« 内部統制評価結果が表明できないとした例 | トップページ | 内部統制監査報告における不適正意見又は意見不表明と適時開示 »

2009年6月24日 (水)

内部統制評価結果が表明できない場合と財務諸表監査の関係

前回のブログ記事で、株式会社大木の内部統制報告の件で、会計監査人が内部統制報告について合理的な基礎が得られないときに、財務諸表監査における試査が母数の状態を表していることを合理的に保証するには、何を検討するのだろうかという疑問を書きました。なぜかというと、J-SOXでは財務諸表監査と内部統制監査は一体監査であるとされてきているからです。

この点について、実施基準「III.財務報告に係る内部統制」の「2.内部統制監査と財務諸表監査の関係」と、日本公認会計士協会の「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」(監査・保証実務委員会報告第82号)の「4.財務諸表監査と内部統制監査の関係」がまず参照されるべき文献です。

前者は「内部統制監査の過程で得られた監査証拠は、財務諸表監査の内部統制の評価における監査証拠として利用され、また財務諸表監査の過程で得られた監査証拠も内部統制監査の証拠として利用されることがある。一般に、財務報告に係る内部統制に重要な欠陥があり有効でない場合、財務諸表監査において、監査基準の定める内部統制に依拠した通常の試査による監査は実施できないと考えられる。」と書いてあるのみで、内部統制報告監査において意見表明をするレベルの合理的な基礎が得られない場合にどうするかは書いていません。

後者ですが、以下のように要約できると思います。

  1. 財務諸表監査では、内部統制の構築維持に関する経営者の姿勢は監査の基本方針を検討する際の重要な項目とされている。
  2. 財務諸表監査では、全社的な内部統制に関する理解が求められているが、その整備・運用状況の検討についてまでは明確に求められているわけではなく、財務諸表監査の実施において監査人は自らの判断で、内部統制の理解のための手続の種類と範囲を決定しているが、内部統制監査導入後は、内部統制監査における監査結果を利用することが想定されるし、運用状況についても内部統制監査の評価結果が検討の対象として追加され、財務諸表監査の深度が深まることが期待される。
  3. 財務諸表監査では、決算・財務プロセスに関しては内部統制の検証の範囲外である。しかし内部統制監査導入後はその監査結果を利用することが想定されている。
  4. 財務諸表監査では、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目に至る業務プロセスについては、当該業務プロセスのリスク評価手続を実施しなければならないし、整備状況の検討もしなければならないが、内部統制監査導入後はその監査結果を利用することが想定されている。
  5. 財務諸表監査では、その他の業務プロセスについては、虚偽記載のリスクが大きい業務プロセスと判断される場合には、当該業務プロセスのリスク評価手続を実施しなければならないし、整備状況の検討もしなければならないが、内部統制監査導入後はその監査結果を利用することが想定されている。

つまり、本件のように内部統制監査の結果がまったく利用できない場合は、内部統制監査導入前と同様の手続を踏むことになるわけです。そうすると、本件でも監査法人はそのような手続を踏んだはずです。

しかし、気になるのは、経営者が全社的内部統制の評価もできないような状況であるから、財務諸表監査ではその点を考慮にいれて監査計画にとりいれなければならないはずであるが、その点がまったく説明されていない点と、一般の投資家にとっては、内部統制監査を行う合理的基礎が得られないといいつつ、財務諸表監査では合理的基礎は得られたといっていることを理解できないだろうという点です。

本件のように全社的内部統制評価も経営者においてできていないようなケースでは、監査意見書に財務諸表監査で合理的基礎を得たというところをもう少し説明すべきではないでしょうか。

« 内部統制評価結果が表明できないとした例 | トップページ | 内部統制監査報告における不適正意見又は意見不表明と適時開示 »

内部統制・コンプライアンス」カテゴリの記事

金融商品取引法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1098026/30240813

この記事へのトラックバック一覧です: 内部統制評価結果が表明できない場合と財務諸表監査の関係:

« 内部統制評価結果が表明できないとした例 | トップページ | 内部統制監査報告における不適正意見又は意見不表明と適時開示 »