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2009年2月に作成された記事

2009年2月24日 (火)

内部統制報告書の記載内容は法定記載事項を満たしてるだけでいいか?(4)

内部統制報告書の記載内容についての第4回目は、(エ)の「重要な評価手続が実施できなかったため、内部統制評価結果を表明ができない」場合です。この場合には、実施できなかった重要な評価手続と、その理由を記載すべきとされています。

評価手続のうち、「重要な評価手続」に絞っているのは、評価手続で重要なものさえ実施できていれば、評価はできるはずという前提があるのでしょうか。しかし、評価手続の中で何が重要で何が重要でないかという区別は、そうそう簡単にはできません。実施基準の添付参考図2及び参考図3に要領よくまとめられている評価手続をみると、どの段階も適切な評価を行うための一連の業務プロセスとなっているからです。そうすると、ここでいっている「重要な評価手続」というのは手続のどの部分が重要かどうかを区別しろといっているのではなく、「それが実施できないと評価することができない」という意味で重要な手続が実施できないときには、その評価手続を記載してください、という趣旨と解釈するのが、正しいように思われます。

ところで、「重要な評価手続」が実施できなかった理由を記載すべきであるとされているのは、評価手続が実施できない理由には、さまざまな原因が考えられるからではないかと思います。すなわち、評価できない理由には、①評価する経営者側の人的資源が不足している、②評価に着手したが構築過程に発見された不備が多く、その不備の是正に時間がとられて評価の進捗が思い通りにならなかった、③重要な勘定に係る業務プロセスの評価方法などについて、会計監査人との事前協議で大きな見解の相違があり、その調整に時間がかかったため、評価手続が遅れた、④評価は進捗していたが、期末の押し詰まった時点で新たに重要な欠陥になることが懸念される不備が発見されたために、評価する時間がなかった、というような事例が考えられます。それを説明すべきであるという点が、ひとつあるでしょう。また、評価が終了しないため意見表明ができないというのは、やはり重大な事態であるという点も指摘できますね。ですから、評価できない理由は、わかりやすく具体的に記載することが望まれます。

内部統制報告のことを十分理解せずに、昨年の6月くらいから取り組みだした企業では、もしかしたら評価ができないということもありえると予想しておりますが、そういう企業は、淡々と6月からはじめて間に合わなかったと書くべきでしょう。その書き振りによっては、経営者の内部統制に対する考え方が完全に浮き彫りになるでしょうから、あとは市場が判断すればよいと思います。上記に例示した事例をみれば、経営陣の内部統制に対する姿勢がおのずとわかりますね。例えば①は全社的内部統制の重要な欠陥に当たる可能性がありますので、それを読めば、投資家は当該会社の内部統制の整備・運用状況に疑問を持つでしょう。その結果は市場の株価に現れるかもしれませんし、また株主総会での相当の質問や取締役や監査役の選任にも影響を及ぼすものとなるかもしれません。しかし、それこそが内部統制報告制度の意図したものではないでしょうか。つまり内部統制構築整備に意を払わない企業には、市場からの退場を促すというベクトルが働き出すという意味で。(そのかわり、内部統制構築・運用に意を払っている企業には、ポジティブな反応が市場からあるべきであると考えていますが、ぜひ現実にもそのような反応がでるといいのですが。)

ところで、私が社外監査役を務めている会社では内部統制をかなり前向きに取られていることをここでご紹介しましたが、その成果は相当現れていて、いままで見落としていた点が洗い出され、不備は是正され、会計監査人の評価も高いものとなっていますし、業務効率性の点についても改善が少しづつ進んできています。内部統制監査にあたる我々監査役の仕事も、内部統制評価がしっかりと進捗しているため、やり安くなってきていると思います。はっきりいって、内部統制評価がしっかりしていない会社の監査役に比べれば、安心感が違いますね。

会社の姿勢次第で、このように仕事もやりやすくなり、また会社運営上の他のリスク(法的リスク)についても注意がより払われるものになることが実感できるようになると、いまだに内部統制報告について文句を言っておられる方々がますます理解しにくくなっております。何かまちがっているのは内部報告制度ではなく、前向きに取り組めない会社の体質や、そういう担当者の考え方なのではないかとますます思えてきました。上場維持は当たり前ではなく、上場にふさわしくない企業は撤退することになってもしょうがないという「面舵いっぱい」の舵は、金融庁や証券取引等監視委員会はとっくの昔にきっているのですが、なかなかおわかりにならないようですね。

ただ、会社の体質や文化をかえることが1~2年でできると思うほうがまちがいで、PDCAサイクルがまわりだすまでは数年かかる企業もあるはずです。内部統制報告制度自体の評価は、数年たってからでも、遅くはないはずです。ただし、担当者と経営陣が頭を切り替えなければ、この制度は何の役にもたたないということになるでしょう。役に立たせるも立たせないのも、「あなた」次第ではないでしょうか。

2009年2月20日 (金)

内部統制報告書の記載内容は法定記載事項を満たしてるだけでいいか?(3)

内部統制報告書の記載内容についての第3回目は、(ウ)の「内部統制に重要な欠陥がある」との無効意見の場合です。

この場合には内部統制が有効でないことのほかに、その重要な欠陥の内容及びそれが事業年度の末日までに是正されなかった理由を記載することを、内部統制府令は要求しています。また、付記事項として事業年度の末日後、内部統制報告書の提出日までに記載した重要な欠陥を是正するために実施した措置がある場合は、その内容を記載しなければなりません。

重要な欠陥の内容の記載は、内部統制報告でもっとも重要なものであり、虚偽記載罪(金商法197条の2)の構成要件が「重要な事項につき虚偽の記載がある」ことから、虚偽=真実と違う記載をすれば犯罪となるべき事項であることは疑いをいれません。ただ、「重要な欠陥」は、「不備」を金額的な影響及び質的な影響という評価のふるいにかけて残ったものですので、価値判断をへています。それがなぜ重要な欠陥になるのかが具体的に理解できることが投資家の投資判断には便利なのではないでしょうか。そうすると不備としてはこのようなものであって、その影響はかくかくしかじかなので重要な欠陥である、というような書き方が望ましいと思います。

ところで、なぜ付記事項に評価基準日以後実施した措置を記載させるのでしょうか。これは内部統制報告が開示制度でありながら、最終的には内部統制構築をさせることを目標にしているからでしょう。PDCAサイクルが企業の中で機能しているならば、重要な欠陥がありながら、有報と一緒に提出する内部統制報告書の提出日まで何もしないということは通常考えにくいと思われます。(もっとも重要な欠陥が複数あった場合に、そのどちらを優先して是正するかは経営判断の問題と考えておりますので、限定されたキャパシティのなかで、一つについて是正措置を開始して他方については手がつかないということも、理屈の上では考えられますが、すべて放置するということは内部統制のPDCAが機能している限りはありえないでしょう。)だから、何も実施した措置がないということになれば、投資家の経営陣の内部統制についての取組みの評価は一段とからくなり、投資を控えるという行動もありうるということになります。

その観点から考えると、PDCAサイクルが回っているかを判断するには、それぞれの要素についての記述があるほうが望ましいわけです。つまり、重要な欠陥が発生した原因は何か、その原因に対しての対策は策定したか、その対策はどのようなスケジュールで実施されていくか、という点がわかれば、その会社の内部統制のレベル感までわかります。ですから、投資家の投資判断の用に供するという観点及び内部統制構築に向かって内部統制報告書を本当に役にたたせようという観点からすれば、このレベルまで書くことが非常に望ましいと思われるのです。

2009年2月19日 (木)

内部統制報告書の記載内容は法定記載事項を満たしてるだけでいいか?(2)

しばらく時間があいてしまいましたが、内部統制報告書の記載内容について書いておきたいと思います。

前回の記事では、南村報告は、(ア)のケースのレポートであって、(イ)(ウ)(エ)のケースについての視点から書かれているものではないので、これらの場合について記載をどうするかは別に検討すべきです、と書きました。(ア)とは「財務報告に係る内部統制は有効である。」と記載すべき場合(以下、「全面的有効意見」とよびます)、(イ)とは「評価手続の一部が実施できなかったが、財務報告に係る内部統制は有効である。」及び実施できなかった評価手続と実施できなかった理由を記載すべき場合(以下、「限定的有効意見」とよびます)、(ウ)とは「内部統制に重要な欠陥があり、財務報告に係る内部統制は有効でない。」及びその重要な欠陥の概要と期末日までに重要な欠陥が是正されなかった理由を記載すべき場合、(以下、「無効意見」とよびます)(エ)とは「重要な評価手続が実施できなかったため、内部統制評価結果を表明ができない。」及び実施できなかった重要な評価手続とその理由を記載すべき場合(以下、「評価不可能意見」とよびます)です。

本日は(イ)のケースの話です。

内部統制府令は評価の範囲に関して、評価範囲及び当該評価範囲を決定した手順、方法等を簡潔に記載することを要求していますが、「やむを得ない事情により、財務報告に係る内部統制の一部の範囲について十分な評価手続が実施できなかった場合には、その範囲及びその理由を簡潔に記載すること」としています。これは評価範囲の話ですね。

他方、限定的有効意見については、評価手続の一部が実施できなかったというもので、これは評価範囲とは別の話です。この場合は実施できなかった評価手続及びその理由を書くことを、内部統制府令は要求していますが、一部が実施されていないにも関わらず有効判定をしているのですから、なんでそうなるのかを投資家が理解するためには、予定されていた評価手続の中で、実施できなかった評価手続がどういう意味を持つのかが理解できないと、当該評価が正当なものなのかわからないということになります。

したがって、投資家の理解の便宜に供する視点からみると、実施できなかった評価手続が財務諸表に与える金額的影響の評価や質的な影響の評価をどの程度左右するのかを記載して、なぜ評価手続が一部実施できなくても限定有効意見を形成できたのかの解説をすることが望まれるではないかと思います。

2009年2月12日 (木)

DIP型会社更生申立て、早くも第3号で、ふと思うこと

NASDAQ上場会社のフラッシュメモリ製造会社Spansion Inc.の日本法人Spansion Japan株式会社が会社更生法適用の申請を東京地裁民事第8部に行いました。Spansion Japanのリリースをみると保全管理命令が発せられていないので、DIP型会社更生の申請であると思われます。負債総額は約741億円、申立代理人は渡邊光誠先生で、これも倒産法のベテランで、大体、DIP型会社更生申立代理人は私の面識のある方々ばかりです。詳細はこちらをご覧下さい。

民事再生ではなく、どんどんDIP型会社更生が申し立てられていくところをみると、これからの大型倒産はDIP型会社更生が主流になるのではないかと思われるほどの勢いですね。

強力な手続である会社更生手続下で管財人的地位にあたる経営者の適格性については、すでに前回のエントリーで考えを述べておりますが、さらに手続開始後の更生計画の策定については、どのように透明性、公正性を確保していくのでしょうか。

DIP型における経営者の地位は、全債権者のために公正な取扱いを行う義務があるとはいえ、倒産会社の経営陣が残るわけですから、倒産会社と更生債権者及び更生担保権者、あるいは債権者間の利益が鋭く対立するような状況がでてきた場合には、利益調整が旧経営陣ではうまくできないという状況は生じないでしょうか。経営陣は、倒産にいたるまで主要債権者と必ずしも友好的な関係を維持してきたわけではないでしょうから、首尾よく4要件を満たして開始決定がでたとしても、利害の調整について、経営陣と債務者代理人が債権者と交渉してうまくまとめていけるかどうか、限界もありそうな気がします。。。。。また、利害が対立していて非常に調整が難しいときに、監督委員兼調査委員はどの程度調整に動けるのでしょうか。実務的に大変難しいところであります。

管財人がどれほど重要なのかについて、会社更生の大ベテラン、清水直先生はその著作「プロが語る企業再生ドラマ」でこう述べられております。

「如何にして企業を再生させるかについての経営的・会計的素養も必要とされるが、何よりも大切なことは、企業再生に対する熱意と創意工夫する姿勢、そして関係者をして喜んで協力させるシステムを如何に構築するかについて、人間味をもって考えることである。」

「企業再生の成否は、企業再生の現場で陣頭指揮をとって人間集団を動かし得る人物を、企業再生の執行者として選任し得るか否かにかかっている。会社更生では管財人人事が全てを決定するといっても過言ではない。ところが、企業を動かして利益をあげつつ、あらゆる角度から見て、公正・衡平な措置を手際よく行い、複雑に絡み合った利害関係を調整していくということは、言うは易く、行うは難しの例で、これをこなし得る人材はそうそういるものではない。」

清水先生のこの著作には私も大感激いたしましたが、会社更生手続の第一人者の意見であるだけに、DIP型会社更生手続で従来の経営陣の能力をどのようにみていくのか、また、かりに監督委員兼調査委員が経営陣についてOKの意見を提出し、裁判所が開始決定を出したとしても、その後の調整過程で利益対立状況がでてきたときはどうなるのか、など疑問がつきないところであります。

プロが語る企業再生ドラマ プロが語る企業再生ドラマ

著者:清水 直
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2009年2月 9日 (月)

今宮純分析:佐藤琢磨が選ばれなかった理由

F1ジャーナリストの今宮純さんが、「なぜトロロッソは佐藤琢磨を選択しなかったのか? その理由とは…。」という記事を書いているのを見つけました。

非常に冷静な分析です。やはり私と同じように、ニコラ・ドッドが動いてひっぱてきた可能性のある取引が記載されています。これが現実なのですね。

でも、私が感動するのは、やはり最後の部分です。

「日本最強ドライバーをこれ以上ひとりのまま放って置いてはいけない。日本スポーツ・パワーの衰退になりかねない。」

そうだよ!そうなんだよ!と、本当に思います。「あ~、デービット・リチャーズあたりが気が変わってHRF1買って、ニック・フライを追い出して、またバトン、琢磨で走らせてくれたらなぁ」、などと、絶対おきない夢をみたりして。。。今なら琢磨君は技量的にバトンを上回っていると思うのですが。

バトンも、道端ジェシカとロンドンでデートしている場合ではなかろうと思うんだけど。それにしてもHRF1の命運はどうなるのでしょうか?

2009年2月 8日 (日)

DIP型会社更生第2号の日本綜合地所の会社更生の申立

2月5日に東京地裁に会社更生手続開始の開始の申立をした日本綜合地所(株)は、その翌日の日経新聞朝刊の報道によると、DIP型会社更生手続の適用をめざすとのことです。

同社の「会社更生手続開始申立てに関するお知らせ」というリリースには、ひとことも触れられていないのですが、会社のホームページにアップされている監督命令兼調査命令をみますと、東京地裁民事第8部がDIP型を目指すときに発する雛形とほぼ同じ内容になっており、保全管理命令が発せられていないので、先のエントリーDIP型会社更生手続の運用の導入発表で解説した現経営陣がそのまま経営に残って再建をめざす型であることがわかります。

申立代理人の澤野正明先生は倒産法のベテラン、監督委員兼調査委員は倒産法の大御所である多比羅誠先生ですから、これまたDIP型会社更生手続第2号の布陣としてふさわしい顔ぶれです。ついこの間、DIP型会社更生手続の解説をされた(DIP型会社更生手続の講演会開催されるを参照)民事第8部の難波孝一判事は、論文発表後いろいろ質問がくるが、その前に事件をもってきてやっていこうと呼びかけられておりましたので、短期間に第2号案件が出てきたことには喜ばれているのではないかと思います(一般に、倒産実務家は、倒産が出ること自体を喜んでいるわけではないことをお断りしておきます。ただ実務家として、新たな手続構造で再建をするというチャレンジに燃え上がっているわけで、この点ご理解をいただければと思います。(^-^;)

日本綜合地所が果たしてDIP型会社更生でいけるかどうかは、開始4要件(前の解説を参照してください)が満たされているかどうかについての調査委員の調査報告をまってから決定されます。調査委員がgoといえば、ほぼまちがいなく開始決定がでるでしょう。調査命令によると、調査報告書の期限は平成21年2月19日までとなっていますから、申立の日から2週間で調査委員は調査して報告を上げなさいということです。発表されている難波論文では、標準的処理期間として事前相談に1~2週間、調査命令・監督命令及び弁済禁止の保全処分から開始決定まで3週間、更生計画案の提出まで10ヶ月となっており、この標準的処理期間をみると、申立日から開始決定まで3週間を予定しているので、2週間の調査期間は標準処理期間どおりといえるでしょう。

開始4要件のうちの第一は「現経営陣に不正行為等の違法な経営責任の問題がないこと」が必要とされていますが、調査命令兼監督命令をみますと、5(8)に代表取締役の西丸誠氏が管財人の職務を行うに適したものか、という調査項目がでてきますので、この調査は西丸氏について重点的に行われることがわかります。DIP型会社更生の際に調査命令兼監督命令の雛型では、5(9)に他の取締役が管財人代理の職務を行うに適したものであるかどうか、というのが入っておりますので、本件では、管財人代理の職務を行うべき取締役はないとみていいのであろうと思います。

さて調査ですが、法律違反の有無だけでなく、道義的な責任についてまで調査しているという話が研究会ではありました。そこで気がかりなのが、日本綜合地所の場合、バブル崩壊の兆しが見えていたのに強気で在庫を増やし、2008年度は不動産の市場動向を見誤って強気の販売計画を立て倒産に陥ったという傾向が強いという批判です(日経CNBCのMarket Eyeの2009年2月6日の「最高益更新」企業の脆さ」参照)。

もし、経営陣が完全に市場動向とは逆張りをしたときに、当該経営陣は上記の要件を満たせるのでしょうか。これは難問であります。情報分析もしないでそんな判断をしたものはだめでしょうが、市場動向判断は予測に過ぎず誤るということも大いにあるという考え方もあるでしょうし、経営判断には広い裁量が認められるべきだという考え方もあるでしょう。

ただ、私が指摘しておきたいのは、経営判断という裁量が認められるのは、あくまで、取締役が必要とされる情報をちゃんと吸い上げて、それを通常の注意を払って分析しているということが前提であるということで、それに疑いがあると、直ちに取締役の善管注意義務違反であるとはいえないものの、上記要件を満たさないという判断があってもしかるべきである、ということです。しかし、そのような疑いが仮にあったとしても、それのみをもって全面的に失格の理由とするのもこれまた早計のような気がします。例えば、それまで成功ストーリーを積み上げてきたのに、1回状況を見誤ってしまうというのは、経営者なら誰しもありそうなことです。したがって上記要件はやはり、本件申立人の名前にちなんで「綜合」判断となりそうです。

2009年2月 7日 (土)

佐藤琢磨と夢見たトロロッソのシート

佐藤琢磨君が、トロロッソのシート争いで敗れました。先シーズン、正ドライバーだったセバスチャン・ブルデーが引き続き乗ることになったわけです。

琢磨君が今回シートを獲得できれば、それは日本人選手が初めてF1ドライバーとしてあのクラブのような世界で認められたということを意味する快挙になると考えていました。琢磨君も、もともとホンダの強い押しでジョーダン、BAR、スーパーアグリと乗り継いできていたので、日本メーカーの保護のもとでシートが獲得できたのだといわれ続けていました。これは、今、ウィリアムスで走っている中島一貴選手にも言われていることで、彼の場合は、トヨタの育成ドライバーでウィリアムスがトヨタからエンジン供給を受けているという関係にあることから、そう評価されております。

両選手ともそんなことを言われる必要はない立派な実力のあるドライバーであると確信しておりますが、彼らと同等あるいはそれに近いレベルの実力のあるドライバーで強力なスポンサーがついていない者や、そのマネージャーがたくさんいるヨーロッパでは、とかく揶揄されやすいのが日本人選手であり、魑魅魍魎の住むF1ワールドでのいわば日本人ドライバーに対する偏見を打ち破るには、実力を見せつけるしかないわけであります。琢磨君がトロロッソにシートを得られれば、ひも付きでない実力でシートを勝ち取ったということになるわけで、それだけに私は、もし実現できれば、BARでインディアナポリスで3位に入賞したことと同じぐらいの快挙になると考えておりました。日本生まれ、日本育ちで米国でアメリカン・ロイヤーとして11年戦った経験のある私としては、自分の体験からも、何とか琢磨君には、誰もがうなづく実力のみの評価でシートを獲得してもらいたい、と強く願っておりました。

ブルデーがトロロッソが要求していた10億円のスポンサー持ち込みはできないと早々と宣言し、テストにおいてすべて琢磨君より遅く、トロロッソチーム内部では琢磨君が示した実力に対する高い評価が伝えられていたのに、ブルデーがシートを勝ち取った事情はあきらかではありません(もちろんブルデーもドライバーとして一流であり、立派な選手です)。しかし、彼のマネージャーは、フェラーリの大ボスだったジャン・トッドの息子ニコラ・トッドであります。トロ・ロッソがエンジン供給をフェラーリから受けていることを考えると、息子を通じてなんらかの取引、あるいは何か金銭的にチームが有利になるような取引がなされたのではないかという推測をすることも、あながち不合理ではありません。

しかしながら、たとえそういう取引があったとしても、それがF1という世界であり、それができなければ生き残れないという現実を受け止めなければなりません。チーム運営に巨額の費用がかかることを考えれば、チームマネジメントがさまざまな要素を考慮して決めることを一概に非難することは難しいと思います。特にいくつかのチームの存立さえ危ぶまれる今日の状況においては、誰もが全戦でグリッドからスタートさせることを第一に考えるでしょう。

私の携帯の待受は、琢磨君が乗ったトロロッソの雄姿でした。琢磨君と同じ夢を見つつけたこの5ヶ月、この待受をみながら、今年10月に鈴鹿を駆け抜ける琢磨君の姿を想像しておりました。彼の日本人F1ドライバーとしての偉業(特に、鈴木亜久里さんと並ぶ日本人2度目の3位、スーパーアグリにおけるアロンソをぶち抜いて達成したカナダGPの6位、スペインGP8位)を誇りに思いつつ、彼がさらにF1において活躍できることを願ってやみません。

2009年2月 6日 (金)

米国連邦倒産法チャプター11の概要

米国経済が悪くなったせいで、米国連邦倒産法チャプター11に対する関心が再び高まってきています。自分の復習のためにも、手続について簡単にご紹介します。

チャプター11は、DIP型再建手続きです。DIP型というのは、Debtor in possessionの略ですが、要するに倒産会社の経営陣がそのまま残り、再建計画を提示し、そのイニシアチブで再建をはかるという手続です。破産裁判所(日本と違い特別な連邦の裁判所です)は、債務者(=倒産会社)の申立てがあれば開始決定することはなく手続が始まります。その効果として、自動停止効といって、債権者による訴訟の開始またはその継続、判決の執行、担保権の設定、対抗要件の取得、担保権の実行、督促状の発送、相殺等、債権回収に関するほぼすべての行為が禁止されます。

日本の民事再生法では監督委員が、会社更生法では調査委員、監督委員が裁判所によって選ばれ、中立的な立場から、倒産会社の再生計画の承認・更生計画認可にいたるまでチェック機能をはたします。これに対して、チャプター11の場合には、管財人は選任しないのが原則であり、その場合、裁判所は一定の場合に調査員を選任することができるとされているものの、調査員を選任しないことも多々あるようです。裁判所の関与の度合いは、日本にくらべると弱く、事件は、債務者=破産会社が、無担保債権者で作る債権者委員会と相談しながら主導して進んでいくという構造をとっています。

債権者委員会は、①手続の運営に関して債務者=破産会社の相談にのること ②管財人・調査員がいない場合に債務者の財務、営業内容・計画案の立案等に関する事項を調査すること ③計画案の立案に参加し、立案された計画案について債権者等に対して助言をなし、債権者等の意見を裁判所に提出すること、管財人・調査員の選任を請求すること ④債権者の利益に適合するその他の役務をなすことといった職務権限を有しています。

委員会には、無担保債権者委員会、担保付債権者委員会、株主委員会があり、無担保債権者委員会は設置が必要、その他は任意に設置ということになっています。

委員会は通常は7大債権者(又は7大株主)が任命されます。しかし、7大債権者(又は7大株主)が競業者であるなど特別の利害関係があるために委員とするのが相当でない場合や、委員としてその責務を果たす意思を有しない場合などには、それ以外の債権者や株主から委員を任命することがあります。

したがって、債権者委員会が、全債権者の利益のために活動することが所与の前提とされており、このため、債権者委員会が弁護士や会計士、FAなどの専門家を雇うことは通常行われていることです。むしろそれをしないと、通常は債権者委員会の職務権限は行使できないでしょう。これら専門家を雇うには、過半数の委員が出席した委員会において決定することができ、また裁判所の承認が必要ですが、その報酬や費用の金額は破産裁判所によって決定され、管財費用として財団=倒産会社の資産から優先的に支払われることになっています。

計画案の承認は各クラス(委員会)単位で行われます。出席債権者の過半数で、かつ投票した債権額の3分の2以上の場合に承認となり、これを各債権者委員会すべてに要求します。株主については出席株主の株式数の3分の2以上が要求されています。承認された計画案について、破産裁判所は、計画案が法定の要件に適合するかどうかを審査し、これに適合するときは計画案を認可します。

その要件として重要なものとして、清算価格保障の原則と公正・衡平原則があり、前者は清算したときの配当のほうよりも計画案のほうが配当が高くなければならないという原則、後者は債権者を平等にあつかうことという原則ですが、後者については少なくとも1つのクラスが受託しており、他のすべての要件を満たしている場合には、利害関係人の申立てにより裁判所が認可することができるという例外が定められています。この例外をクラムダウンといっています。

このような手続ですから、裁判所に手続の透明性の確保を求めるのはチャプター11の手続構造にあわないということです。重要なのは債権者委員会で、透明性確保のためには、債権者委員会が活動すべきなのです。計画案が会社の資産譲渡であるならば、それは債権者のために高値で売却すべき義務を債務者が負っているのであり、債権者委員会はまさにそれを実現するため、資産価値の評価の適正性を確保するための活動をすることが期待されています。なお、資産売却については破産裁判所の許可が必要です。

2009年2月 5日 (木)

dbsbさんの池尾論文に対するコメント

デリバティブの専門家であるdbsbさんが、私のリクエストに応えて池尾論文について解説してくれました。こちらをご覧ください。↓
池尾教授の論考を読んで

いつもながらデータに裏付けられた分析はほんとに見事であり、クレジット・デリバティブとその市場について理解したいという方にはぜひ読んでいただきたいと思います。

dbsbさん、どうもありがとうございました。

ところでこの中で最後に触れられているデリバティブというと会計が胡散臭いと思っている人が多そうだ、という話ですが、私にとっては証券化や転売のために保有する不動産の評価に関する会計のほうがもっと胡散臭いような気がしております。なにせ、棚卸資産たる不動産は時価評価になじまないという常識があるようです。しかし、これは結構怪しいのではないかと思えます。

というのも私の親しい友人が勤める株式会社東京カンテイという会社は、物件価格や賃料の推移をかなりの頻度でアップデートし供給する不動産情報システムをもっているからです。会員にならないと利用できないのですが、これだけのデータベースを構築しているのには目を見張ります。これならば、不動産の時価評価も近い将来できるのではないか、と感じている次第です。

2009年2月 2日 (月)

内部統制報告書の記載内容は法定記載事項を満たしてるだけでいいか?(1)

前回の記事の最後に、大和総研の方が、内部統制報告書の記載内容について「十分な情報開示といえるか疑問が残る」とコメントしておられる点について、検討したいと思います。

「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」(名前があまりに長いですが、通常「内部統制府令」とよばれています)は、第4条で内部統制報告の記載事項を法定していますが、その条文の形式は、報告書の様式を法定し、内国会社については第1号様式、外国会社については第2号様式にしたがって内部統制報告書を作成すべきである、というふうになっています。

これにしたがって第1号様式、第2号様式とも記載事項を定めておりまして、以下の事項を書くことになっております。
①代表者の役職・氏名
②最高財務責任者がいる場合はその役職・氏名
③評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項(評価範囲の決定手順・方法など。評価対象の絞り込みを行っている場合には、重要拠点選定の指標と勘定科目等。十分な評価手続が実施できなかった場合は、その範囲及び理由)
④評価結果に関する事項
⑤付記事項(後発事象、期末後に実施された重要な欠陥の是正措置、米国基準の報告書の場合の記載方法など)
⑥特記事項(内部統制の評価について特記すべき事項がある場合には、その旨及び内容)

これらの事項のすべてについて、各様式の「記載上の注意」がさらに細かく内容について定めておりまして、上記の括弧内の記載は、そのうちから特に重要なものを掲げたものであり、詳細はこの「記載上の注意」を見なければなりません。

このうち③については、(ア)「財務報告に係る内部統制は有効である。」、(イ)「評価手続の一部が実施できなかったが、財務報告に係る内部統制は有効である。」及び実施できなかった評価手続と実施できなかった理由、(ウ)「内部統制に重要な欠陥があり、財務報告に係る内部統制は有効でない。」及びその重要な欠陥の概要と期末日までに重要な欠陥が是正されなかった理由、(エ)「重要な評価手続が実施できなかったため、内部統制評価結果を表明ができない。」及び実施できなかった重要な評価手続とその理由、を記載するとされています。

日経新聞1月28日の記事は、大和総研の方のコメントの前に「報告書は監査証明書と似た形で紙1枚程度の簡単なもの。」と述べておりますが、紙1枚程度にまとめよ、とはどこにも書いてありません。記載事項は法定されているので記載がなければ、金商法違反です。記載事項の記載があるものの、それをどの程度詳しく書くかという問題は、法令違反になるかという問題とは別の問題であり、その判断は当事者に任されているのです。紙1枚程度となっているのは、八田進二先生や町田詳弘先生の著書、あるいは内部統制評価の本で、記載事項をカバーした骨だけのサンプルフォームが乗っており、そのことをさしているのではないかと思いますが、これはあくまでサンプルです。

開示書類の基本は、投資家をミスリードしないこと、記載事項の記載がそれが要求されている趣旨に照らして判断するのに充分な情報を与えていることですから、内部統制報告書が記載として充分かどうかは、まずその観点から検討されるべきです。大和総研の方のコメントは、投資家の目からみて、サンプルフォームの記載で十分なのか、という疑問なのでしょう。サンプルフォームは記載事項をつなげて書いた、いわば骨だけのものなので、そう感じるのも無理はないですが、法定要件は満たしていると思います。では、投資家の判断に供するのに充分役にたつのかどうかという疑問はどうでしょうか。

日本で最初に内部統制報告書を提出した中小企業信用機構株式会社の法務監査部長の南村博二さんは、週刊経営2899号に報告をよせておられます。この中で、南村さんは、内部報告書について、冗長な解説や感情を表現しないことに注意すべきだと指摘しています。同社はドラフトでは、「なぜその業務プロセスを選んだか、なぜその勘定科目が大切だとしたのかについて様々な点から論理立てて解説し、その上でテスト結果について解説し、代表者がなぜ当社の内部統制は大丈夫であるとの心証が得られたのかについて筋道を立てて説明をした」ようですが、やめてシンプルな内部統制報告書を提出したそうです。

その理由は2点ありまして、「網羅性を完璧に追及すればするほど、たった一つの見逃しや説明不足があってもその点がクローズアップされ、監査法人から不完全とされるリスクが高まるという現実」があること、「最も大切な部分だけを取り上げその点について詳しく論及はするが、その他の点については内部統制上重大な欠陥があるとの心証が形成されるにはいたらなかったとの記載であれば、記述されていない仔細な部分で仮にもしテスト不足という目に見えない瑕疵が存在したにせよ、問題にはされないであろうという現実」があること、が指摘されています。

たくさん書けば書くほど同じくらいの記述をしないと網羅的でなくなるという点はもっともであるし、書きすぎて内部統制監査において報告書の記載が不足しているとされる可能性があるならば書かないほうがいい、という考え方は理解できます。

特に、投資家にとってみると、内部統制に重要な欠陥があるかどうかが重要であるかどうかの結論部分が最大の関心事であるし、内部統制報告制度はまさに問題があれば開示しろという制度なので、それがないという経営者の評価について、監査人が無限定適正意見をつけている場合ならば、内部統制報告書に記載事項を詳細に述べさせる必要もないというのは、納得できる考え方ではないでしょうか。(ただし、私は内部統制監査の結論如何で内部統制報告の書き方が変わるべきだといっているわけではありません)。また、仮に内部統制監査報告書が限定付適正意見や不適正意見であるときは、内部統制監査報告書に限定がついた理由や、不適正と判断した理由を述べなければならないので、そちらのほうで理由が具体的に述べられれば投資家としては判断しやすいでしょう。ですから法定記載事項の骨だけを書いた内部統制報告書でOKで、むしろ内部統制監査報告書のほうが投資家にとって重要ということになります。

ただ、南村報告は、上記(ア)のケースのレポートであって、(イ)(ウ)(エ)のケースについての視点から書かれているものではないので、これらの場合について記載をどうするかは別に検討すべきです。

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