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2009年8月24日 (月)

社外調査委員会の調査のあり方

今朝の日経新聞法務面に「不祥事企業の調査報告書 客観性揺れる社外委員会」という記事がでました。これは今年7月10日に朝日新聞が掲載した「企業のウソ上塗り-不正会計「第三者委」の調査ずさん」という記事と、同じトピックを取り上げたものです。

朝日の記事を書いた記者は社会部の記者のようで、弁護士が関与した調査報告書に「ウソ」がある事例がみつかると非常にセンセーショナルに書いていますし、弁護士があたかも経営陣に加担し、事実を隠蔽するのに協力しているという印象をうける表題をつけています。記事の中身を読むと、実はそうではなく、会社側がうそをついているとちゃんと書いていますが、まじめにやっている弁護士が圧倒的多数なのに、もう少し記事の表題やトーンに考慮してもらいたいと、正直、思いました。これに比べると、日経の記事は格段にバランスのとれたものとなっていると思います。

さはさりながら、朝日の記事も日経の記事も、弁護士にとっては昔からある問題を提起しているのです。つまり、企業からこのような調査を依頼されたときに、弁護士の依頼者とは誰なのか、その場合に弁護士が依拠すべき準則とはなにか、という問題です。

私の記憶によると、会社の支配権争いにからんで、そのときの代表取締役から企業の適切な対応を依頼され、企業のためにアドバイスをしていた弁護士が、取締役会で勢力が逆転し、代表取締役の座を追われた当該代表取締役の不祥事について継続して責任追及を行ったことに対して、会社を追われた代表取締役から懲戒請求をされた事例があったように思います。私が弁護士になる直前に発生した事件でした。

ポイントとなったのは、依頼者は誰だったのかという論点で、企業自体が依頼者であるならば、企業の利益を守るため、直接の依頼をしたのが当該代表取締役であってもその者が依頼者ではないから問題ではない、という論理を懲戒請求された弁護士は主張したのでした。所属会の懲戒委員会の結論は懲戒相当でしたが、当該弁護士の主張は日弁連懲戒委員会では最終的には認められ、懲戒は不相当ということになったと記憶しています。

企業が依頼者であるという論理は正しいと思いますし、調査委員会に入る弁護士はだれでも企業が依頼者であるということを明確に意識しています。コンサルタントの秋山進氏が実質的依頼者がちがうという指摘をして、それによって弁護士が関与する委員会は問題を正当視する傾向があると評価していますが、しかし真の問題はそこにあるのではなく、何がそうさせているのかにあるわけです。

不祥事調査の難しさは、日経の記事における鳥飼重和先生の「外部調査委は任意の調査しかできない。会社側の全面的な協力がなければ成果をあげることは難しい」というコメントに端的に言い表されていると思います。社内弁護士としての経験からいうと、不祥事調査は会社内部にいても難しいです。それを社内事情の分からない第三者に依頼するのですから、最初から情報が圧倒的に不足しているところから出発することになります。会社の全面的協力なくしては必要な情報さえあつまらず、情報が提供されなければ、何が本当の問題なのかもわからないということは当然おきます。

委員会メンバーが会社が依頼者であると意識しながらも、全貌に迫れないのは、会社側が協力をある程度のレベルでストップしてしまうからであって、委員会メンバーが手を抜いているからではありません。鳥飼先生は日経記事に紹介されているフタバ産業の特別調査委員会及び責任追及委員会のメンバーであるだけに、その言葉には非常に説得力があります。

証券取引等監視委員会のコメントも紹介されていますが、調査がいいかげんな報告書が横行しているようなことを発言しているわけではありません。私も監視委員会幹部とこの件について話しましたが、質に問題があると思われるものがあるというコメントでした。ただ、監視委員会としては、弁護士が入っている調査委が出すレポートの市場における重みに鑑みて、そのような報告書が万に一つもでては困るということをいっているのです。

独立性が強い弁護士が関与してもこういう難しさがあるのですから(昔から「先生」と呼ばれている弁護士はいうことを聞かない依頼者を切ることに大胆でもありますし、私もそういう事例を見てきました)、コンサルティング会社が不祥事調査を行ったらもっとむずかしいのではないでしょうか。

この点、国広正先生は、経営陣の姿勢が大事という点を日経の記事において正当に指摘されています。そして、ご自身がNBLの論文で発表されたとおり、①徹底した事実の解明を行うこと、②全面的な協力をすること、③経営陣を含めた責任追及があり得ることを就任の条件にすべきであると主張され、実践されています。コンサルティング会社にも見習ってほしいですし、我々も自戒すべきところです。

日弁連では、朝日新聞の記事が出たあたりから、不祥事調査のベスト・プラクティスのガイドラインが必要なのではないかという議論がなされはじめ、8月の法的サービス企画推進センター運営委員会で、その中にあるCSR内部統制プロジェクト・チームにおいて検討することをすでに決めております。(行方先生、出番です!)

しかし、企業のサイドでもこれに呼応する動きがほしいところです。不祥事があることを前提として何かルールをつくるのはやりにくいといわれるかもしれませんが、とても大事なことで、依頼を受ける側のみならず、依頼する側も整理していただきたいと思います。そうすると、とても実効性のあるものができるのではないでしょうか。

もしそれができないとなると、取引所があとで報告書が変遷するような企業についての上場廃止ルールでも定めてもらうという方向性になってしまうでしょう。なんでもかんでも上場廃止ルールというのは取引所の裁量が増えて、取引所にとっても負担過重になるのであまり好ましいこととは思えません。自主規制機関が何かしなければならないのではなく、不祥事がおこった企業においてきちっとした対応ができることが理想だからです。内部統制ってそういうことです。

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コメント

とも先生、ご無沙汰しております。
CSR内部統制PTでの検討となったのですね。恥ずかしながらまだ知りませんでした。。

社内弁護士・行政の検査官・外部弁護士と、違う立ち位置から調査・検査を行ってきた個人的な経験からは、やはり、①実力(能力×努力)、②独立性、③被調査先の協力、それから④「気持ち」(信念)が良い調査となるために欠かせない要素かな、と思います。特段目新しいことではありませんが。。

行政官のときは、②と③は特段障害を感じませんでした。②検査官接待は今は昔ですし、③任意とはいえ、非協力だと「検査忌避」言われかねませんので通常、全面協力いただけます。他方、①と④はマチマチで、実力・志ともに高い方も、そうでない方もいらっしゃいますよね。とも先生も経験あるのではと思うのですが、私も、その昔、社内弁護士時に検査を受けたときは「これって、優越的地位の濫用?!」と思ったこともありました。

社内弁護士については、①や④は相対的に高いと思うのですが、組織内での上下関係から、弁護士とはいえ②は、とりわけ「エラい人」が調査対象ですと、やや厳しい感じがします。これも人によりますが。

社外弁護士ですと、①から④まで、まさに人それぞれ、バラバラなのでしょうね。さて、これを日弁連のPTでどのように検討していきましょうかねえ…( ̄Д ̄;;
少なくとも「気持ち」は高く持ち続けようと思いつつ。

またいろいろとご教授いただければ幸いです。

甘辛せんいち先生

ご無沙汰しております。そうなんです。座長のS先生は朝日の記事が出たとたんに、やるぞ~という希望を出されていたので、先生もご存知かと思ってました。

CSR内部統制PTでの検討も結構議論が分かれる部分はあるかもしれないと想像していますが、ぜひりっぱなガイドラインができるようお願いします。その際、社内弁護士と社外弁護士で別々の基準など打ち立てないようにお願いしますね。相変わらず社内弁護士に特別の義務を課そうとするわかってない人も大勢いるようですので、頼りにしております。

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