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2008年10月 4日 (土)

米国金融安定化法成立で思う欧州と日本の対応

昨日、98年の金融危機の際にいっしょに仕事をしたクレジット・オフィサーの方と食事をしたのですが、日本の短期金融市場でさえ機能不全状態のようです。一週間先の資金決済のめどさえつかないというところに追い込まれている外国銀行もあるとか。

出し手の邦銀が昔いじめられたことの仕返しをしているというのは誇張としても、外銀に対する信用不安が増幅しているということでしょう。ノン・ジャパン・プレミアムが、金融安定化法案が下院で否決されてから加速して激しくなっているようです。日銀が3兆円も資金供給しているのにこれですから。まさに歴史は繰り返すということですが、今回のケースは98年が日本の市場というローカルな出来事だったのが、世界の主要市場でさまざまなことが起きているというスケールの大きな差があります。一日一日、新しいことが起こって目が離せません。

金融安定化法案が下院を通過し、大統領も署名し法律として成立しました。今後のシナリオとして、資産価値の更なる下落自己資本の毀損市場調達不可破綻というコースを経てしまう金融機関がでてくることはまちがいないと思いますし、また、不良債権売却自己資本の毀損というルートで破綻にいたる金融機関がでることも、まちがいないと思います。だから、こういう場合には、政策は二本立て、つまり、不良資産の公的資金による処理と、破綻しかけている銀行の公資金による国有化で対処しないと、システミック・リスクを回避することはできないと思います。金融安定化法はそこまでカバーしていないわけで、金融機能安定化法としては不完全です。しかし、今の米議会の様子ではめいっぱいということでしょうか。

この点、フォルテス銀行の100%国有化に踏み切ったベネルクス三国の対応とそうとうちがいますね。ヨーロッパ諸国のほうが資本注入を優先しているように見え、この政策のちがいの対比は非常に興味深いです。

民間資金による自己資本調達をさけぶ声は米国下院で相当ありましたが、非現実的でしょう。すでに数ヶ月前に資本調達に応じた投資家は大変な損失をこうむっています。公的資金の投入がないとこれ以上出てきそうもなさそうですね。しかも、長銀売却のときにやったような瑕疵担保条項といったような「おまけ」をつけてやらないと、民間はのってこないのではないでしょうか。ただ、米国の大手銀行はどこもかしこも大幅増資ですから、民間の金が本当にあるのかという心配もあります。

このような政策をうっても基本的には不動産市場における調整が終了しないと、回復軌道にはのらないでしょうね。景気もどんどんわるくなってしまうので、景気対策も必要になってしまいます。この部分は金利調整策も必要ですが、それは決定的ではなく、ある程度の財政出動が必要と思えます。ケインジアンの出番ですね。

視点をかえて、日本では、自民党が「金融市場の動向とその影響への対応に関するプロジェクト・チーム」を立ち上げ、また、民主党が金融機能強化法の2年限定復活などを柱とする対策案をまとめたという記事が、本日の日経新聞にでていました。

同じ日経に大手地銀の千葉銀行の業績予測下方修正が発表されていますが、リーマンで焦げ付いた債券50億円を含めた有価証券だけで144億円の損失を計上ということですので、千葉銀より規模の小さい地銀さんで傷ついてしまい、破綻懸念がでてくるところがでても不思議ではありません。しかし、それが金融機能を阻害するところまでいくかどうか。

たしかに準備をするにこしたことはないですが、日本が金融機能強化法を復活というニュースが流れると、市場が日本の金融システムにも懸念と受け取ってしまう可能性が高いと思いますし、局地的な地銀の破綻により日本の金融システムにすぐに危機が発生するとも思えないので、時期尚早という気がいたします。

しかし、今回のことで地銀再編には相当の弾みがつくでしょうね。地域経済のためにも強い地銀が必要ですし、政策立案担当者には重い課題が山積みです。

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コメント

下院通過したとは知りませんでした。
私は、否決された第一案自体が金融安定化に実効ある内実をもっていたのか、それから下院を通過させるためにどの程度修正されたのかに興味があります。

国民の反発+選挙が近いこと の作用効果で打算的な内容になっていないことを祈ります。

ともかく、これだけの金融危機にあっても 米国下院が一度否決し、国民にも根強い抵抗があること。これを、「国民の税金を金持ちの救済に使うな」という反発と矮小化することなく、「ハイエキアンをも納得させる内実をもっているか」 に注視し精査していきたいと思っています。やるからには実効を挙げなければならない。

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