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2009年9月 8日 (火)

社外調査委員会が必要とされる場合とは

前回までのエントリーで議論の材料がいろいろでてきた社外調査委員会について、若干の考察をしておきたいと思います。今回はカブドットコム証券さんの事件をまったくはなれて、一般的に議論させていただきます。

今回は「いかなる場合に社外調査委員会を設置すべきか」という点と「調査委員会メンバー選任にあたっての若干の考慮すべき点」について、検討してみたいと思います。

まず、企業不祥事が発生した場合に、企業は社内に調査委員会を置くことを優先して考えると思います。企業がPDCAを働かせる一環としてむしろ事実関係の把握を行う上で当然でもあり、また、社内事情に詳しい者がメンバーのほうが調査が早く進むというメリットもあります。外部から専門家をいれるなり、補助者やアドバイザーとなってもらえば、見落としも少なくなります。したがって、社内調査委員会設置をまず考えるという思考は、必ずしもまずいことではないように思います。

また、一言に企業不祥事とはいっても、それにはいろいろなものがあり、従業員個人の犯罪で会社の統制環境や体制を問題にする必要がないものから、会社の企業風土までさかのぼる必要のあるものまでさまざまです。その不祥事に応じた調査のやり方というものがあると思われます。

社外調査委員会が必要とされるのは、企業風土までさかのぼって考えなければならないようなケースでしょう。なぜそれが必要かといえば、不祥事発生により強い社会的非難を受けている企業は、徹底した事実調査と原因究明を行い、不祥事発生の責任の所在を明確にした上で、実効性ある具体的な再発防止策を実施しなければ危機を脱出できないからです。なぜ危機を脱出できないかといえば、従来、社内調査では事実調査をおざなりにしたり、原因の追究や責任の所在の明確化を行わなかったり、あるいは具体的な対策を採らない傾向があることを、すでに世間が認識しており、一度、当該企業もそうではないのかという批判がでると、それから容易に逃れられないし、また、現にそのようななおざりな調査がされるリスクがあるからでしょう。

したがって、発生した企業不祥事に対して強い社会的非難が起こっているような状況になっている場合やそのような状況になる可能性が高い場合ならば、最初から社外調査委員会に独立した立場で徹底的な原因究明をおこなってもらったほうがいいと考えられます。

また、当該企業にとって信用を失墜させる可能性が非常に高いような法令違反や不祥事である場合は、社会的非難が起こっているいないに関わらず、社外調査委員会を設置する必要性が高いといえると思います。

そういう状態ではないと経営陣が判断して、いちど社内調査委員会を立ち上げて調査してみたところ、その後の調査の進展あるいは状況の変化で、上記のような可能性がでてきたというような場合も、社外調査委員会に調査を行わせたほうがいいと思われます。

以上をまとめると、社外調査委員会を設置すべき場合としては、以下のようなものが考えれます。

①経営陣が企業の信用を失墜させる可能性のある重大な法令違反または不適切行為等の不祥事に直接関与していることが明らかであるか、その可能性がある場合(経営陣が不祥事の実行行為に関与するだけでなく、不祥事発生の原因の可能性となっている統制上の問題に関与している場合をも含む)

②当初は不祥事について社内調査を始めたが、①のような可能性が高い場合

②は、調査をしていくうちに①が疑われるという場合を想定していますが、どの時点で誰が独立した外部調査委員会設置を判断すべきかという問題があろうと思います。

ひとつの考え方として、監査役設置会社の場合には、社内調査委員会に監査役を必ずメンバーとして入れておき、事実調査が進んで、代表取締役や取締役の関与が疑われるとか、これらの者を含む統制環境について深堀が必要であると考えられるときには、監査役の発案で独立性の高い社外調査委員会を設置するという仕組みをつくるというやり方があります。

ただ、監査役までその調査や評価の対象たらざるをえない場合もあります。例えば、ダスキン事件などはそのような事例といえるでしょう。こういう場合は、社内調査委員会の調査完了をまたず、社外調査委員会をすぐに設置すべきことになります。

ただ、それ上記のような仕組みができるかどうかは相当程度、社長の決断にかかる部分が多いと思います。

次に、社内・社外調査委員会のメンバー選任の留意点については、若干悩んでいる論点があります。どういうことかというと......

経営陣が組織した社内・社外調査委員会のメンバーである弁護士や公認会計士又はそこから委託をうけ補助している弁護士や会計士と会社の間に、業務の請負や顧問関係、継続的な事件・プロジェクトなどを受任するといった関係などが存在することによって、独立性や調査の中立性、信用性について疑問が生じる可能性があるという指摘が、特にマスコミ関係者から多く見られます。

この点については、一律にノーといえるか疑問に思っております。普段から相談にのって会社の内情や問題を良く分かっている者のほうが調査が効率的にすすむ可能性がありますし、弁護士や会計士は企業、さらにその裏の株主が実質的依頼者であると理解し独立性もかなり期待できるからです。

いろいろな社内調査報告書をみていると確かにそういえるかどうか、自信がなくなるものが少数ではあるが存在することも否定できません。しかし、一般的にいって上記のような編成だと調査側が手心を加えるおそれがあるというのは、感覚として考えにくく、むしろ経営陣の調査への協力にあるのではないかと以前のエントリーでも申し上げております。

社外取締役又は社外監査役である弁護士が調査委員に就任している場合は、その者が所属する法律事務所の別の弁護士に入ってもらうことも、選択肢として排除すべきではないでしょう。

ただし、当該社外取締役又は社外監査役が、調査対象に含まれ、または当該事件に直接関係ある管理体制構築や運用に関係している場合、もしくは当該事件の背景となる統制の体制に欠陥があることが疑われ、これらの者の監督・監視責任が問題となる場合には、同じ事務所に所属する弁護士が当該社外取締役又は社外監査役に厳しい指摘をすることは、現実問題として難しいと思います。これは調査の信頼性につながる問題ですので、同じ事務所の弁護士を入れるべきではないと思います。

また、所属事務所の他の弁護士が当該不祥事件について会社を代理して当局に対する連絡や対策に従事している場合には、その弁護士がメンバー又は補実務担当者として入っている調査委員会は公正性・独立性を疑われるおそれがあるといっていいと思います。社内調査委員会であろうと社外調査委員会であろうと、会社側を対当局の関係で代理している弁護士が調査委員会のメンバーになること又は調査の一環を担うことは、さけるべきであると思います。

なお、ここで論じているのは危機管理の方法として、国民から見て公正さを損なわない調査方法であり、弁護士職務基本規定の弁護士倫理の問題とは異なります。職務基本規定の上での整理も必要だと思われますが、時間も尽きたので今日はこの辺で筆をおきます。

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