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2009年9月 4日 (金)

カブドットコム証券特別調査委員会報告V前社外取締役の反論(その2)

当ブログでは、磯崎氏の「親銀行の事件発覚後の管理・監督が強まる過程で経営の透明性が失われ、少数株主の利害を考慮すべき社外取締役の職責を果たすことが難しい状況になった」という点について簡単に触れるつもりでした。

本日はそれについて補足的説明を書いて、本論の特別調査委員会報告書と磯崎氏の反論について検討し、さらにそれに続いて調査委員会の調査方法と結論について意見を書くつもりでしたが、思いがけず、磯崎氏が私のブログに対するご意見をアップされていることに気づきました。

磯崎氏がご指摘のとおり、磯崎氏自身も守秘義務があり、その範囲でご自身の意見を書かれることは大変難しい側面があり、私としてもそれを認識しております。

そのような困難な状況で磯崎氏が再度ご意見を発表されたことについては大きな敬意を表するとともに、私としても守秘義務からくる意見表明の限界を考慮し、論評するにあたっても、前回のエントリーでも書いたとおり、慎重な配慮と公正さに努めるものであります。

また、磯崎氏が「一般的な調査対象からのフィードバック・プロセスについて」、「不祥事調査の場合の会社側意見のフィードバック・プロセスについて」、「調査委員会調査と会計監査等との対比」、「現在の調査委員会調査一般について」、「今回の特別調査委員会調査のポジショニングの特殊性」において指摘された論点は、まことに傾聴すべき問題提起と意見を含んでおり、これらの点については、後の論評の中で検討していきたいと思います。

ただ、一点指摘しておきたいのは、磯崎氏の意図が「特別調査委員会の調査報告書に「反論」することが目的ではなく、辞任の経緯をご説明し、投資家のみなさま等のご理解を深めるための情報を提供することが目的になる」と言う点にあるとはいっても、特別調査委員会の認定事実に対して、「この調査報告書には、上述のような誤解を招きかねない面が多数あると言わざるを得ません。」という言い方になる(あるいはならざるを得ない)以上は、その実質が反論であることは否定しようがないということです。

私は、調査対象になった社外取締役が特別調査委員会報告に公けの場で反論することは、別にかまわないと思っております。一部のブログには今回の事態について弁明すべきでないというものもあるようですが、特別調査委員会報告書は調査対象になった者の行為についての価値判断を表明するものであり、特に今回は磯崎氏が社外監査役としてS社長に対する牽制機能を果たしていなかったという大変厳しいものとなっているわけで、磯崎氏ら個人の社会的評価につながるものでありますから、むしろ反論すること自体を責めるのは酷にすぎると思っております。

ただ、その反論は、その内容において事実関係が良く認識できるものでなければ、さらに混乱や会社に対する誤った評価を引き出すおそれがあることに非常な留意がいります(もちろん反論のやり方や中身は、反論者個人の評価にまたつながってしまうので、相当リスクのあることで、その点について磯崎氏がリスクをしょいながら慎重に且つ誠実に対応されていることに対して、私は敬意を表するものです)。

すでに、いろいろなブログで、カブドットコム証券のガバナンスは少数株主に留意しないものとなったとか、特別調査委員会の調査報告が親銀行の意向を受けたものとなっているという論調がでております。このような影響が出る以上、投資家の判断に供することが目的であるとしても、反論も事実に即してそれを十分説明したものであるべきであることは、反論の影響度も考えれば当然でしょう。事実の明確な、かつ十分な説明をしない抽象的な表現は、逆にミスリードしてしまう危険があります。

この点について、磯崎氏は慎重に筆をはこびながらも、「親銀行の事件発覚後の管理・監督が強まる過程で経営の透明性が失われ、少数株主の利害を考慮すべき社外取締役の職責をはたすことことが難しい状況になった」という説明をされており、私はこの説明が不明確で不十分ではないかと考えております。

いそざきブログを精読すると、①独立社外取締役であった磯崎氏と佐藤弁護士が社外の危機対応専門の弁護士チームの支援をうけながら調査を進めていた、②それにもかかわらず親銀行の意向によって別の特別調査委員会設置が求められた、③特別調査委員会報告書の磯崎氏や佐藤弁護士の評価につながる事実認定には疑問があるし評価にも異論がある、④特別委員会調査報告書は他の社外取締役には一切触れていない、と説明されております。

ここで投資家が知りたいのは、社外取締役を中心とする社内調査委員会が調査を行っているにもかかわらず、なぜ特別調査委員会が必要とされたか、なのではないでしょうか。

私の経験では、臨店検査中やその後の検査講評でSESCの事件の実態の認識や原因及び事件に関わった役職員の評価が会社側に伝えられますが、その場合に会社側の認識とSESCの認識が相当ずれている場合には、会社側の認識不足として当局の処分が大変重くなる傾向があります。特に、本件のように社長自らが関与している場合、あるいは情報管理態勢が問題とされているケースにおいては、経営陣の当該事件に対する認識は、検査当局との認識と食い違う可能性があり、それが調整ができないまま最後まで行くと、行政処分が厳格化するリスクをとらなければならなくなります。

とりわけ取締役の牽制機能についての認識に隔たりがあった場合には、検査当局との臨店検査・オフサイト検査の対話の中でその差を埋める必要がありますが、その時間は限られており、いちど固まった検査官の見方を覆すことは大変難しいものがあります。

また行政処分は当該対象会社だけでなく、関係するグループ会社にも多大の影響を与えます。機関投資家の中には、子会社・兄弟会社が金融庁から処分を受けた場合でも業務改善命令が解除されるまで取引を中止するというところが多数あり、行政処分をいかに軽くするか、業務改善命令を早く解除してもらうかがビジネス遂行上の重要課題になります。

そのためには、会社側が客観的に事態を認識しているという証憑を示さなければなりません。普通は社内調査委員会の報告となるのですが、本件ではそれではなく、わざわざ特別調査委員会と判断された事情がどこにあったのかが不明です。

もし社外取締役を中心とした社内調査委員会の認識が、SESCの認識と相当ずれていたという事情があり、あるいは社内調査委員会の構成や調査方法について特に意見があった場合などは、会社が特に独立調査委員会の設置をする必要があると判断することは、むしろ納得のいくことです。

つまり、当局と会社とのコーポレートガバナンスや情報管理態勢の状況に関する評価のちがいや社内調査委員会では足りないとされる事情があり、評価のずれを解決するため、独立性の強い社外の特別調査委員会をあえて発足させて社内調査をさせ、その調査方法が公正・客観的なもので、その結果が当局側の認識に近いものがでたということがここでおきたことであるならば、会社としては特別調査委員会の意見に従って改善を行うことが、会社のリスクを低めることにつながります。このような行動を取締役会が決定することは、合理的な行動でしょう。磯崎氏のご説明とはまったく違う話となるわけで、はたしてどうなのかが投資家としてはもっとも理解したいところなのではないでしょうか。

以上のとおり、特別調査委員会が設置された事情があきらかになるかどうかは、投資家の会社のガバナンスの状況についての理解に大きな影響を与えるでしょう。

本日の時間も尽きてしまいましたので、明日以後またアップさせていただきます。(17時5分 慎重を期してアップしたつもりですが、磯崎氏の辞任の意図について不正確な表示をしておりましたので修正しました。)

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