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2010年4月12日 (月)

21年度目黒区包括外部監査報告書を公開中。

私が包括外部監査人をしている東京都目黒区の平成21年度包括外部監査報告書が公開されております。

包括外部監査という仕事はあまり知られていないようなので、若干解説します。

外部監査は平成9年の地方自治法改正で新たに作られた制度です。平成7年に地方分権推進法が成立し、従来の国と自治体との間の主従関係から脱却し、対等・協力関係へ進化させるべき方向性を模索するため地方分権推進委員会が検討を始めました。

地方において政府の審議会であった地方制度調査会も平成9年に「監査制度の改革に関する答申」を発表しました。この答申は、地方分権の推進による自治体自らのチェック機能の強化が必要という考えから、現行の監査委員制度では、自治体の退職職員等当該自治体に関係のあったものが議会承認のもと監査委員に選任され、また議会によって選任される議選の監査委員との組み合わせではおのずと限界があるという考えから、当該自治体と利害関係のない公正な第三者である弁護士、公認会計士、税理士、国又は自治体の実務経験者という専門家に監査をしてもらうというシステムを作りました。

監査は自治体の長との契約によりますが、その契約には①包括外部監査契約と、②個別監査契約があります。①が義務付けられているのは、都道府県、政令指定都市、中核市、契約による監査を受けることを義務付けることを自ら条例で定める市町村となっており、東京都の特別区は条例を自ら定めている場合にのみ包括外部監査を受ける必要があります。

監査テーマの選定は包括外部監査人が選定できます。地方自治法252条の37は「包括外部監査人は、包括外部監査対象団体の財務に関する事務の執行及び包括外部監査対象団体の経営に係る事業の管理のうち、第2条第14項及び第15項の規定の趣旨を達成するため必要と認める特定の事件について監査するものとする。」と規定しています。他方、第2条第14項は「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と、第15項は「地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。」と規定しています。

つまるところ、包括外部監査人は、住民福祉の増進の観点及び地方公共団体の組織及び運営について合理化、効率化の観点から任意に監査テーマを選択し、効果的な監査を行う必要があります。

地方自治法の条文では、特に経営管理の合理性、効率性が強調されています。おそらく地方公共団体である以上は、法律を守ることは当たり前で、法令違反があれば指摘すべきことも当たり前のことであるけれども、それだけでなく、第三者である専門家をいれて税金の無駄使いにつながる不合理・非効率的業務を指摘することこそ有意義なのだということが、立法の精神なのであろうと思います。

今回は初めての包括外部監査で、監査チームも手探りで始めましたが、だんだん慣れてくるにしたがって、要領がつかめてきました。監査を進めれば進めるほど、地方自治体の管理運営上の問題点は国の問題点の縮図であるという印象を強く持ちました。監査テーマを選ぶのに、少しでも国や地方自治体の問題点を研究すれば、いくらでもでてくるということです。

包括外部監査人及び補助者には守秘義務が課されているので、監査中に知り得た秘密を在職中も退任後ももらすことはできませんので、今年の監査結果については監査報告書を読んでいただき、我々がどのような問題意識をもって監査に臨んだのかをご理解いただければと思います。

たいへんやりがいのある仕事なのですが、手間隙がかかるので、報酬からみると採算はまったく合いません。こちらも効率的監査を迫られているということなのです。時間と資料と戦いながらどの程度深堀ができるかが勝負です。とはいっても関係部署の問い合わせの回答の待ち時間や資料の読み込み、関係者のヒアリングは時間を使う作業ですし、その結果の問題点の検討や報告書の書き振り、監査人団の意見の統一など、どうしても時間がかかることばかりです。

また、問題点を指摘しなければというところに意識を持ちすぎて、解決不可能な指摘や改善指示をだすことも避けなければなりません。問題があるとき、現実的解決ができるような方向付けや提言をするコモンセンスも我々には問われています。

また、包括外部監査は行政の監視ですが、PDCAを回すためのものでもあります。行政側にこのことが意識されず、指摘されたことだけをパッチワークのごとく直していくだけでは真の改善にはつながりません。外部監査は時間が限られているもの、指摘された部において原因をよく自己分析しそれに対応する対策をうっていくことこそが期待されるのではないかと考えております。まさに行政におけるPDCAサイクルが機能することのための包括外部監査なのです。皆さんの県、市町村も、包括外部監査を行っているところは必ず報告書を公表しているので一読されてみてはいかがでしょうか。

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