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2009年9月25日 (金)

改正貸金業法の負の効果の測定をすべきではないか

9月19日土曜日の日経新聞経済欄に、「アイフル、債務猶予要請を発表」という記事が載っておりました。皆さん、どれくらいの興味を持って読まれたでしょうか。

記事自体はアイフルが過払金返還請求が高どまったまま資金繰りに窮したので、銀行団に債務の返済猶予を求める方針を発表したというものです。私が注目したのは、その記事に付随して、貸金業者がピーク時の約9割減になったこと、貸金業者の貸付残高が90年3月の約80兆円超から本年7月には半分の約40兆円になったという事実を報道した囲み記事です。

囲み記事によるとノンバンクにかわり銀行が個人向け貸付を強化して、三菱東京UFJ銀行は貸付残高が2007年開始当初より約3倍に、三井住友銀行も、カードローンの残高が05年の2750億円から4900億円に増えたということです。しかし、ノンバンクから消えた40兆円の資金需要を銀行の個人向けローンがすべて吸収しているわけはないでしょう。囲み記事がいうように、銀行の審査は消費者金融より厳しいからです。

囲み記事では、融資基準を満たせない利用希望者がヤミ金融業者などに走り、問題が深刻化する恐れも否定できないと警告を発していますが、この警告はもっと真剣に受け止められる必要があると思います。

貸金業法改正にあたって、グレーゾーン金利廃止、総量規制等に消費者金融業者や一部学識経験者が反対したのはまさにこの点であったはずです。それにもかかわらず、金融庁は非常に大胆な改革を断行しました。立法担当官であった大森泰人さんの「金融システムを考える」という著作にその考え方の経過が詳細に記載されています。大森さんは胆のすわった有能なすごい官僚だとこの著作を読んだときに思いましたし、今でもその気持ちはかわっていないのですが、私はグレーゾーン金利の撤廃等を内容とする貸金規制業法の改正が政策として総体として正しいものなのか、制定当時から疑問に思っており、いまでも実は正確な政策評価が必要なのではないかと思っております。その理由は、まさにヤミ金融へ走る消費者が増加して、実態がみえにくくなり、かつそうして儲けられた金が株式市場に流入しているという懸念であります。

一時、テレビなどでは貸金業者への規制強化の陰で、ヤミ金融が勃興していることを報道しておりました。一番話題になったのは、山口組系ヤミ金融の五稜会が外資系銀行を通じてマネーロンダリングを行ったことが発覚した後だと思いますが、いつの間にかフォローアップゼロの状態になり、世の中ではヤミ金融問題に光があまり当たらなくなっております。

40兆円という資金需要は本当に消えたのでしょうか。私にはとても信じられません。個人破産事件の件数は、特に金融危機発生以来大幅増加しております。そういう人たちは、昔のように多重債務をかさねることなく早期に倒産を選んでいるのかというと、多分に疑問です。個人破産もできないような人々はどこへ行ったのでしょうか。

他方、ヤミ金融等で資金を作ったと思われる闇勢力が、ここ数年株式市場でさまざまな問題ある事象の背後にいることはまちがいないように思います。困ったことに、消費者金融から借りられず、また銀行からも借りられない人たちがヤミ金融からどれくらい借りているのかを統計的に把握するのは不可能でしょう。しかし、地方自治体では借金問題に悩む市民の問題が相変らす多いようで、その割合は年々増加傾向にあるようです。

新政権のもとでは、消費者庁がヤミ金融問題に目を光らせて、貸金業法に盛られた政策が負の作用を作り出していないか、しっかり検証してもらいたい、そう思っております。

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コメント

私自身法律の(裏の、もしくは背景にある)考え方に疎く、勉強になるなぁと、いつも楽しく拝見していますが、今日のブログ本文にも、大きく頷きながら読みました。
私自身金融機関に在籍していて、金融庁の小役人には、頭にきているのですが、仰るとおり規制の負の側面の検証というかフォローアップがまったくないのには、声を大にして抗議したいと思いました。
では、なぜ、そのような規制が通ってしまうのか?私の持論ですが金融は、実務がすべてに優先する社会なのに、金融実務を知らない公務員がルールを作っているからではないかと考えています。
その点英国のFSAでは、民間の実務家が多数入って規制なりルールを作っていっているという話を聞くにつれ、日本はやっぱり遅れてるんだなぁと、ほとほとやる気をなくしている状態です。
親分(大臣)も、ああいう人ですから、しばらくはむちゃくちゃで、東証の時価総額が上海に抜かれて、GDPが世界2位から転落しても、なんとも思わないような人たちなんだろうなぁと、なかば諦めにも似た境地にいます。やる気を出なくする金融庁(金融行政)なんですよね、一言で言うと、、、、

ちょっと機嫌が悪かったせいで、長文すいませんでした。書いたら少しすっきりしました。
これからも応援しています。

Tatsuさん

どうもコメントありがとうございます。

ご指摘の点は金融庁も最近は感じているようですね。ただ、長い間の金融行政の弊害からか、業界からも自主規制団体からも、金融庁にはっきりものを言えないようです。

昔、金融機関につとめていたころ、私のボスが非常に建設的に金融検査と規制のあり方について某長官に進言したところ、長官は「日本の金融機関は不満があるとマスコミにリークして、外から攻撃させたりする。不満があればはっきりいってもらえばいい。対話するのは大いに歓迎。」と大変喜ばれまして、進言について金融庁の課長クラスとの意見交換の場まで設置されたのですが、その後は二度と開かれることはありませんでした。銀行監督行政に携わっている方は、市場との対話について消極的で自分の正義感・価値観から判断しがちという印象です。

すこしづつ変ってきていますが、もう少し早く変らないと市場に取り残されるという感じが私もします。今後とも宜しくおねがいします。

こんにちは、とても勉強になってます。

ところで本文中の80兆が40兆にという点ですが、私見ですが80兆には自転車操業で限度額一杯まで借りて返済のみしていた分が多く含まれていた値だと思います。
最近の過払い請求の結果で数百万の債務が数百万の過払いに変わり、債務から解放された分が40兆(さすがに全部だとは言いませんが)で高金利が故の幻だったのではないでしょうか?
中には審査が厳しくなることで闇金融に手を出してしまう人もいるかもしれませんが極一部だと思います。
よって、高金利から解放されホッとして、二度と消費者金融から借金をするまいと考えている人の市場規模が40兆と考えますがいかがですか?

検証の必要性について同感です。

先生もご存じだと思いますが、規制改革会議の「規制改革推進のための第3次答申-規制の集中改革プログラム-」(H20.12.22)におきましても、「<問題意識> H18年の貸金業法等の改正によって、中小貸金業者の相次ぐ廃業を招いているのではないかといった見解や、高リスク層の資金需要が行き場を失いヤミ金融に流入している部分があるのではないかといった見解がある。」→「平成18年の貸金業法等の改正後の規定の実施状況、貸金業者の実態、市場の実態等について、実証的な観点から調査・分析する。」「【遅くとも平成21年度実施】」とあります。

貸金業法改正の趣旨目的自体に私は異論ありませんが、その手段として法規制の内容が適当であったか、官側もPDCAサイクルのCをしっかりと行う時期ではないかと思います。

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