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2009年4月に作成された記事

2009年4月27日 (月)

米国連邦倒産法における相殺の取り扱い

先日、私の事務所で米国連邦倒産法についてのセミナーを開催し、多数の自動車関連企業の方のご参加を得ました。出席いただいた皆様、どうもありがとうございました。

セミナー終了後のアンケートを分析しましたところ、チャプター11の手続の概要についてすでに一定の知識を備えて準備がある程度できている方は約半数で、この方々はもう少しチャプター11についてつっこんだ話をご希望のようですが、その余の方々はまったく準備がないようで、内容が難しいという感想をもたれたようです。

そこで、今回は、関心の高かった日本の法制ではもっとも保護されている相殺について、チャプター11ではどうなるのかという点について少し書いてみたいと思います。

民法の原則では、債権者は、債務者に対して有している債権(自働債権)の弁済期がきていれば、自分が債務者に負っている債務(反対債権で受働債権とよばれる)と相殺ができます。相殺により自働債権は強制的に弁済されることになり、債務者が自働債権について期限まで弁済する義務はないという期限の利益をもっている場合には、期限の利益を奪ってしまうので、自働債権の弁済期がきていることが要件になっているわけです。このため、倒産事由の発生の際に、債務者が期限の利益を失うことが多くの契約書にはで定められているのが普通です。

日本の倒産法では、債権者に対して債務者会社が反対債権を有している場合には、債権者の相殺に対する期待を保護するため、倒産手続の中に服さずに自由に一定の範囲の相殺が認められています。

例えば破産法は、破産債権は破産手続によらなければ行使できないとする一方で、破産手続開始時に破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで破産債権を自働債権として破産者に対るす債務と相殺できるとし、さらに破産債権が期限付債権でその期限が期限未到来であっても破産手続開始のときにおいて弁済期が到来したものとみなしており、自働債権について弁済期が到来していることが必要という民法の原則を破産法に規定を設けることでクリアして、破産債権者の相殺権を保護しています。

民事再生法では、原則は再生債権の弁済やその他の債権を消滅させる行為は再生手続開始後は再生手続の中で行わなければなりませんが、再生債権者が再生手続開始当時に負担している債務については、再生債権と債務が債権届出期間満了前に相殺適状になっている場合には、当該期間内に限り相殺することができます。この場合、債務についての期限の利益を放棄することは再生債権者は可能ですから、債務について期限が到来しない場合でも相殺が可能で、これも明文で認められています。同様の規定は会社更生法にも見られます。

日本法においてはこれほどまで保護されている相殺権について、米国連邦倒産法の態度は冷たいものがあります。

チャプター11の申立てがあると、automatic stay(自動停止効)により、自動的に債務者および財団に対する債権取立て、担保権実行、担保権設定などが停止されます。この自動停止効により、倒産事件開始前に債務者に対して負担した債務を受働債権とする相殺は禁止されます。債権者は相殺権が行使できないわけですが、倒産手続がなければ相殺可能であった金額は担保権付債権としての取扱いを受けることになります。

銀行預金についても日本のように銀行が相殺によって回収できません。しかし預金はcash collateralといって現金担保として取り扱われ、裁判所の許可がない限りDIPは自由に使えません。

自動停止効が相殺権の行使を阻みますが、相殺権そのものが否定されているものではなく、自動停止効からの救済・解除が必要となります。それを得るための要件がいくつか定められていて、自動停止効によって影響をうける利害関係人が有する財産上の権利について、正当な理由がある場合や「適切な保護」(adequate protection)が欠けている場合には救済を認めるという構造になっています。特別な事情がないかぎり、単なる相殺権の行使を可能ならしめるために自動停止効の救済が認められるケースはないようです。

また、倒産事由が発生したことをもって契約終了事由としたり、解除権が発生するという条項については、チャプター11ではそのような倒産条項は無効であるとされています。継続的供給契約に倒産条項をいれておいても、現実には機能せず、供給を拒むことはできないことになります。

継続的に部品を供給している債権者が、申立て前に発生している未払の部品代金を相殺権行使でカバーするのは中々難しいということになります。

2009年4月 7日 (火)

日本内部統制研究学会第1回公開セミナー開催される

3月はさまざまな業務で非常に忙しく、かつ金商法の本の校正作業でフラストレーションが相当たまり、まったくブログを書く気持ちのゆとりがなくなってしまいました。お読みいただいていた方々には申し訳ありません。

私がさぼっている間に、F1も第2戦まで行き、ブラウンGP2連勝という新鮮な展開、また、SGTではわがARTAガライヤが岡山ですざまじい追い上げをみせ2位入賞、GT500もファーマン・矢沢組が3位入賞といういいスタートを切り、私ももたもたしていては行かんと気持ちを切り替えました。TOSHI先生のように、とはいわずとも、とにかく継続して書いていく気持ちをまたかためました。今後ともよろしくお願いします。m(_ _)m

さて、日本内部統制研究学会の第1回公開セミナーが4月3日に行われました。セミナーでは、今まで実際にはお会いしていなかったTOSHI先生とも立ち話ができて、うれしかったです。

セミナーの資料には、出たばかりの内部統制報告制度に関するQ&Aの追加分の抜き刷りが入っておりました。このQ&Aを一読して、そこに書かれていることが、今までここで書いてきたことと方向性は一緒だなと感じており、自分の考えがあまりぶれてはいないことが確認できました。

ただ、Q&Aでは自分では想像だにしなかったようなことが現場では心配しているということを理解させてくれました。例えばー

「財務諸表等のドラフトを監査人に提出したところ、監査人からは個々にはそれほど重要ではないが、多数の誤り等の指摘を受け、指摘された数が多いことから重要な欠陥に該当するのではないかといわれた。」、という問69の質問。

はー、こんなことをいう監査人がいるんだ、とびっくり。

これに対する回答は「指摘された誤りが多いことをもって重要な欠陥に該当するものではなく、誤りを生じさせた内部統制の不備の金額的・質的重要性を勘案して重要な欠陥に該当するのかを判断することとなる」。したがって、「ドラフトについても、監査人から指摘された誤り等が会社の内部統制によって防止・発見できなかったという観点から検討する必要」があると、至極当然な考え方が示されています。

また、「監査を受ける前提としてのドラフトなのか、監査人との協議を目的とするドラフトなのかによって」重要な判断に該当するかは異なるものであり、「後者のような協議を行うことは、従来の財務諸表監査の過程でも行われている実務であると考えられ、この場合、協議の過程で、重要な虚偽記載が発見されることがあっても、内部統制の重要な欠陥と判断する必要はない」といっています。

監査人の質に対して、いらだっているような雰囲気がなんとなくしてきます・・・・・

また、決算短信を公表後、会社の内部統制により決算短信の内容に重要な誤り(虚偽記載)を発見し、有価証券報告書及び内部統制報告書を提出する前に決算短信を訂正したが、この訂正をもって「重要な欠陥」があると判断しなければならないのか、という質問70。

これなどは、4半期の決算短信で訂正がおきたことをもって重要な欠陥となる可能性があると監査人から言われたのではないか、と想像できます。

これに対する答えは、「決算短信公表後に会社の内部統制が有効に機能したことによって発見された虚偽記載を訂正し、有価証券報告書が適正に開示されるのであれば重要な欠陥には該当しない」とあります。あたりまえだよね~と感じます。

さらに、内部統制について有効と記載した内部統制報告書を有報と一緒に提出した後に、財務報告に記載した数値に誤りがあったので訂正報告書を訂正した場合、内部統制報告書についても訂正報告書を提出しなければならないのかという問71。

「有報の訂正報告書が提出されたことをもって、ただちに内部統制について有効とした内部統制報告書の訂正報告書を提出しなければならないということにはならない。訂正報告書を提出する原因となった誤りを検討し、当該誤りが内部統制評価範囲内であるところの不備から生じたものであると判断されれば内部統制報告書の訂正報告書を提出する必要があるが、適切に決定された評価範囲の外から重要な欠陥に相当する事実が発見された場合には、内部統制報告の訂正はいらない。」というのが回答となっています。

そのほか、読んでいくと監査人と内部統制評価段階で見解の食い違いがでて、それが質問につながっていったのではと想像されるものが多く、大変興味深いです。

この質問を眺めていると、監査人の質もいうこともずいぶん一定していないということなのであろうと想像できます。ということは、内部統制評価のフェーズにおいてしっかりと頭を使い、実施基準のスピリットにのっとって監査人との協議を重ねていくことが、実務が安定するまで重要であるということでしょう。

また、「監査・保証実務委員会報告第82号」(実務指針第82号とよばれている)の改訂も報告され、こちらも重要な欠陥の判断についてのいくつかの論点について明確な方針を出しています。

例えば、不備が重要な欠陥かどうかを判断する上で、金額的影響について当該不備の潜在的影響とは「当該不備により影響を受ける最大の金額をいい、不備の識別された内部統制により影響をうける財務諸表の勘定残高や取引種類の取引総額に基づき算定する。」と規定しました。

また、不備が複数存在する場合について、「同一の勘定科目や開示項目ごとに潜在的影響額を合算する」が、「同一の勘定科目は、売上高、売掛金、棚卸資産等の財務諸表項目レベルであり、財務諸表項目が複数の細目科目で構成されている場合にそれら細目科目ごとに不備を合算することは想定されていない」とされたこと、不備の影響額は原則として絶対値を用いて合算することなど、重要な指針が示されています。

実務指針第82号は重要な欠陥の判断についてまことに重要な改訂であり、実務担当者は一読される必要があると思われます。

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