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2009年2月24日 (火)

内部統制報告書の記載内容は法定記載事項を満たしてるだけでいいか?(4)

内部統制報告書の記載内容についての第4回目は、(エ)の「重要な評価手続が実施できなかったため、内部統制評価結果を表明ができない」場合です。この場合には、実施できなかった重要な評価手続と、その理由を記載すべきとされています。

評価手続のうち、「重要な評価手続」に絞っているのは、評価手続で重要なものさえ実施できていれば、評価はできるはずという前提があるのでしょうか。しかし、評価手続の中で何が重要で何が重要でないかという区別は、そうそう簡単にはできません。実施基準の添付参考図2及び参考図3に要領よくまとめられている評価手続をみると、どの段階も適切な評価を行うための一連の業務プロセスとなっているからです。そうすると、ここでいっている「重要な評価手続」というのは手続のどの部分が重要かどうかを区別しろといっているのではなく、「それが実施できないと評価することができない」という意味で重要な手続が実施できないときには、その評価手続を記載してください、という趣旨と解釈するのが、正しいように思われます。

ところで、「重要な評価手続」が実施できなかった理由を記載すべきであるとされているのは、評価手続が実施できない理由には、さまざまな原因が考えられるからではないかと思います。すなわち、評価できない理由には、①評価する経営者側の人的資源が不足している、②評価に着手したが構築過程に発見された不備が多く、その不備の是正に時間がとられて評価の進捗が思い通りにならなかった、③重要な勘定に係る業務プロセスの評価方法などについて、会計監査人との事前協議で大きな見解の相違があり、その調整に時間がかかったため、評価手続が遅れた、④評価は進捗していたが、期末の押し詰まった時点で新たに重要な欠陥になることが懸念される不備が発見されたために、評価する時間がなかった、というような事例が考えられます。それを説明すべきであるという点が、ひとつあるでしょう。また、評価が終了しないため意見表明ができないというのは、やはり重大な事態であるという点も指摘できますね。ですから、評価できない理由は、わかりやすく具体的に記載することが望まれます。

内部統制報告のことを十分理解せずに、昨年の6月くらいから取り組みだした企業では、もしかしたら評価ができないということもありえると予想しておりますが、そういう企業は、淡々と6月からはじめて間に合わなかったと書くべきでしょう。その書き振りによっては、経営者の内部統制に対する考え方が完全に浮き彫りになるでしょうから、あとは市場が判断すればよいと思います。上記に例示した事例をみれば、経営陣の内部統制に対する姿勢がおのずとわかりますね。例えば①は全社的内部統制の重要な欠陥に当たる可能性がありますので、それを読めば、投資家は当該会社の内部統制の整備・運用状況に疑問を持つでしょう。その結果は市場の株価に現れるかもしれませんし、また株主総会での相当の質問や取締役や監査役の選任にも影響を及ぼすものとなるかもしれません。しかし、それこそが内部統制報告制度の意図したものではないでしょうか。つまり内部統制構築整備に意を払わない企業には、市場からの退場を促すというベクトルが働き出すという意味で。(そのかわり、内部統制構築・運用に意を払っている企業には、ポジティブな反応が市場からあるべきであると考えていますが、ぜひ現実にもそのような反応がでるといいのですが。)

ところで、私が社外監査役を務めている会社では内部統制をかなり前向きに取られていることをここでご紹介しましたが、その成果は相当現れていて、いままで見落としていた点が洗い出され、不備は是正され、会計監査人の評価も高いものとなっていますし、業務効率性の点についても改善が少しづつ進んできています。内部統制監査にあたる我々監査役の仕事も、内部統制評価がしっかりと進捗しているため、やり安くなってきていると思います。はっきりいって、内部統制評価がしっかりしていない会社の監査役に比べれば、安心感が違いますね。

会社の姿勢次第で、このように仕事もやりやすくなり、また会社運営上の他のリスク(法的リスク)についても注意がより払われるものになることが実感できるようになると、いまだに内部統制報告について文句を言っておられる方々がますます理解しにくくなっております。何かまちがっているのは内部報告制度ではなく、前向きに取り組めない会社の体質や、そういう担当者の考え方なのではないかとますます思えてきました。上場維持は当たり前ではなく、上場にふさわしくない企業は撤退することになってもしょうがないという「面舵いっぱい」の舵は、金融庁や証券取引等監視委員会はとっくの昔にきっているのですが、なかなかおわかりにならないようですね。

ただ、会社の体質や文化をかえることが1~2年でできると思うほうがまちがいで、PDCAサイクルがまわりだすまでは数年かかる企業もあるはずです。内部統制報告制度自体の評価は、数年たってからでも、遅くはないはずです。ただし、担当者と経営陣が頭を切り替えなければ、この制度は何の役にもたたないということになるでしょう。役に立たせるも立たせないのも、「あなた」次第ではないでしょうか。

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コメント

中堅企業のJ-SOX担当者のtonchanです。
 私のような素人がコメントするのもどうかと思いますが、せっかくですので一言だけ。

 実施基準に記載されているのは「評価の手順」と考えております。効率の良い内部統制を構築している実際に担当の立場では、少し「評価の手順」とは異なる手順になります。評価するためには評価できる内部統制が有ることが前提となります。
そこで、「キーコントロール」と「補完的な統制」というような表現になると思います。そこで現状の統制を洗い出す(AS IS)アプローチになっていくのではないでしょうか?
本来はリスクアプローチなのですから、リスクを効率的に防止できる統制をはじめに考えて設定していく(TO BE)の方が良いのではないかと考えております。

 本来の「内部統制報告書」ではこのような違いを示すことが重要だと思います。投資費用も記載して投資効率まで表示すると良いかもしれません。

担当者のひとりごとで申し訳ありません。日々、このような疑問を抱えながら仕事をしている現状を少しお話してみました。

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