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2008年12月24日 (水)

アーバンコーポレイションの事業再生計画案にみる財務情報の適正性への疑問

アーバンコーポレイションの事業再生計画案が発表されました。↓

http://www.urban.co.jp/news_contents.html?id=875

事業再生計画案の格子は以下のとおりです。

①極東証券の子会社であるFEインベストメントが中央三井信託銀行の支援を受けながら、受け皿となる株式会社を設立して、そこがアーバンの不動産流動化事業を譲り受ける。

②株式会社広島ベンチャーキャピタルが100%出資する広島アメニティ株式会社が、広島銀行の支援を受けながら、広島事業を譲り受ける。

③再生債権の弁済は、平成21年10月末日までに第1回弁済(再生債権の元本及び開始決定前の利息・遅延損害金の合計額が200万円以下の再生債権者に対しては全額、200万円超の再生債権者に対しては200万円+200万円を超える部分に対し7.5%の確定弁済)を実施し、第1回弁済実施後1年以内に原則として事業譲渡対象資産以外の全ての資産の売却を完了したうえで、第2回弁済(最終弁済)を実施する。弁済率は、第1回弁済と第2回弁済との総額で、最大で元本等に対して15%程度の見込み。弁済原資については、事業譲渡代金、その他の資産の売却代金および手元資金等を充当する予定。

①②の譲渡金額については発表がありません。民事再生手続は手続の透明性、公正性が命であり、債権者に配布される再生計画案にはきっと譲渡金額がでているのでしょうが、この会社については、倒産前からさまざまな芳しからぬうわさが流れ、総会屋とおぼしき人間が株主総会で社長を攻め続け、さらに最後は重大な不開示問題を引き起こしたことを考えると、他の事業主に引き継いで流動化ビジネスを続けて行くならば、譲渡代金くらいは株主に対して開示してもいいのでは、と思うのは私だけでしょうか。

特に民事再生の場合は、共益債権や優先債権に弁済したあとで、なお清算配当率を超える弁済が再生債権者に対して可能であるか否かを検討しなければなりません。清算配当率は15%以下という事前の説明があればともかく、15%という弁済率に納得する債権者と株主がどれだけいるのか疑問に思います。

アーバンが民事再生申立の日である2008年8月13日に発表している平成21年度3月期第1四半期の決算短信(すなわち本年4月1日から6月30日までの数値)によると、連結ベースでの数値は以下のとおりです。

流動資産 4380億600万円 固定資産 387億2700万円

資産合計 4769億2200万円

流動負債 2449億2800万円 固定負債 1535億8500万円

負債合計 3985億1400万円

資本金   190億7300万円 資本剰余金 211億5000万円 

利益剰余金 195億8500万円 自己株式 2億4300万円

その他で

純資産合計 784億800万円

民事再生申立までの1ヶ月と13日でどれくらい資産劣化が進んだのかわかりませんが、この数値からすると営業譲渡をして弁済率が15%ということになるというのが、私にはまったく理解ができません。

すなわち、この会社は倒産前1ヶ月ちょっと前の6月30日現在のB/Sでは、資産が負債を上回っている状態であったのに、その主要な資産を営業譲渡すると負債に対して15%しか配当できないというのです。

ところで、アーバンの発表によれは、2008年7月31日現在で、

負債総額は2558億3200万円

ということです。(http://www.urban.co.jp/news.htmlの2008年8月19日のリリース参照)

この15%といえば、たった383億7480万円です。倒産1ヶ月ちょっと前に4700億円を超えていた資産は実は約8%の価値しかなかった(正確にはその後の劣化も考慮しますが)というわけです。

いくら100年に一度の金融危機が襲ったといっても、すべての資産価値が6ヶ月間で10分の1以下になったなんてこと、どうやって説明するのでしょうか。4700億を超えていた資産が、しかも有機的一体的に譲渡されるのに、なんでこんな数値になるんでしょう。清算価値と継続価値の差はあるとはいえ、私にはこの数値の激しい乖離は合点がいきません。倒産だからしょうがないね、というレベルの問題ではないように思います。投資家は、本当に裏切られたという思いではないでしょうか。

企業が継続していることが有報の前提とはいえ、ちょっとの間で継続価値と清算価値との乖離がここまで激しいようなことがOKならば、およそ有価証券報告書とか決算短信なんて倒産の場面ではあてにならないということになりませんかね。この会社の財務諸表の信頼性をどう考えればいいのでしょうか。もっとも、監査人だったあすざ監査法人は、この四半期レビューについて民事再生申立てを理由に意見表明をしていません。そういえば、最近のモリモトのケースでは民事再生申立て前にレビュー意見の表明がされませんでしたね。

以下は一般論です。中小企業の破産ならば、粉飾はしばしば見られます。しかし、上場企業の民事再生手続では、再生申立のベースになる財務諸表をもとに再生計画が練られる必要があり、その適正性は再生手続の前提となっているはずです。倒産直前の財務諸表からみて、粉飾が強く疑われるケースでは経営者を交代させて民事再生をすすめるべきですし、損益計算書やB/Sとの乖離があまりに激しければ、監督委員は再生債務者の財産評定に依拠せずに独自に調査すべきでしょう(いずれにしても監督義務はありますし)。その場合に財産評定が適正なものであって、清算価値が再生計画案を下回ることは確かだということになれば、そもそも再生債務者の財務諸表は適正たっだのかが疑われるのであって、監督委員は役員の損害賠償査定事由の観点からもこの点について厳密な調査が必要ではないでしょうか。そうでないと、上場企業の再生でもっとも大きな影響を被る株主=機関投資家・一般投資家は納得できないと思います。

倒産では債権者に対する透明性と説明が重視されますが、公開市場で株式を取得した投資家も大きな影響を被るのですから、上場企業の再生手続の中では、投資家に対する配慮があってしかるべきであろうと思います。

継続中の事件について、あれこれいうのは控えるべきですし、私も粉飾があるのではないかと主張しているわけではないですが、直近の財務諸表との落差があまりにも大きい再生計画案であり、かつ15%という配当見込率という驚きの発表なのですから、きちっとした説明をお願いしたいと思う次第です。

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コメント

本当にその通りです!
株主が報われる事はないのでしょうか?
行政も見てみぬ振り・・・
日本て酷い国だったんですね

書き込みどうもありがとうございます。再生計画案について主要債権者がなんというかですが、広島銀行がサポートしているようなので主要債権者の中で疑問があるというところがでてくるのかどうか。。。。それだったら、せめてマスコミがどういうことでこういう再生計画案になるのか取材してくれるとありがたいんですがね。。。。。

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