« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »

2008年11月に作成された記事

2008年11月26日 (水)

私立大学のリスク管理体制はなし?

ここ1ヶ月、破産事件の最後配当手続や、ISDAのConferenceや経営法友会での講演、弁護士会の仕事、現在進行中の金融商品取引法の本の執筆・編集に加え、シドニーでの対日投資セミナーのスピーカーとしての準備、スーパーGT最終戦(関係あるか?)が雨あられのごとく降りかかり、ブログにまったくご無沙汰してしまいました。誠に申し訳ありません。この間、世の中にはTOSHI先生のブログで評論されたようないくつかの興味深くかつ重大な事象がおきており、これを無視してはブログやっている意味もないと深く反省している次第です。

いくつも気になる出来事については、また後日あらためてコメントさせていただくとして、他のブログで取り上げられていない表記のトピックについて若干コメントいたします。

週刊文春11月27日号が、駒澤大学が、2008年3月決算で金利スワップで2700万円、通貨スワップで52億円の評価損を計上していると報道しています。決算書は、「決算日現在の評価損は満期日には解消する」という唖然とするような脚注がかいてあるとのことです。さらに有価証券の評価損は約82億円であるとか。

その記事に引用されている東洋経済刊「金融ビジネス」2008年秋季号は有価証券評価損ランキングを乗せています。それによると、1位は慶応義塾大学でダントツの225億円、2位が立正大学96億円、以下、3位駒澤大学82億円、4位千葉工業大学69億円、5位福岡大学36億円、7位東京経済大学21億円、8位関西学院大学20億円、9位大阪工業大学20億円、10位國學院大學20億円、11位創価大学18億円、12位東京理科大学16億円、13位流通経済大学16億円、14位九州経済大学14億円、15位関西大学13億円となっています。ちなみに我が母校早稲田大学は、25位5億4700万円です。

いったい、どうしてこんなにも大学が地銀・信用金庫なみの有価証券評価損をだしているのでしょうか。これらの大学、特に10億単位の評価損を出している大学のデリバティブ取引の含み損はいったいいくらあるのでしょうか。さらに、なんでこんな事態が2008年3月期に報告されているのに、大して報道されていないのでしょうか。

どう考えても大学のリスク管理体制はなっていないレベルでしょう。デリバティブ取引の時価評価損は駒澤大学だけで53億円です。ほかの大学がこれだけ有価証券損をだしているとすると、原因はただひとつ、レバレッジの高い投資に手をだしていた、つまり仕組債やヘッジファンド商品、長期の通貨オプション取引など、ハイリスクの商品にかなりの割合で投資をしていたとしか思えません。

いったい、誰が大きなリスクのある賭けに大学の資産の何分の一をかけていたのでしょうか。いったい誰がそれを承認したのでしょう。また、理事会はそれを適切に管理していたのでしょうか。そもそも評価損がここまで大きく報告された後、理事会はどんなアクションをとったのでしょう。いや、それ以前に、理事会は投資行動についてどんなガイドラインを策定していたのでしょうか。理事会が自分のところの運用体制について知らないではすまされません。

週刊文春によれば、駒澤大学の年間予算は400億円、デリバティブ取引の評価損は現在推定で100億円と報道されていますが、大学の歳入の実に4分の1がデリバティブ取引だけでふっとんだわけです。市場が予測できない、担当者が勝手にやった、投資銀行にだまされた、などという言い訳ができないレベルであきらかに異常な投資行動です。

大学は理事会、評議委員会というガバナンスの仕組をもっているはず。しかも理事者には功成し遂げた大学OB、しかも学者、経営者、政治家、弁護士、会計士、税理士がずらっとならんでいるのが通常です。それなのにこのような事態が発生しているのは、大学がまったくリスク管理能力に欠けているということを象徴している事態です。すくなくとも法学部のある大学はヤクルト事件くらいはわかっていなければ話になりません。経営学部のるところ、会計学を教えているところは内部統制がわかっていなければ、お話にもなりません。

有価証券含み損だけでなく、デリバティブ取引で大きな損失を抱えた大学の中には、存立の危機に瀕するところもでてくるでしょう。しかし、多数の学生を抱えており、倒産はあまりにも社会的影響が大きすぎます。学生になんら非難されるべき点はなlく、大学が適切なリスク管理体制をととのえないことにより被害をうけるとすれば、憤りを覚えます。大学の理事者たちは自分たちの理事としての責任を果たしたのか、厳しく己に問いただすべきであります。内部統制がはたらいているのかどうなのか、しっかりチェックすべきでしょう。

ところで八田進二先生、町田詳弘先生が教鞭をとる青山学院大学は2008年3月期では有価証券の含み益が49億円もあります。脱帽ですが、デリバティブ取引での損失は今日まであるのでしょうか。

« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »