マスコミの米国連邦破産法に対する誤解
ここ1ヶ月間のGM及びクライスラーの米国連邦破産法申請に関する報道をみていると、間違いが目立つ、と、一昨日に開催された事業再生機構のシンポジウムで、わが国に米国連邦破産法を本格的に紹介された倒産村の重鎮、高木新二郎先生が指摘されていたので、これを機会に一連の間違いを指摘しておきたいと思います。
まず、なんでチャプター11を米国連邦破産法「11条」といっているのか理解不能です。勉強不足のどこかの通信社がクライスラーの初期の報道の際にこの用語を使ったので、それ以来みな右へならえをしているようです。しかし、昔は報道機関もちゃんと米国連邦破産法「11章」といっていたのです。11章には当然何百という条文がならんでいるので、条文のことを解説するようになると困ったことになります。NHKまで、クローズアップ現代で国谷キャスターが「11条」といっているのには唖然です。国谷さん、だんなさんに聞いてくださいね(もう聞いているかもしれないけれど)。
次に、クライスラーの破産について「プレパッケージ型」とよんでいることについて、高木先生が「プレパッケージ型」というのを完全に誤解していると指摘されています。「プレパッケージ型」というのは、破産申請の前に、スポンサーをつけた再建計画を債権者に示し、あわせて債権者が必要な開示をおこなって少なくとも債権者の90%程度の賛成の議決を得てから破産裁判所に11章の適用申請を行うもので、破産裁判所は最近開示要件を厳しく見ているため、開示を嫌い主要債権者と申請前に再建計画の賛同を交渉して同意をえておくという「プレ・ネゴシエーション型」というタイプの手続きが行われているそうです(高木先生、勉強になりました)。クライスラーはこの「プレ・ネゴシエーション型」であって、プレパッケージ型ではないのに、確かにそのように繰り返し報道されています。私もプレパッケージ型という用語をつかっていたので、これは誤りということです。申し訳ありません。m(_ _)mこのことを意識してか、最近は「事前調整型破綻」といいだしているようです。でも「破綻」という用語を使っていますが、そこまでいうならば、「事前調整型再生手続」といったほうがようさそうです。
第三にチャプター11が日本の民事再生法に相当するといっている点ですが、これも法律家では疑問視する人も多いでしょうし、私もその一人です。むしろ近時始まったDIP型会社更生に近いのではないでしょうか。民事再生法では担保権は別除権として手続の外で行使が可能ですが、チャプター11は自動停止効が担保権の行使にまで及びます。
第四に、GMの連邦破産法11章適用申請について、日経新聞が、GMの経営陣が28日に弁済日を繰り上げて弁済して適用を申請するが、理論的にこれは可能であると報道しました。このようなことができるならば偏頗弁済を理由とする否認権はどうなってしまうのでしょう???チャプター11では、申請前90日以内の弁済は、否認の対象になります。否認権の対象とならないというのならば、なぜなのかの解説をしてもらいたいです。皆さんが、こういうことができると思ったら間違いが起きます。
第五に、確定拠出型適格年金はERISAという法律で破産手続から隔離されており、適格年金であるかぎり、破産手続の影響をうけません。ところが、GMやクライスラーの報道ではこれもカットされてしまうような印象を与える報道がみうけられます。リタイアした組合員が享受している医療費についても、組合に対するファンディングを50%カットするということは報道されていますが、ERISAとの関係は一切解説されていません。
というわけで、報道機関の皆さんも私と一緒にもっと連邦破産法11章をちゃんと勉強しましょう。ベーシックはここを見れは分かります。↓
http://www.uscourts.gov/bankruptcycourts/bankruptcybasics/chapter11.html#transfer
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

最近のコメント