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2009年8月25日 (火)

金融検査の第三者評価機関構想

昨日の日経朝刊第一面に、金融庁が外部の有識者で構成する第三者機関を新設して、金融庁が実施する金融機関への検査を評価・検証する手法を導入すると報道されています。

金融庁が行う検査といえば、預金預入れ機関に対する検査、保険会社に対する検査が頭にうかびます。金融庁が証券取引等監視委員会に委託している金融商品取引業者、投資運用業者、投資助言・代理業者への証券検査もはいるかどうかは記事からは明らかではありませんが、区別すべき理由はないので、おそらく証券検査も対象になるのでしょう。

第三者機関が何をするかについては、個別の金融機関に対する検査結果を開示するのではなく、どのような方針や体制で臨んだのかなど、一般内容を報告する方向で検討するとしています。しかし、一般内容の評価ってなんでしょうか。方針とか、検査体制だけで、どうやって検査の評価・検証なんでできるんでしょうか。

そもそもこのような第三者機関を設置する目的はどこにあるのでしょうか?報道では行政の独善に陥らない検査体制作りということですが、そうであるならば、個別・具体的な検査の検証にふみこまないで、どうやってその目的を達成できるのか、わかりません。

私個人の考えを申し上げますと、行政の独善に陥らない検査というならば、検査現場で行われている規制法規の行政解釈のチェックは、不可欠であると思います。日本ほど、規制法規の解釈が法廷の場で争われない国はないでしょう。これについてはすでに意見具申制度や異議申立制度が形式的には定められています。まったくといっていいほど機能していないといわざるを得ない現状ですので、別の手続で行政解釈が恣意に流れていないかどうかを評価する意味はあると思います。

特に個人的には、銀行法の解釈は変遷が著しく、硬直的であり、問題が大きい分野であると思っております。経験的に申し上げれば、検査において検査官が銀行法解釈について最も杓子定規的な対応をとるのが銀行法の解釈や「適正な体制」という中身の解釈なのではないかと思っておりますが、現場をあずかる検査官の立場を考えますと、それは検査官の後ろで解釈を確定しているバックオフィスや監督局や企画局にいるキャリアの方々の解釈が、とかく硬直的に陥りやすい傾向にあるからだと思っております。銀行法は条文数が少ない法律で、その運用は明文ではなく長い間の金融行政にのってきており、時代に後れやすく、また、そのときの行政担当者の解釈によって振幅が大きく出やすい分野です。こういう分野は、プリンシプル・ベースの前に、もっとルールベース化がもっと必要ではないかと思います。

ちゃんと第三者による評価をするならば、異議申立事例も射程距離において、検証するような体制をつくるべきでしょう。そうでなければ税金の無駄です。意味のない仕事を役所のなかで増やすのも、ただでさえ忙しい金融庁・証券取引等監視委員会の方々の事務量を無意味に膨らますことになります。

また、金融庁はとかく政治家、特に時の金融庁担当大臣の意向で大揺れになる傾向があります。与謝野さんが大臣だったときの、ジェイコム株の誤発注で、空白の数分を猟犬の本能で注文をだしたトレーダーたち(それこそが彼等の仕事なのです)を「美しくない」といって各社に利益を吐き出させようとしたことなど記憶に新しいところです。役所の体質としては、大臣がいいだしたら役人としては止めようがないということなのでしょう。金融政策は時の政治権力ともある程度の距離を置かないと、間違った方向にながれてしまいがちです。ルールのトランスペアレンシーという観念を政治家の皆さん、あまり気にされないので本当に困りますが、そのことによって我が国の金融政策の信頼性が外国においてどれくらい傷ついているのか、知るべきでしょう。

以上、つらつら考えると、わからないことが多いのですが、第三者評価機関の構想は、もう少し、どんなことを考えているのか聞いてみないと、意味のあることなのかどうかの判断がつきませんので、この辺で筆をおいておきます。

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