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2009年2月 6日 (金)

米国連邦倒産法チャプター11の概要

米国経済が悪くなったせいで、米国連邦倒産法チャプター11に対する関心が再び高まってきています。自分の復習のためにも、手続について簡単にご紹介します。

チャプター11は、DIP型再建手続きです。DIP型というのは、Debtor in possessionの略ですが、要するに倒産会社の経営陣がそのまま残り、再建計画を提示し、そのイニシアチブで再建をはかるという手続です。破産裁判所(日本と違い特別な連邦の裁判所です)は、債務者(=倒産会社)の申立てがあれば開始決定することはなく手続が始まります。その効果として、自動停止効といって、債権者による訴訟の開始またはその継続、判決の執行、担保権の設定、対抗要件の取得、担保権の実行、督促状の発送、相殺等、債権回収に関するほぼすべての行為が禁止されます。

日本の民事再生法では監督委員が、会社更生法では調査委員、監督委員が裁判所によって選ばれ、中立的な立場から、倒産会社の再生計画の承認・更生計画認可にいたるまでチェック機能をはたします。これに対して、チャプター11の場合には、管財人は選任しないのが原則であり、その場合、裁判所は一定の場合に調査員を選任することができるとされているものの、調査員を選任しないことも多々あるようです。裁判所の関与の度合いは、日本にくらべると弱く、事件は、債務者=破産会社が、無担保債権者で作る債権者委員会と相談しながら主導して進んでいくという構造をとっています。

債権者委員会は、①手続の運営に関して債務者=破産会社の相談にのること ②管財人・調査員がいない場合に債務者の財務、営業内容・計画案の立案等に関する事項を調査すること ③計画案の立案に参加し、立案された計画案について債権者等に対して助言をなし、債権者等の意見を裁判所に提出すること、管財人・調査員の選任を請求すること ④債権者の利益に適合するその他の役務をなすことといった職務権限を有しています。

委員会には、無担保債権者委員会、担保付債権者委員会、株主委員会があり、無担保債権者委員会は設置が必要、その他は任意に設置ということになっています。

委員会は通常は7大債権者(又は7大株主)が任命されます。しかし、7大債権者(又は7大株主)が競業者であるなど特別の利害関係があるために委員とするのが相当でない場合や、委員としてその責務を果たす意思を有しない場合などには、それ以外の債権者や株主から委員を任命することがあります。

したがって、債権者委員会が、全債権者の利益のために活動することが所与の前提とされており、このため、債権者委員会が弁護士や会計士、FAなどの専門家を雇うことは通常行われていることです。むしろそれをしないと、通常は債権者委員会の職務権限は行使できないでしょう。これら専門家を雇うには、過半数の委員が出席した委員会において決定することができ、また裁判所の承認が必要ですが、その報酬や費用の金額は破産裁判所によって決定され、管財費用として財団=倒産会社の資産から優先的に支払われることになっています。

計画案の承認は各クラス(委員会)単位で行われます。出席債権者の過半数で、かつ投票した債権額の3分の2以上の場合に承認となり、これを各債権者委員会すべてに要求します。株主については出席株主の株式数の3分の2以上が要求されています。承認された計画案について、破産裁判所は、計画案が法定の要件に適合するかどうかを審査し、これに適合するときは計画案を認可します。

その要件として重要なものとして、清算価格保障の原則と公正・衡平原則があり、前者は清算したときの配当のほうよりも計画案のほうが配当が高くなければならないという原則、後者は債権者を平等にあつかうことという原則ですが、後者については少なくとも1つのクラスが受託しており、他のすべての要件を満たしている場合には、利害関係人の申立てにより裁判所が認可することができるという例外が定められています。この例外をクラムダウンといっています。

このような手続ですから、裁判所に手続の透明性の確保を求めるのはチャプター11の手続構造にあわないということです。重要なのは債権者委員会で、透明性確保のためには、債権者委員会が活動すべきなのです。計画案が会社の資産譲渡であるならば、それは債権者のために高値で売却すべき義務を債務者が負っているのであり、債権者委員会はまさにそれを実現するため、資産価値の評価の適正性を確保するための活動をすることが期待されています。なお、資産売却については破産裁判所の許可が必要です。

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