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2009年1月25日 (日)

DIP型会社更生手続の講演会開催される

1月21日に、事業再生機構が、東京地裁民事8部の難波孝一判事によるDIP型会社更生手続の講演会を開催したので、行ってまいりました。論文で拝見した中身と一緒のご説明ももちろんありましたが、読んだだけではわからないところも解説され、判事の親しみやすいキャラもあり、また裏話的なものもでて、大変興味深く、かつ勉強になる講演会でした。

難波判事は、DIP型会社更生はクリードが第1号であることを明確に確認されましたが、会場には申立代理人の片山英二先生、監査委員兼調査委員の瀬戸英雄先生のほか、大口債権者である銀行の法務部の方、事業再生アドバイザーやアレンジャー業務に携わる方もかなりお見えで、DIP型会社更生に対する実務家の関心の高さが伺われました。

講演と質疑応答の中で、興味深かった点を以下に掲げます。

  • 会社更生事件の申立てが少ない原因

これについては、論文では経営陣の総取替えの運用と、法的整理手続を利用すれば事業価値が著しく毀損されるという懸念を掲げておられましたが、講演では、難波さんは予納金の金額の多さについても触れられておりました。すなわち従来、会社更生を申し立てるについては2千数百万円規模の予納金が必要であるが、それが高いの申立てがしにくいということが考えられるのではないかと指摘されました。

もっとも、この金額さえ納められないようならば更生は不可能ではないかという方も多くいらっしゃるということです。予納金は低いほうが利用者側には使いやすいであろうというご指摘については、現役の裁判官から利用者へ配慮した発言をきいたのは、長年弁護士をしていて初めての経験で、非常に新鮮でした。なお、法人の民事再生手続の予納金は負債総額に連動しており、200万円から最高1300万円というものになっており、これに近づけるということなのでしょう。

  • DIP型会社更生手続の運用の要件の、保全段階での適用の考え方

前回12月28日のブログに書いた4要件のうち、特に1~3については申立て段階では必ずしも判然としていないであろうから、要件のうち、現経営陣に不正行為等の違法な経営責任の問題の存在が明らかでない場合には、保全管理命令を発令することなく現経営陣に経営権を留保するということでした。この点については論文にも解説されておりますが、監督委員兼調査委員の調査がポイントになるということです。

現経営陣に不正行為等の違法な経営責任の問題については、単なる違法行為だけではなく、道義的にみて問題となる行為があるかどうかも調査するのが実務ということです。経営陣に対する信頼感を損ねるような行為が経営陣にあれば、再建がうまくいかないことになりますから、法的責任のみならず道義的責任についても検討するのは当然といえば当然です。

監督委員兼調査委員の調査方法は、経営陣、従業員へのヒヤリング、会計士による財務諸表の分析・評価など後半におよびます。保全期間は、論文には原則3週間とされていましたが、調査について時間がかかることも考慮して事案ごとに検討していくということでした。

  • なぜ民事再生でなく、DIP型会社更生なのか

担保権を行使されてしまうと資金繰りがつかず、再建計画を遂行できない場合で、資産に多くの担保権がついており、民事再生では別除権協定が成立する可能性が乏しいようなケースでは、包括的禁止命令をだしてもらうことが必要になります。

民事再生では包括的禁止命令を発令するには担保権者の意見を聞くことが要件となっており、意見聴取をしないで行った包括的禁止命令は無効であるという判例がありますが、担保権者の意見を聴取していては担保権者が強制執行に走ってしまう可能性があるので、民事再生手続では上記のようなケースを処理するのは不可能であるのに対して、会社更生法25条の包括的禁止命令は意見聴取が必要がないとされているので、活用できるということでした。

また、民事再生が使われるのは経営の継続性があることで、これが事業の毀損を最小限に食い止められるメリットであるが、経営陣の交代は経営状態の把握に多くの時間を要し、迅速な再建計画の立案にとって大きな障害となるし、民事再生で別除権協定が不成立で民事再生計画が承認されずに失敗に終わると、別除権行使について個別に合意した債権者の債権は、それに引き続く破産手続の中で財団債権扱いとなり、債権者間の不平等がおきるとも指摘されました。

クリードのDIP型会社更生については、今のところ債権者からの抵抗感の表明はないということでしたが、その点について某銀行の有名な法務部長さんが、「銀行がもっとも懸念するのは債権の回収が非常に長期化するという点であって、手続の型よりはそちらのほうが問題」という剛速球発言をされ、会場は
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
という感じに包まれました。

手続の進行が民事再生なみのスケジュール感でできるかが、DIP型会社更生が定着するかどうかの一つの要素となりそうですね。金融危機がいまだ納まらないこの時期に、スポンサーがうまくつくのかどうかが事件処理を大きく左右しそうです。

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