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2009年5月12日 (火)

SEC、CDS取引について初のインサイダー取引を摘発

SECが、ヘッジファンドのマネージャーと投資銀行に勤務する債券・CDSセールス担当者を、CDS取引に関してインサイダー取引として摘発、利益の吐き出しと民事制裁金の支払を求めて、連邦地裁ニューヨーク南部地区裁判所に起訴したというリリースが発表されました。

http://www.sec.gov/news/press/2009/2009-102.htm

これによると、投資銀行のセールスマンは、当該投資銀行がリードアンダーライターであるニールセンメディア等のホールディングカンパニーVNU N.V.が発行予定のボンドのストラクチャーに変更があることを知り、ボンド・ストラクチャーの変更(それはVNUのCDSのプライスを上昇させるようなものであった)をヘッジファンドのファンドマネージャーに告げ、ファンドマネージャーはVNUを参照企業とするCDSを当該投資銀行から購入したという事実であり、このような行為はインサイダー規制違反であると主張するものです。変更されたボンド発行の予定公表後、VNUを参照企業とするCDSのプライスは大幅に上昇し、ファンドマネージャーは上昇後にCDSを売却して120万ドルの利益をあげたとされています。

日本でも証取法が改正され金商法になったときに、デリバティブ取引にまでインサイダー規制が適用されることになり、それは具体的にはCDS取引が対象であるといわれています。理論的には、参照企業の未公開の重要情報を取得してCDSを購入する行為がインサイダー取引になることは考えられることでありますが、現実にCDS取引について不公正取引があるのかどうかについては、日本の証券取引等監視委員会もヒヤリングを重ねて、現実的に発生しているリスクは懸念するほど大きくないものの、理論的にはありうるものという考えであることをISDAを通じてマーケット関係者に最近発表し、意見交換をしたばかりでした。

監視委員会でより関心が高かったのは、CDSスプレッドの操作による参照企業の株価の操作、特にスプレッドをワイドニング(大幅上昇)させて株価を下落させるという株価操縦という点であったようです。レファレンス・エンティティについての風説の流布、相場操縦、仮装売買等によるCDSスプレッドの操作、さらに参照企業の重要情報を利用したインサイダー取引についてもありうるとしていましたが、ヒアリングの結果、市場参加者では不公正取引は困難であるという意見が多かったので、当初の懸念はかなり後退していたようです。米国で第1号の摘発が監視委員会の姿勢にどのような変化をもたらすか、はたまた市場参加者の内部管理体制として足らざるところはないのか、あらためて点検の必要性がでてくる可能性がありますね。

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