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2009年8月31日 (月)

日本内部統制研究学会年次大会で思ったこと

先週土曜日の朝一番の新幹線で神戸に行って、日本内部統制研究学会年次大会に出席しました。TOSHI先生もブログに書いている通り、非常に参考になる報告がたくさんなされまして、とても勉強になりました(TOSHI先生、立ち話でしたがお話できどうもありがとうございました)。その中で、特に感じたことを忘れないうちに書き留めておきたいと思います。

それは、①IFRSと内部統制の関係についての金融庁担当官の解説、②日経新聞コラム「大機・小機」2009年8月28日記事について、③K先生のM&Aと内部統制について触れられた発言について、の3点です。

まず①についてはTOSHI先生のブログにも少し解説されていますが、IFRSの勉強がまったくおいついていない私としては「こりゃもっと勉強しないとまずい」、と思わざるをえない情報でした。IFRSについては企業会計審議会から「我が国における国際会計基準の取り扱いに関する意見書(中間報告)」が6月30日に出されていますが、それによれば、2010年3月期の年度の財務諸表の財務諸表から任意適用を認め、2012年度をめどに状況を見て強制適用するかどうかを決めるが、強制適用する場合は3年の準備期間を経て2015年または2016年に適用開始することとする、と報告されています。

金融庁のNさんの解説によりますと、IFRSの任意適用が可能な企業については、内閣府令案でIFRS準拠の財務報告を行うことについて適切な体制を整備している企業に限定することが要件となっており、社内マニュアルの整備、教育、人員配置等の体制整備について有価証券報告書で開示すべきこととされていること、IFRSはプリンシプル・ベースを基本とし企業自らがどのような基準が適切かを判断して採用するという考え方であるので、内部統制が整備されることがますます必要かつ重要となってくるであろう、ということでした。

具体的にはどういう整備をすべきなのかを勉強しないと、監査役としてもやっていけないと思いまして、導入が近づいてから (´Д`;≡;´Д`)アワアワ という状態にならないために、しっかり準備しなければと強く感じました。

②についてです。大機・小機の「上場コストの上昇を憂う」という記事の中身は、内部統制はコスト増に見合った効果を生まない「屋上屋」を築くような制度であって、早急な見直しをすべきという主張なのですが、その根拠が内部統制システムに欠陥ありとの監査報告がでた会社に対して金融庁が罰を与えたということはなく「これは金融庁が制度の欠陥を認めている証拠ではないか。」というものでした

この記事は複数の報告者によって指摘され、記事の根拠が紹介されると会場には苦笑が広がったのでした。もちろん、この記事を書いた方が内部統制報告制度というものを理解していないということが、あまりにも明らかだったためと解釈しております。したがって、記者にはもう少し勉強してもらいたいというトーンで皆さん発言されておりまして、私もそう思いました。

新潮社事件でマスコミの内部統制が裁判で問題になっておりますが、この事件の判決は極端としても、倫理として、日本新聞協会の新聞倫理綱領には以下の節があることをこの記事を書いた記者猪突さん(たしか私が批判した6月11日のコラムもこの方が執筆したものだったのでは?)にもう一度思い出していただきたいものです。

「正確と公正 新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない。論評は世におもねらず、所信を貫くべきである。」

論評の前に、正確かつ公正な制度の理解や実態の認識が必要なことは他言を要しません。

さはさりながら、この記事の論点である内部統制報告制度の成果とコストの見合いは重要な論点です。学会では研究部会が「内部統制報告制度に関する実態調査と実証研究」で報告されました。

その一つとして、内部統制関連セミナーにおいて実施したアンケート調査がレポートされました。詳細はやがて学会機関紙で報告されると思いますが、それによると制度導入により管理体制が強化されたと思うと回答した被監査会社が74.1%、監査法人が同じく74.1%あったというレポートがあったということ、デメリットとして監査報酬が上昇したという回答が76.5%、管理費用が増加したという回答が43.9%あったということをご紹介しておきます。

③についてです。これは報告者の一人である著名なコンサルタントのK先生がご指摘されたことなのですが、M&Aが水面下で動いており、提携後や合併後に一方が他方に飲み込まれないためにも、しっかりした内部統制が重要なのではないか、という発言が非常に耳に残ったのでした。

私自身、チェースのJPモルガンの買収と統合を従業員として経験しており、苦い思い出が多いのですが、冷静に振り返ってみると、しっかりした管理体制をもったものが主導権を握る可能性が大きいというのは本当であると思います。個人の体験例をあげれば、当時のJPモルガンのオペレーショナル・リスク管理体制のなかで、各リスクをリスクマトリックスにまとめて、その対応状況ごとに緑、黄色、赤に示して一目瞭然にするという手法があったのですが、それ自体は優れたアイデアであったと思います。JPモルガンのオペレーショナル・リスク部隊が、組織再編の主導権を握ったのは偶然ではなく、そういう体制が確立していたことが一つの要因になったと思います。

以上、備忘録として残しました。

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