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2009年10月30日 (金)

司法試験合格者のために

一昨日、一橋大学法科大学院の司法試験合格祝賀会に出席しました。私は昨年から、同大学院ビジネスローコースの実践ゼミ一こまを前期に担当している非常勤講師でして、企業法にかかわる最先端の話題を現役の社内弁護士またはかつて社内弁護士であった方をお招きして取り上げています。私もかつて社内弁護士でしたので、2~3回講義をするほか、各講師の講義中、しっかりと介入して学生達に質問を発したりします。

取り上げる法領域もちょっと広いので、学生達にはちょっと難しいかもしれませんし、予習も大変かもしれませんが、私とNHK社内弁護士で日本組織内弁護士協会理事長の梅田康宏弁護士が担当するこのゼミは、幸いにして学生のエバリュエーションで好評でして全員が講義に満足しているという結果がでているのは、うれしい限りです。

ゼミ生が合格できるのかは、実務家教員として大変気になるものでして、幸いにしてほとんどのゼミ生が合格できたのは、教師としてうれしい限り。その半面、失敗した学生はその実力からすれば合格してしかるべきであったと思うので、来年がんばってほしいと切に願うものです。

さて、最近の学生達は司法修習期間が1年になったこと、就職が厳しいこと、企業法務では専門家が進んでいることなどが反映しているせいか、我々が合格した30年前とはちがって、司法修習中、何を勉強すべきなのか教えてくださいという質問がいくつもでました。そこで、本日は司法試験合格者のために、私の思うところを若干のべます。

まず、実務家としての実力の基礎はどこからくるかというと、その要素はさまざまですが、理論的なものを身に着けているかどうかという点にしぼれば、それは民法の基礎理論がどれくらい身についているか、ということであると思っております。この点は、我々は授業の中でくりかえし強調しているところです。民法理論はあらゆるところで顔を出します。たとえば、代理と代表という概念の違いがわからねば、無権代理と無権代表の違いはわからず、表見代理と表見代表の要件の違い、効果の違いはわかりません。請負契約の瑕疵担保責任の性質と債務不履行、中でも不完全履行がどう違うのかがわからないと、実際の適用場面で処理をあやまります。

こうした基礎理論は、我々の時代は勉強時間が長かったこともあり散々やったのですが、最近の法科大学院生は必ずしもしっかりと身につけておりません。しかしこういう基礎理論がわかっているかどうかは、実務処理に大きな影響をあたえます。みんな、民法を条文をしっかり読んで、要件、効果、訴訟における主張立証責任と抗弁についてしっかり身につけましょう。

次に、司法修習に入ったときに会社法はほとんど勉強する時間がさけません。しかし、企業法務に興味がある者が、会社法がよくわからないといってられない場面はますます増えております。なにも大きなM&Aを扱う弁護士ではなくても、非公開会社の顧問として活躍する場合には、それなりの知識が要ります。ましてや上場企業にアドバイスするうえでは、会社法と金融商品取引法の知識は絶対必要となります。膨大な金商法を集中して勉強する機会は1年の修習では皆無でしょうし、焦ってやる必要もないと思います。しかし会社法は、しっかりと骨を抑えておけば、あとできっと役にたちます。何といっても、若いころに身に付けた基礎はなかなか忘れません。

その際に読むべき本はというと、何といってもおおすぎ先生他著の『リーガルクエスト 会社法』だと思います(注:おおすぎ先生からなにももらってません。もちろんこれはなにかくれという督促ではありません)。

なぜかというと、会社法に苦手意識がある私が読んで、実務をイメージしながら読める、わかりやすい、という理由からです(単純な理由。しかし教師が読んでもわからない本が学生にわかるものでもない)。

さらに、これから法律家の生活に入るすべての方々は、同業者とのつきあいも大切ですが、他業種の方々との交流を大切にしてもらいたいと思います。私はこれに気付くのにすごく時間がかかりましたが、30年の弁護士生活を省みて、他業種との方のかかわりあいにおいて様ざまなことが学べたと思います。私の金融商品取引法まわりの実務知識は、こういった方々との交流が支えています。なによりも私の経済の知識、マネジメントの知識、さらにリーダーシップや組織論の知識は、法律家以外の方から学びかつ啓発されて身に付いた(あるいは錯覚にすぎないかもしれないが)と思います。そして、何よりも、こういった方々との交流が人生を豊かにします。

また、弁護士としての職業倫理について覚えておいてほしいことは、我々の職業としての存在理由はすべてクライアントの正当な利益を守ることに尽きる、ということであります。そういう活動はもちろん相対立する側がいて争う場面もあるわけですが、そのフリクションを通じて何が基準になるべきかということが明らかになってくるのが、法の支配のプロセスなのです。これは人類の貴重な知恵でしょう。その原点に帰ることを、どのような立場にたっても忘れてほしくないものと思います。

みんな長い法曹人生がはじまります。切磋琢磨しましょう。そして他の人をempowerできるような生き方をしたいものです。

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