« 法科大学院に感じることなど | トップページ | 金融審議会スタディグループ報告書は重要だ-その2 »

2009年8月15日 (土)

おおすぎblog「監査役の2つの役割」をきっかけに

大杉先生が、おおすぎblogで「監査役の2つの役割」という記事をアップされています。大杉先生も試験の採点には苦労されているご様子ですが、お疲れ様です。

大杉先生によると、監査役には2つの役割があるとされています。一つ目は監査役の違法行為やそれに近いものを早期に発見して防止する役割で、これは、会社法の監査役設置会社に常勤監査役を置くという規定に親和性があるとされています。もう一つは取締役会における経営の基本方針の決定につき、監査役が一定の限度で関与する役割で、監査役が取締役会に出席し、必要があれば発言する義務を負うこと(376条1項)、監査役会設置会社ではメンバーの半数以上が社外監査役でなければならないとされていること(335条3項)という規定と親和性があります。前者の「古典的パラダイム」と後者の「最近のパラダイム」は矛盾するわけではなく、コーポレートガバナンスにおける車の両輪のようなものであると解説されています。

別に異論があるわけではないのですが、私は後者の「最近のパラダイム」がなぜ必要なのかが監査役制度の理解の鍵をにぎりはじめていると感じています。監査役のほうが社外取締役よりも有用なのではないかと思い始めているからです。

多くの上場会社が社外監査役の導入を決めるきっかけとなっているのは、不祥事の発覚と社内調査委員会による調査でガバナンスが機能していないことが指摘されるからです。それでは社外取締役が選任されたあと、当該社外取締役のために経営がどの程度よくなったのかを評価するための基準はどのようなものなのでしょうか。

導入当時の会社は会社内部でのチェック機能がきいていない、コンプライアンス意識が薄い、情報の質が悪い、伝達がうまくいっていない、PDCAが機能していないという問題があるので、社外取締役はまっさきにこういう点にフォーカスしていかなければならないはずです。ところが、社外取締役ほど社内の情報があつまらないポジションはありません。無任所大臣も同然の社外取締役は、せいぜい経営企画があげてくる課題や経営会議にあがってくる議題の検討をするのが精いっぱいです。本当は社外取締役は、会社の内部統制の点検作業を委員会でも作って行うのが正道ではないかと思います。

これに対して監査役のところには様々な情報があがってきます。私が世話役をしている社外監査役研究会でも上場会社の現役社外監査役が、社外取締役より社外監査役のほうが情報をもっていると断言されます。そこには経営企画や執行役員会に上がる前の生のリスク情報があがってきます。その上がり方は情報の中身をみると、その会社のリスク感応度やリスク管理の態勢がよく見えてきます。だから、社外取締役は監査役、とりわけ社外監査役と協力して委員会形式で会社ガバナンスの弱点を取締役会に指摘することぐらいしてもいいのではないかと思います。

社外取締役がこうした課題を正しく認識せずに、いきなり会社の取締役会の構成、任期、報酬といった問題にとりくんでも、短期的にはなんらの改善にはなりません。長期的課題として、社外取締役の割合をどれくらいにするとか選任や報酬をどうするかという問題は重要ですが、ガバナンスを向上させるには、今ある会社の状態を把握することなしにはできません。この点、ガバナンス委員会を設けている会社での議論の質は、当該会社の置かれているガバナンスの状態に照らして判断されるべきでしょう。こういうことができなければ、社外取締役を設置することのかなりの意味が減殺されてしまいます。

社外取締役がすぐにたちあがらないならば、私は監査役の権限をつよめ、大杉先生の後者の役割をつよめていくことこそ、日本の会社のガバナンス態勢を強化する近道ではないかと思っています。ただし、これも会社のほうがそういうことを正しく認識して、名前だけ高名な方を選任してお茶を濁さないということが出発点です。

« 法科大学院に感じることなど | トップページ | 金融審議会スタディグループ報告書は重要だ-その2 »

会社法」カテゴリの記事

内部統制・コンプライアンス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1098026/30165447

この記事へのトラックバック一覧です: おおすぎblog「監査役の2つの役割」をきっかけに:

« 法科大学院に感じることなど | トップページ | 金融審議会スタディグループ報告書は重要だ-その2 »