« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »

2009年5月に作成された記事

2009年5月30日 (土)

マスコミの米国連邦破産法に対する誤解

ここ1ヶ月間のGM及びクライスラーの米国連邦破産法申請に関する報道をみていると、間違いが目立つ、と、一昨日に開催された事業再生機構のシンポジウムで、わが国に米国連邦破産法を本格的に紹介された倒産村の重鎮、高木新二郎先生が指摘されていたので、これを機会に一連の間違いを指摘しておきたいと思います。

まず、なんでチャプター11を米国連邦破産法「11条」といっているのか理解不能です。勉強不足のどこかの通信社がクライスラーの初期の報道の際にこの用語を使ったので、それ以来みな右へならえをしているようです。しかし、昔は報道機関もちゃんと米国連邦破産法「11章」といっていたのです。11章には当然何百という条文がならんでいるので、条文のことを解説するようになると困ったことになります。NHKまで、クローズアップ現代で国谷キャスターが「11条」といっているのには唖然です。国谷さん、だんなさんに聞いてくださいね(もう聞いているかもしれないけれど)。

次に、クライスラーの破産について「プレパッケージ型」とよんでいることについて、高木先生が「プレパッケージ型」というのを完全に誤解していると指摘されています。「プレパッケージ型」というのは、破産申請の前に、スポンサーをつけた再建計画を債権者に示し、あわせて債権者が必要な開示をおこなって少なくとも債権者の90%程度の賛成の議決を得てから破産裁判所に11章の適用申請を行うもので、破産裁判所は最近開示要件を厳しく見ているため、開示を嫌い主要債権者と申請前に再建計画の賛同を交渉して同意をえておくという「プレ・ネゴシエーション型」というタイプの手続きが行われているそうです(高木先生、勉強になりました)。クライスラーはこの「プレ・ネゴシエーション型」であって、プレパッケージ型ではないのに、確かにそのように繰り返し報道されています。私もプレパッケージ型という用語をつかっていたので、これは誤りということです。申し訳ありません。m(_ _)mこのことを意識してか、最近は「事前調整型破綻」といいだしているようです。でも「破綻」という用語を使っていますが、そこまでいうならば、「事前調整型再生手続」といったほうがようさそうです。

第三にチャプター11が日本の民事再生法に相当するといっている点ですが、これも法律家では疑問視する人も多いでしょうし、私もその一人です。むしろ近時始まったDIP型会社更生に近いのではないでしょうか。民事再生法では担保権は別除権として手続の外で行使が可能ですが、チャプター11は自動停止効が担保権の行使にまで及びます。 

第四に、GMの連邦破産法11章適用申請について、日経新聞が、GMの経営陣が28日に弁済日を繰り上げて弁済して適用を申請するが、理論的にこれは可能であると報道しました。このようなことができるならば偏頗弁済を理由とする否認権はどうなってしまうのでしょう???チャプター11では、申請前90日以内の弁済は、否認の対象になります。否認権の対象とならないというのならば、なぜなのかの解説をしてもらいたいです。皆さんが、こういうことができると思ったら間違いが起きます。

第五に、確定拠出型適格年金はERISAという法律で破産手続から隔離されており、適格年金であるかぎり、破産手続の影響をうけません。ところが、GMやクライスラーの報道ではこれもカットされてしまうような印象を与える報道がみうけられます。リタイアした組合員が享受している医療費についても、組合に対するファンディングを50%カットするということは報道されていますが、ERISAとの関係は一切解説されていません。

というわけで、報道機関の皆さんも私と一緒にもっと連邦破産法11章をちゃんと勉強しましょう。ベーシックはここを見れは分かります。↓

http://www.uscourts.gov/bankruptcycourts/bankruptcybasics/chapter11.html#transfer

2009年5月21日 (木)

業績の悪化と内部統制報告

3月末決算の公開会社は、いよいよ内部統制報告の作成ドラフト準備と監査人の内部統制報告評価の準備の両方について最終段階を向えていることでしょう。先月の日本内部統制研究学会シンポジウムの報告によれば、今までもっとも多い相談は何が重要な欠陥に該当するかという問題と内部統制報告書の記載のあり方だそうですが、これらについては当ブログでも何回かとりあげております。今回は、金融危機から発した世界的な不況の中で、問題になりそうな業績の悪化や大幅な為替変動と内部統制報告の評価について考えてみたいと思います。

内部統制の評価範囲については、重要な事業拠点の選定について売上高などを用いて金額の高い拠点から合算して、概ね3分の2程度に達するまでの拠点を重要な事業拠点として選定するのが実施基準に示された考え方でしたが、9月以来、売上げの大幅な減少を経験している企業が圧倒的に多い中、重要な事業拠点として対象とした事業部や海外子会社の売上に占める構成比が大きく変動していることも多いでしょう。為替変動も海外子会社の業績を連結でとりこむときに大きく影響していることでしょう。

「内部統制報告制度に関するQ&A(追加分)」問74は、①当初評価範囲として選定した事業拠点の売上高等の合計が概ね3分の2程度に達しなくなる場合に、これに達するまで評価対象に新たな事業拠点を加えなければならないのか、②仮に追加的に評価対象に加えた事業拠点の内部統制の一部について十分な評価手続を実施できない場合には、「やむを得ない事情」に該当するとしてよいか、③連結グループ全体の売上高が減少したため、当初の評価範囲として重要な事業拠点の売上高等の合計が8割を超えた場合、概ね3分の2程度になるまで重要な事業拠点の主要な勘定科目に係る業務プロセスを絞り込んでいいか、という三つの質問に回答しています。

①については、「経営者は、評価範囲を決定する計画段階で、前年度の売上高なども参考に当期の業績予測も一定程度考慮して評価範囲を決定することが適用であると考えられる。計画段階でそうした事情も考慮して適切に評価範囲を決定しているのであれば、全社的な内部統制が有効であることを前提として、一定割合を著しく下回らない限りにおいて、選定している重要な拠点をもって適切な評価範囲であると判断することが可能であり、当期の内部統制の評価範囲を見直す必要はないと考えられる。」としています。

この回答は、決算・財務報告プロセス以外の業務プロセスの評価範囲のことをいっていることに留意する必要があります。評価範囲の対象の前提としての事業拠点の選択についても前年度の売上高「等」を参考として概ね3分の2に達するまで重要な拠点として選択すると実施基準はいっていました。この回答は「等」について、前年度の実績だけでなく、当期の業績予測も「一定程度」考慮して評価対象を決めなさいといっており、そういう適切な評価範囲の決定を行ってることが条件になるとしているのです。ここまではどこの会社もあまり問題はないと思います。

ところで、当期の業績予測については、本年3月末で終了した事業年度については昨年10月~本年2月の間に業績予測を下方修正し開示した会社が多数あります。疑問なのは、当期の業績予測は一番最初のものだけをベースに評価範囲の決定をしていいのかどうかという点です。第2四半期末までの下方修正ならば、それをベースに評価範囲を拡張し事業拠点を追加しても、構築・評価はなんとかできるのではないかと思いますが、それ以後の修正ごとに評価範囲を見直して事業拠点を付け加えていかなければならないとすると、追加された事業拠点については十分な内部統制構築や評価手続ができないということもあるので、そこまでする必要はないという見解がありえます。

他方、評価範囲たる事業拠点の売上高が全体の売上高の例えば50%未満になってしまうような場合を考えると、業績予測の修正をした場合にはその都度、評価範囲も追加するとしないと、内部統制評価の意味がなくなってしまうから、こういう場合は業績予測の修正をした際に、評価範囲たる事業拠点を追加させ、十分な評価ができないときには「やむを得ない事情」に該当するとしてその事情を開示させたほうが、投資家にとってはよほど安心という議論も、なりたつでしょう。しかし、結局において十分な評価ができなければ、内部統制評価の意味がなくなってしまうということには変らないのであって、会社にそこまでの負担をかけて評価に向かわせるのはどうか、という反論が考えられます。

また、「全社的な内部統制が有効なことを前提として」と断っているのは、業務プロセスの絞込みは全社的内部統制が有効な場合であり、それが問題である場合には、評価対象を広げなければならないという原則があるので、全社的内部統制に問題がある企業は評価範囲として事業拠点を追加しなければならなくなる場合もあるということを意味しているものと思われます。

このように、このQ&Aは一見明確なようで、不明確な点が含まれています。

次に②についてですが、①の回答を前提として、新たに他の事業拠点を評価対象に加えたときには、当該事業拠点の「一部について十分な評価手続を実施できない場合、そのことをもって直ちに「やむを得ない事情」には該当しない場合があるが、その際にも、評価範囲の制約としてその内容を記載することになる。」としています。

内部統制報告書の評価の範囲に関する事項については、やむを得ない事情により十分な評価手続が実施できなかった場合には、その範囲及びその理由を記載すると内部統制府令上定められています(第1号様式・第2号様式の記載上の注意点をみてください)。この回答は、前段でやむを得ない事情に該当しない場合のことをいっており、「その際にも」のあとの文章の意味はやむをえない事情に該当しない場合にも、やむをえない事情に該当する場合と同様の開示をしなさい、といっているように見えます。「その際」の読み方次第ですが、これが「その場合」ならば「該当しない場合」という意味になりますので、当たり前のことをいっていることになりますが、そうでないとすると新しいルールを書き加えたことになります。

最後に③ですが、「概ね3分の2程度になるまで重要な事業拠点の主要な勘定科目に係る業務プロセスを絞り込んでよいか」というQ&A問74の質問そのものがわかりにくいですね。事業拠点の売上勘定に係る業務プロセスのどこからどこまでを絞り込むと売上勘定が3分の2になるんでしょう??

ともあれ回答は「重要な事業拠点における事業目的に大きく関わる勘定科目に至る業務プロセスについては原則としてすべてを評価の対象とするとされていることから、当該業務プロセスを絞り込むことは適切でない。」としています。

また、回答はこのようなケースの場合には、重要な事業拠点自体を一定の割合まで除外することも考えられるが、「当該超過の事実により、評価範囲の見直しをするときには、慎重に検討を行う必要がある。」といっています。その理由としては、既に当該事業拠点について当初の評価範囲に基づいて内部統制の整備を行っているものと考えられるからいまさら除外のは適切ではない場合もありうること、当初の評価範囲の決定にあたっては売上高等の指標以外の要素も勘案して決定している場合もあることを指摘しています。

しかし、絞り込みを認めたのは、US-SOXの内部統制整備の文書化の作業があまりに重かったことの反省にたったからであって、このような場合に除外も認めなくてもいいのではないかと思います。

以上、問74の回答はもう少し検討すべきだったのではないかと思う次第です。

2009年5月12日 (火)

SEC、CDS取引について初のインサイダー取引を摘発

SECが、ヘッジファンドのマネージャーと投資銀行に勤務する債券・CDSセールス担当者を、CDS取引に関してインサイダー取引として摘発、利益の吐き出しと民事制裁金の支払を求めて、連邦地裁ニューヨーク南部地区裁判所に起訴したというリリースが発表されました。

http://www.sec.gov/news/press/2009/2009-102.htm

これによると、投資銀行のセールスマンは、当該投資銀行がリードアンダーライターであるニールセンメディア等のホールディングカンパニーVNU N.V.が発行予定のボンドのストラクチャーに変更があることを知り、ボンド・ストラクチャーの変更(それはVNUのCDSのプライスを上昇させるようなものであった)をヘッジファンドのファンドマネージャーに告げ、ファンドマネージャーはVNUを参照企業とするCDSを当該投資銀行から購入したという事実であり、このような行為はインサイダー規制違反であると主張するものです。変更されたボンド発行の予定公表後、VNUを参照企業とするCDSのプライスは大幅に上昇し、ファンドマネージャーは上昇後にCDSを売却して120万ドルの利益をあげたとされています。

日本でも証取法が改正され金商法になったときに、デリバティブ取引にまでインサイダー規制が適用されることになり、それは具体的にはCDS取引が対象であるといわれています。理論的には、参照企業の未公開の重要情報を取得してCDSを購入する行為がインサイダー取引になることは考えられることでありますが、現実にCDS取引について不公正取引があるのかどうかについては、日本の証券取引等監視委員会もヒヤリングを重ねて、現実的に発生しているリスクは懸念するほど大きくないものの、理論的にはありうるものという考えであることをISDAを通じてマーケット関係者に最近発表し、意見交換をしたばかりでした。

監視委員会でより関心が高かったのは、CDSスプレッドの操作による参照企業の株価の操作、特にスプレッドをワイドニング(大幅上昇)させて株価を下落させるという株価操縦という点であったようです。レファレンス・エンティティについての風説の流布、相場操縦、仮装売買等によるCDSスプレッドの操作、さらに参照企業の重要情報を利用したインサイダー取引についてもありうるとしていましたが、ヒアリングの結果、市場参加者では不公正取引は困難であるという意見が多かったので、当初の懸念はかなり後退していたようです。米国で第1号の摘発が監視委員会の姿勢にどのような変化をもたらすか、はたまた市場参加者の内部管理体制として足らざるところはないのか、あらためて点検の必要性がでてくる可能性がありますね。

2009年5月 5日 (火)

クライスラーの手続進行は特別?

クライスラーのチャプター11はもう倒産会社の審尋手続が開催されていると報道されています。

先日記載した手続の進行スケジュールは標準的なもので、連邦倒産法規則に定められているものですが、クライスラーの場合はプレパッケージ型の特則が適用されているようです。

連休で東京を離れており、その根拠が調べられないので東京に帰ってから調査しようと思います。

2009年5月 2日 (土)

クライスラー、ついにチャプター11を申請

クライスラーが、ついに連邦倒産法チャプター11の適用申請に踏み切りました。皆さんの関心はどのように手続きが進行していくかということにあるでしょうから、下記に簡単に記載しておきます。

申立て 自動停止効により債権消滅等の行為が禁止されます。訴訟手続はストップ。

20日以上40日以内

債権者集会  

連邦管財官(US Trustee)という行政官が主宰する、債権者による債務者に対する審尋を行うことを目的としますが、ようするに倒産会社から債権者に対する説明のための集会です。開催日の前に債権者に対する通知が必要ですが、債権者多数の場合には公告がされ個別通知はされません。申立て後に、原則として債権額上位7社の無担保債権者から構成される債権者委員会が結成されます。連邦管財官により上位の債権者から委員を受託する意思のある者が委員として選任されます。このほかに担保権付債権者の委員会、株主委員会も必要があれば選任することができるとされますが、実務ではあまり選任されないようです。

 

債権届出期間の経過

届出をしないとチャプター11の中で債権者として認められません。倒産会社が提出した一覧表に記載されていれば、原則として一覧表の提出により債権届出がなされたものとみなされます。

債権届出期限

裁判所が期限を定めます。何日以内でなければいけないということはありません。

届出債権に対する異議申立期間

異議が申し立てられると聴聞手続があります。

再建計画及びその開示説明書の裁判所への提出

申立をしてから120日間は倒産会社のみが再建計画をいつでも提出できるとされています。

 25日以上

開示説明書の聴聞手続

破産裁判所が再建計画を説明した開示説明書の適切性を判断し、適切であると判断した場合には債権者に配布するのを許可します。

 

開示説明書の配布、債権者に対する投票の勧誘

勧誘できる期間は破産裁判所が決定します。

債権者等による投票

債権の類型ごとに組織される債権者の組ごとの投票が行われ、各組ごとに投票数の3分の2以上、債権者数の過半数の賛成が必要です。

再建計画認可の聴聞手続  

再建計画の認可

破産裁判所が認可事由を満たしている場合に認可します。認可事由には再建計画が清算価値よりも多くの利益を債権者に与えることを保障しているかどうか、実行可能かどうか、再建計画により権利の内容が変更された債権者の組のすべてが賛成しているかどうか、などが含まれます。ただし、すべての債権者の組が賛成していなくても、少なくともひとつの組が賛成していれば、一定の要件をみたせば裁判所は認可をあたえることができ、これをクラムダウンと読んでいます。

建計画の履行

報告書・計算書の提出

チャプター11の終結

« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »