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2009年1月29日 (木)

内部統制報告制度の導入は会計不正行為の発見に結びついているか?

1月28日の日本経済新聞の投資・財務欄に「内部統制報告制度ー社内の問題点あぶりだす、「不適切処理」公表相次ぐ」という記事が掲載されました。この記事によれば、法制が整った2006年から既に公表事例が増加し、2007年は22社、2008年は25社と増加してきたということです。

内部統制についてはブログの世界では不平、不満が蔓延しておりました。作業量の多さから、担当者の苦労は大変であることは理解できるのですが、私が監査役を勤めている会社はしっかりとした人員配置をしてコンサルタントからアドバイスも適時に受けながら、意欲をもって仕事をしており、私も監査役として担当部門と打ち合わせをしたりアドバイスをしたりで楽しく仕事ができています。こういう会社があることも考えると、本来のうらみつらみは、人員配置を怠り、内部統制を理解しない経営者にむけられてもいいように思うのですが、ブログワールドではちがっていました。

しかし、こうして内部統制制度の準備の過程で、あるいは内部統制制度をきっかけとして、財務報告の信頼性確保に対する意識が向上し、不正行為がこれだけ発見し公表されてきているということは、やはり内部統制制度自体の狙いや制度の仕組み自体には正しい(あるいは正しいという言い方が仕組みについては強すぎるというならば、大枠まちがっていない)といえるのではないでしょうか。

記事に紹介されている会社は一流企業と目されるところも多々含まれており、商社などは昔から内部検査は結構しているのに不祥事がでるということは、やはり内部統制制度導入が結果的にもたらしたものでしょう。導入準備で直接わかったものではないにしても、意識の高まりが背景にあったことはまちがいないでしょうし、成果があらわれ始めているといってもいいように思います。

記事ではIT企業幹部の、コスト対効果がみあわないという不平を紹介していますが、上場廃止のリスク、レピュテーション低下による株価の下落や売上げの減少、銀行融資の打ち切りのリスクといった様々なリスクが現実に発生したときのことを思えば、関連費用1億円はぜんぜん高いとは思えないのですが。こういう感覚をもっているならば、上場するのをやめれば、といいたくなります。MBOをして上場廃止にしていただいたほうが、投資家に迷惑をかける可能性もなく、また闇の勢力が近づいてくる可能性も低くなるでしょうから、宜しいのではないでしょうか(その際には、金融・商事判例1282号の『MBO(マネージメント・バイアウト)における株主権』を読んでいただいてMBOでも株主権によく留意してやっていただきたいです(笑))。他人から集めたお金で会社を運営し、自分も潤っているのに、こういうことをいう経営幹部の方は、どこか資本市場と投資家をなめているという感じがしてしまうのは私だけでしょうか。

ところで、記事の最後のほうに、大和総研の方が、内部統制報告書の記載内容について「十分な情報開示といえるか疑問が残る」とコメントしておられます。この点については、私は内部統制報告制度の目的・趣旨から、重要な欠陥があるときには、その原因・対策・対策の実施の計画などについて任意的な記載をするのが望ましい方向ではないかと考えていますが、この点についてはまた稿を改めて書きたいと思います。

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コメント

はずかしながら、この記事は読んでおりませんでした。(情報、どうもありがとうございます)先生の力強いご見解、励みになります。記事をいま読みましたが、私のブログでも以前とりあげた「三井物産」の件や「スギ薬局」の件なども例示されており、私も内部統制報告制度の効用は、次第に出てきているものと認識しております。
なお、会計士さんと仕事をしていて、いまもっとも問題が大きいと思われるのが「鹿島」の例にもあるように連結子会社の「重要な欠陥」ですね。監査役としても頭の痛いところで、果たして容易に是正されたと評価できるものかどうか、悩んでおられる企業もあるようです。
最後の「情報開示と内部統制報告制度」については、また先生とは若干見解が異なるかもしれませんが、このあたりは拙ブログでもとりあげてみたいと思っております。
今後ともよろしくお願いいたします。

TOSHI先生

さっそく投稿をありがとうございます。書き込みが少なくて寂しい思いをしておりましたので、アルファ・ブロガーの先生の書き込みは大歓迎です!

連結子会社の「重要な欠陥」については当ブログでも取り上げましたが、先生のご指摘のとおり難しいですね。一般的には、連結ベースで内部統制構築・運用を評価するので、親会社の内部統制に関する方針や評価の方法などについて子会社に指示がでていなければならないと考えられているようですが、子会社が上場している場合に、どの程度、親会社が指示をだせるのかという問題があり(すべて親の言いなりでは子会社に独立したガバナンスがあるのかがわからなくなりますよね)、また、子会社の重要な欠陥も親会社の財務諸表にどの程度の影響を与えるのかを評価しなければならず、本当に厄介です。

今後ともぜひ書き込んでいただければと思います。

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