« 上村教授が語る公開会社法(1) | トップページ | 上村教授が語る公開会社法(2) »

2009年11月 4日 (水)

NHKスペシャル「永田町・権力の興亡」

NHKスペシャルで三夜連続で放映された「永田町・権力の興亡」、実に見ごたえありましたね。55年体制の崩壊と細川政権の成立からはじまったこの証言ドキュメンタリーは、我が国の政治の転換について、時の権力者、あるいはその近くにいた者、それと対峙した者の証言で、その実相を描きだすことに成功していました。

中でも第三夜めの、小泉純一郎元首相の登場と、その陰で復活を誓って着々と準備していた今の民主党幹事長、小沢一郎氏のひそかなる戦いは圧巻でした。

自分たちがやろうとしていたことを小泉政権がやろうとしていることで、自分たちの立ち位置がどこにあるのかわからなくなり、大変苦労したということが、菅直人氏や前原誠司氏らから語られると、小泉構造改革の理念そのものが今の民主党の中核をなしている人間と共有化されていたことに改めて驚きます。

対立軸の喪失、それが民主党の郵政選挙敗北の最大の原因でした。それを見破った小沢さん、本当に恐るべき人ですね。

小沢さんは他方において、選挙の川上戦術を語っています。選挙は団体であろうがなんであろうが、終局的には個人の決断で投票を決めていくこと、その個人のレベルできめ細かくあたるという田中角栄の教えをじっくりと実行していったわけです。その戦術の考え方について「政府に甘えないで自分で自分のことを決める自己責任が民主主義の基本である」というところに求めるという小沢さんの発言を聞いていると、この人の基本的政治理念は、まさに大きなものに寄りかかる古い日本人の体質を転換、個人や自己を確立、小さな政府というところにあることが理解できたような気がしました。選挙民にいままでも厳しいことをいってきたと言ってましたが、それでは今回の選挙で本当はどうだったのか。そのような戦術と組み合わせるかたちで、自民党が進めた政策によって生じたひずみを実感しそれをきめ細かく拾い上げ、政策で自民党との対立軸を明確にしていったというのは、まさに政治の天才といえるのではないでしょうか。

他方において対する自民党は公明党との連立の中で、田中流選挙の基本をどんどん忘れ、小泉改革で既得権益にしがみつこうとする組織を切り捨てたのに組織票にたよる(最後は公明党の組織票にたよる)選挙に傾斜しきって、小泉劇場が終了したあと、敗れるわけです。民主党はというと、小沢流川上からせめる選挙。そして小泉劇場の陰でひそかに地方の格差・切り捨てが進行していることに対する国民の不満を拾い上げ、対立軸に仕上げていったーこうしてみると、55年体制のもとで、かつての自民党がとった選挙方法を自民党が忘れ、社会党や民社党がやっていた組織だのみの選挙を取り入れて、自民党をぶっこわす政策のなかでその基盤を失いながら転換せず、やがて政権から滑り落ち、他方、社会党右派や民社党を取り込んだ民主党が組織だのみの選挙を川上戦術に転換し、さらに連合と手をくんで組織票もとりこんでいった、ということにはたと気づくわけです。小沢氏の戦略に、自民党が敗北するのは必然だったのだという思いがします。

こうしてできてきた民主党の「国民の生活が第一」というスローガンに象徴される政策は、自民党との対立を作り出すためのものであったといえます。高速道路無料化や子供手当だとか、農家に対する直接的補助といったバラマキ政策は、このような小沢さんの対立軸をつくりだすという目的のために、意図的に作られたものであったといえるでしょう。それはまさに選挙に勝つための政策であったということができましょう。小沢さんの本音はいまだに国民は甘ったれてはいけない、自立せよというところにあるということが、インタビューを通じてはっきりとわかりました。でも今回のバラマキ政策をもし実行したら、どこで「もう終わり、自立せよ」というのでしょうか。

こういう政策について、はたしてそれが単純に戦術としてとられたものなのか、それとも長期的な国家ビジョンや政治ビジョンにもとずいてとられたものなのかが今真剣に問われているという山口二郎北海道大学教授の指摘には、多くの方がうなづいたのではないでしょうか。また、作家の高村薫さんが「生活が苦しくなっているときに政策が選挙民の生活に直結している時には、選挙民が短期的な視点で選択することが多いが、はたしてそれが長期的にみていいことなのかを示すことが政治家の役割なのではないか」という趣旨の指摘をされたことに、大きく共感した次第です。

大変勉強になる番組を放映してくれたNHKに感謝です。

« 上村教授が語る公開会社法(1) | トップページ | 上村教授が語る公開会社法(2) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1098026/32061402

この記事へのトラックバック一覧です: NHKスペシャル「永田町・権力の興亡」:

« 上村教授が語る公開会社法(1) | トップページ | 上村教授が語る公開会社法(2) »