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2008年12月22日 (月)

私立大学はまじめにデリバティブ取引の損失の原因に向き合う気はあるのか?

全国の主な私大18大学が今年3月の決算時に有価証券の含み損を抱えており、その合計額は計688億円に上るということが、読売新聞で報道されております。下記のリンクをご覧ください。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081221-OYT1T00041.htm

約225億円の含み損でダントツ1位になった慶応義塾大学について、この報道が伝えるところによると、収入を安定させる目的で株や投資信託、仕組み債などに分散投資しているといい、有価証券の取得額も1250億円と、23大学中で最も多いとのことです。慶応の広報室は「市場環境の変化で含み損が膨らんだ。長期保有が原則なので、現実の損失にはなっていない」と説明したというのですが、いったいこのコメントは何なのでしょうか。

私が思いますに、このコメントは、①保有有価証券やデリバティブ取引の時価会計の意味を否定しているに等しく、②信用リスクをとっているということの理解がなく、③適切なヘッジを行っていないことの言い訳にしかずぎず、④有価証券に多額の投資をするについてどのようなポートフォリオ構成を選択したのかの説明になっていない、という点において、無責任かつ認識の低さをあらわすものでしかありません。

このような発言がでれば、民間企業の株主は怒り出しますが、大学ならばそれも許されるというわけでしょうか。この発言が、慶応義塾大学の理事会の真意を表すものでないことを心から祈るものであります。

今回多額の損失を出してしまった私立大学の管理体制と理事会の認識については、文部省は徹底的に洗い出すべきでしょう。もっとも文部省にリスク管理がわかる人間がいるかどうかが問題ですが、その道の専門家を招集してでも行うべきです。

今回の金融危機では、専門家のファンドマネージャーを雇って運用していたハーバード大学は多額損失を出した責任をとらせてファンドマネージャーを解雇しているといいます。日本の大学は、専門家を雇うことさえしておらず、そもそも論としてそんな体制で多額の投資を行っていいのかということからして考え方を改めないと、本当に民事再生申立の悲劇を招くことになりかねません。大学当局者は真摯に今回の事態を招いた原因に向きあうべきです。

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