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2009年6月21日 (日)

重要な欠陥を報告した初の内部統制報告、提出される

株式会社ビジネスブレイン太田昭和が、内部統制は有効でないという内部統制報告を提出しました。

それによると見積もりをともなう勘定科目として貸借対照表に計上されている各種引当金を評価対象に追加していたところ、そのうち繰延税金資産の取り崩し、検討において問題がでたということです。正確を期するため原文を引きます。

「3 【評価結果に関する事項】

下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、重要な欠陥に該当すると判断した。したがって、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断した。

 記
 当社は決算・財務報告プロセスでの子会社の繰延税金資産において、取崩しの検討、及び、認識が不十分であったため、当期の繰延税金資産について修正を行うことになった。

 事業年度の末日までに是正されなかった理由は、繰延税金資産の回収可能性の判断の適用を誤り、さらに、それに対する牽制が充分に機能しなかったためである。

4 【付記事項】】

評価結果に関する事項に記載された重要な欠陥を是正するために、事業年度の末日後、繰延税金資産の回収可能性の判断に関するマニュアル、新たな業務フローを整備及び運用し、内部統制報告書提出日までに当該是正後の内部統制の整備及び運用状況の評価を行った。評価の結果、内部統制報告書提出日において、繰延税金資産の回収可能性の判断に係る内部統制は有効であると判断した。」

感想めいたことを申しますと、第一に、まずは、重要な欠陥をレポートした内部統制報告書第1号が、内部統制コンサルティングも手がけているコンサルティング会社であったことに驚きがありました。関係者にとってはショックだったでしょうね。

第二に、決算財務プロセスに誤りが発生すると、それは即、重要な欠陥になると判定されやすいという認識が裏付けられたと考えております。決算・財務報告プロセスに誤りがあるとすぐ数値に影響がでます。その影響は多くの場合、金額的に重要なレベルになってしまいやすいわけですから、決算・財務報告プロセスの誤りは重要な欠陥になりやすいであろうと、私が監査役をしている会社の内部監査部長の方と話しておりましたが、まさにそのとおりの結果となりました。

第三に記載内容から判断すると、厳密な意味で、内部統制構築ができていなかったのか、それとも運用がまちがっていたのか明確に意識されて書かれておらず、この点、工夫はいらないものかと思いました。子会社の繰延税金資産において、取崩しの検討、及び、認識が不十分であったため、当期の繰延税金資産について修正を行うことになったが、その原因は、「繰延税金資産の回収可能性の判断の適用を誤り、さらに、それに対する牽制が充分に機能しなかったためである」とされているので、体制は整っていたけれども当事者の運用に誤りがあったという印象を受けます。ところが、付記事項では事業年度末日後に「繰延税金資産の回収可能性の判断に関するマニュアル、新たな業務フローを整備及び運用」し内部統制報告書提出日において内部統制は有効であると判断したととあります。この記述では、体制構築面でも問題があったような記載になっています。

私が経験した金融検査では、原因の分析と対策がちぐはぐになっていると監督当局から突っ込まれる理由や再発の原因になりやすいので、特に注意しているところでした。付記事項から判断する限りは、繰延税金資産の回収可能性の判断について明確な基準が定められていなかったためもあって、判断を誤ったのであろうと推測していいのではないかと思います。

PDCAサイクルにとって重要なのは、原因の分析とその原因に対応する的確な対策を策定して実行していくことにあります。だからその点はゆるがせにすべきではないと日頃から考えており、今回のレポートの事例における検討課題なのではないかと思います。

また、体制構築面での問題があったとなると当該具体的事例において取締役の善管注意義務違反があったといえるのか、監査報告書に取締役の任務懈怠として指摘すべきなのか(もし監査報告書作成までわかれば、という前提だが、現実的には内部統制上の問題点があることはわかっても、監査報告書作成時点では会計監査人ももしかしたら意見が固まっていないかもしれず、監査役としては善管注意義務違反といえるのかどうか判断に大いに悩むということになりかねない)という関連論点がでてくるので、監査役としては注意深くならなければと考えております。

<追記>

今、改めて読み返すと「さらに、それに対する牽制が充分に機能しなかったため」というのは体制構築にも問題があったということを表現しようとしたのではないかという気がしてきました。牽制が充分機能しないというのがその設計上ミスがあったということを認めているとすれば、この記述でも特に問題とするまででもないということになりますね。この表現意図的に選択したとすると、私が最後に指摘した取締役の内部統制構築義務についても考慮してこうなったということなのでしょう。

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