったく理屈とは逆の動きをする生き物だ」というものです。基本的には経済のファンダメンタルに不信があればそれが増幅して市場心理を支配し、動きが加速します。

皆がカウンターパーティリスクに対して不安を抱いている中で、人為的な細工をしたとたんに、市場は思いもよらぬ動きをします。それは過去15年位の間で、何度も我々はみてきたはずなのに、その教訓を生かそうとしません。カウンターパーティリスクが非常に大きくなって世界的な信用収縮を起こしたリーマン・ショックから、まだわずかしかたっていないのに、人為的な規制をドイツの監督当局BaFinが周辺諸国に相談もせず導入して、危機のトリガーを本格的にひいたのは、人間の学習能力がいかに衰えているかの典型例であると思います。

BaFinはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引について、CDSでリスクヘッジをするポジションを持たない者がショートすることを禁止しました。これによって、CDSを鞘抜き目的で取引するアービトラージトレードが止まってしまったのではないかと思われます。実際にCDSでヘッジするリスクがある者も、仲介者がトレードできないことにより、ヘッジできなくなってしまっていると推測できます。

さらにBaFinは自国の銀行株の空売りを禁止しました。まさに短絡的な自国経済の防御のみを考えた、まことに愚かな政策としかいいようがありません。ヨーロッパのみならず全世界の市場参加者が、ドイツの銀行の信用リスクに敏感になり、ヨーロッパの金融機関全般の信用リスクにさらに敏感になり、大きな信用収縮が起き始めています。

このような人工的な政策は、ギリシャ国債を大量に保有する金融機関に対する信用懸念を払しょくさせようとしたギリシャへの緊急財政援助プログラムを完全にふきとばしてしまいました。今後は、ポルトガルやスペインまでもが、信用収縮をストップするため、金融機関への強制的資本注入やEU諸国から緊急財政援助を求めざるをえなくなるかもしれません。ヨーロッパは、リーマン・ショックからいえていないのに、再び大きな重荷をしょうことになりました。

市場とつきあっていると、なぜ人間は尊大な態度をとりつづけ、物事の本質を見誤り、市場がコントロールできると思い込むのかが不思議でたまりません。現代の資本市場をコントロールすることは至難のわざです。慎重に慎重に、市場と対話しながらやらないと、マネーは暴走します。学習能力のない規制当局をもつことは、単にその国の不幸だけではなくなります。金融庁がばかなことを考えて、信用収縮に拍車をかけるような小手先の技に走らないように切に祈ります。

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