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2009年11月 3日 (火)

上村教授が語る公開会社法(1)

中央経済社が出版している雑誌「企業会計」12月号から、上村達男早稲田大学教授と中村直人弁護士の「公開会社法とは何か」という対談の掲載が、始まっております。

上村先生というと、日本取締役協会で上村先生がまとめられた「公開会社法要綱案」が民主党の公開会社法のベースになっているとして、しばしば引き合いに出されますが、この対談では上村先生が目指したところを対談を通じで語るという構成になっており、大変興味深いものとなっております。そこで、備忘として要約してみたいと思います。なお民主党公開会社法についての私の批判は、この記事をご覧下さい。

なぜ、公開会社法というアイデアが出てきたのか、上村先生が語るところによると

-実際の企業法制は、有価証券報告書という金商法の開示法制、計算は財務諸表等規則、監査も監査基準という旧証券取引法、金融商品取引法中心の世界で回ってきている。

-しかし会社法との概念の乖離がすごくあったので、商法特例法といった特別の法律をつくり会計監査人という制度を作って証取法との橋渡しをしたが、それでもギャップがある。

-金商法と会社法との概念の差を飛び越え、会社法レベルで理論的に整理してしまってはどうか。

-他方、新会社法は「ベンチャー用法制」になっており、従来の原則をひっくり返し、例えば、株主総会は万能、有利発行は原則株主総会の特別決議とする、自己株式取得も相対取引が原則で市場取引は例外、というように有限会社法になってしまった。

ということで始まったと解説されています。

上村先生は中村先生の、「民主党案と上村公開会社法は全く別物と考えて宜しいですね」という質問に、こう答えて別物であることを認められています。

「ほかの国で当たり前な公開会社の話にもう一回戻ろうという話なのですね。この、有限会社的な株式会社法から、どの国でも普通に扱っている本当の意味での公開会社法に戻そうという一般的な流れと、この民主党の公開会社法要綱案が何か一緒に議論されていますね。狭義の公開会社法というのは、あくまでも金融商品取引法のルールを会社法のルールとして認知することで経験の不足を乗り越えようとするところが中核で、それに伴って、やはり開示・会計・監査が連結ならば、ガバナンスも投資家とかそういうものを意識した会社法にしようではないかということです。ガバナンスや企業結合法制も市場を特に意識するという面が強調されていますが、実はこれも普通の株式会社法の話なのですね。日本の会社法が市場から離れすぎたのですね。」

現行会社法は有限会社法で市場から乖離している-この認識から公開会社法案が出たということは、よく記憶されるべきです。それは不祥事等の話が中心ではなく、資本市場と有機的に一体的に構成される会社法が日本には存在していないという、本質的な批判であって、会社法立法担当者にとってはまことに耳の痛い指摘ですね。

中村先生は、こういう答えを踏まえて、会社法は会社法、金商法は金商法で穴の空いたところをふさいでいけばいい、何も新しい公開会社法というものをつくらなくていいという考えがあることを指摘し(おおすぎ先生も論文かかれていますね)、それでも公開会社法というものに立て直そうというのはどこがポイントなのかと、質問を投げかけます(さすがですね)。

この質問に対して、上村先生はこう答えています。

-会社法と金商法の調整が必要だという認識には、両者に調整できる性格があるという認識があるはず、また調整しなけばならないというときの理念がなければ調整はできないはず、「その辺を意識的にほじくり返して、基礎理論そのものを見直していかなければ、調整の結果として何が生まれてくるかがわかりません。」

-また両者の空白の部分は、会社法が有限会社法になってしまい市場を意識しなかったことによって生まれている。

要するに、市場を大前提として、有限会社法というベンチャー法制の基礎理論がベースになっているものを、市場法制の基礎理論で会社法レベルで組みなおす-これが上村公開会社法案の本質と、私は理解しました。 

中村先生は以上の回答を前提として、従来の会社法の考え方と違ってくる部分があることを指摘し、その一つとして「株主が会社の所有者でその利益を守る」という考え方から「株主ではなく投資家を守る。しかも投資家はいくつかのステークホルダーの一つである。」という上村説の考え方について質問します。

上村先生はこう答えます。

-今まで会社法は、株主になった後のことを中心に組み立てている。株主は会社の所有者で、経営者は株主の代理人、会社を作るのは一種の契約という民法を前提とした個人商人が番頭さんを使って商売をするという伝統的世界。

-しかし、証券市場と向き合う時代では、開示も会計も監査も投資家のためにやっている。会社所有者としての株主はいない。つまり株主は会社と投資契約、すなわち「私はこれだけ払うからこれこれの事業をして、利益があったら配当するという契約」の一方当事者である。株主総会は所有者の集まりではない。これは証券市場が未成熟だった時代に、商法学者であった故松田二郎先生や故田中耕太郎先生が実は指摘していたことである。

-株主総会は投資者集会であり、(しかも市場流通している株式を前提にすれば)投資家は不特定多数である。仮に欧米のように個人株主を投資家として想定すれば、それは市民社会に開かれた公開会社ということになる。だから会社法も株主になってからだけではなくて、(投資をしようとしている)投資家の段階から意識した理論を構築する必要がある。

面白いですね。(つづく)

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