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2009年8月17日 (月)

金融審議会スタディグループ報告書は重要だ-その2

ちょっと前に、「金融審議会スタディグループ報告書は重要だ-その1」という題で、その中身の前半を備忘的に書きましたが、今回は後半の「ガバナンス機構をめぐる問題」と「上場会社等のコーポレート・ガバナンスに係る規律付けの手法」について、備忘録的に書きたいと思います。

● ガバナンス機構をめぐる問題

ガバナンス機構のあり方については、取締役会のあり方について大きく意見が分かれました。投資者側からは取締役会の3分の1ないし2分の1以上を(独立)社外取締役とすべきであるという意見がだされ、その役割としては①平時における経営者の説明責任の確保、②有事における社外の視点を入れた判断の担保、③経営者の暴走等の防止・安全弁といった役割が期待されているとされました。

①の説明責任の確保とは経営判断にいたるすべてのリスクの検討過程、すなわち当該行為の合法性・適法性の検討から、経営判断として合理的なものなのかどうかというビジネスジャッジメントを含んでいます。これを期待するならば、社外取締役にはそういった過程すべてについて知見を兼ね備えた者が選ばれることを期待しなければならず、経営の専門家としてのみの社外取締役を入れてもリスクの評価については素人ならば大した役にはたたないということになります。ひとりの社外取締役に期待することが難しいならば、それぞれの素養をもった人間を複数いれないと期待された機能には届かないということになりますね。

②は買収防衛という場面を想定していると思いますが、買収防衛策の議論は高度に法的なものを含み、「法律が弱いんで、その点は経営企画が弁護士としっかり調べて取締役会にあげてこい」、とだけいっている社外取締役は不適任ですね。

③は経営者の暴走等の防止のみを社外取締役に期待するほうがおかしいですね。そもそも取締役会がそれを防止するよう機能していなければならないわけですから、そんな役割を大きく期待されるような取締役会設置会社はすでに大きな問題を抱えているので、社外取締役は仮に選任されたとしたら現状の上命・下達のカルチャーをかえるためにすぐに付議事項の過去にさかのぼった検討と取締役会規則等による付議事項の明確化、リスク情報の報告体制等、相当がんばった改革をしなければなりません。しかし、1名の、情報もあまり集まらない社外取締役にそんなことを期待しても無理ですから、社外取締役が動ける体制を作らなければなりません。ここでも情報が集まってくる監査役と共同して改革に取り組めるような環境がないと、しょせん絵に描いた餅です。

どうも社外取締役が必要だといっている方々にも、社外取締役が何をするかについてのリアリティーが不足している感じがします。

社外取締役設置義務化論に対して経団連は反対し(経団連の「より良いコーポレートガバナンスをめざして【主要論点の中間整理】」参照)、今回の報告書では見送られたわけですが、報告書は経団連の監査役会有効論に対して、監査役が取締役会において取締役選任などを含めた議決権を有しないこと、監査役監査の限界の指摘があったこと、事務局体制の不足等による監査役監査の不足の指摘を行っています。

そして、「我が国のいくつかの上場会社等においては、独立性の高い社外取締役を1名ないし複数選任した上で、監査役会や内部監査・内部統制担当役員等との連携を図っていく形で、ガバナンス機構の面で先進的な取組みを実践している例が見られる。」と指摘しています。しかしそれがどの会社を指し、どのようにうまく機能しているのかは、意見書を見ても分からないし、スタディグループの資料をみてもどの資料をつかっていっているのかよくわかりません。

ただ、いえるのは、社外取締役が、まず監査役会や内部監査部門等から情報をあげてもらって、法的なリスクや業務にまつわるリスクを正確に認識してそれに対応する活動をこれらと協力したうえで取締役会レベルで行うとすれば、それは有効であろうということです。それには社外取締役自身がリスクに対する感応度が高くないとだめですし、情報を自らとりにいくような姿勢が前提となっているということです。つまり、社外取締役個人の資質に左右される話であり、制度としてガバナンスが有効になる仕組みを考えるには出発点にすぎないように思います。

ところで日本コーポレート・ガバナンス・フォーラムが経団連意見書を批判する意見書を発表しています(「より良いコーポレート・ガバナンスをめざして」に対する当フォーラムの意見)。これを読むと、批判の大綱は問題点の認識不足、ベンチマークの欠如、現行監査役制度の機能的限界の3点なのですが、それではなぜ社外取締役が必要なのかという点については、たいした論述がなく、有効な批判になっていないように思われます。なんで社外取締役なのか、がみんなが知りたいところでしょう。

しかし、米国のエンロン、ベア・スターンズ、リーマン、GM、クライスラーという事例を前にしたときに、社外取締役が、企業行動にまつわるリスク・コントロールに対する有効な手段であると論証できるのでしょうか。これら企業は著名経営者、有名大学教授、有名チャリティ団体理事者等を社外取締役に抱えていましたが、見事にフェールしたわけです。今は、それらを乗り越え、それでも社外取締役は有効なのだという論拠を示さないといけないのではないでしょうか。OECDの原則だけかざしていても説得力はまさないと思うのですが。

なお、意見書は、上場会社の監査役機能強化の観点から、取引所を通じて、①監査役監査を支える人材・体制の確保(このための内部監査・内部統制部門との連携)、②独立性の高い社外監査役の選任、③財務・会計に関する知見を有する監査役の選任等の措置を促進し、開示の枠組み等を整備するということになっています。また、社外取締役・監査役の独立性確保のため、親会社等、大株主企業、主要取引先などの出身者についての開示と独立性に関する会社の考え方の開示を求めること、役員報酬の開示、監査人の選任議案・報酬の決定権の検討の促進を掲げています。いずれも金商法の関連政令の改正で対応可能でしょう。

● 上場会社等のコーポレート・ガバナンスに係る規律付けの手法

ここでは、「公開会社法制」に踏み込む方向性を評価する一方で、会社法と市場法のずれからくる検討課題が残されておりこれを克服すべき課題と位置づけています。また、取引所ルールによる規律付けについては「取引所がそのルールによって、会社法制との整合性を保ちつつ、適切な規律付けを行うことにより、機動的できめ細かなルールの整備と、日常の上場管理等を通じた実効的なルールの執行が可能」であるとして、積極的にこれをもちいる方向性を明確に出しているので、今後、上場会社については取引所ルールがますます重要になってくることになります。

さて、ロースクールでとの程度教えますかね?悩ましいところです。会社法を教える先生方、どうされますか?

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