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2008年10月 9日 (木)

内部統制の不備に「軽微な不備」を分ける実務的意義はあるか?

そろそろ内部統制ネタを備忘録ふうに書いておきたいと思います。ただし、先にエントリーした「頭出し予告編」とは別の、内部統制の「不備」についてです。

内部統制の「不備」と「重要な欠陥」について、日本の内部統制報告制度のもとでも、「軽微な不備」、「不備」、「重要な欠陥」を分ける考え方があります。便宜上、「三区分法」と呼ばせていただきます。

丸山満彦先生や、TOSHI先生がブログで紹介された旬刊経理情報No.1194に記事を載せられている國井康成先生が三区分法の立場のようです。

三区分法はUS-SOXのSignificant Deficiencyが実施基準の「不備」だとしています。(八田先生はSignificant Deficiencyを「重大な不備」と訳されており、これは実施基準では取り入れていないと断言されているのですが。)

三区分法ですと、重要な欠陥に至る判断のプロセス過程はこうなります。

発見事項→有効な補完統制がある→「軽微な不備」

発見事項→有効な補完統制がない→金額的重要性が高い→発見可能性が低くない→「重要な欠陥」

発見事項→有効な補完統制がない→金額的重要性が高くない→質的重要性が高い→発見可能性が低くない→重要な欠陥(質的重要性が高くないときは「軽微な不備」になり、発見可能性が低いと「不備」になる)

これ、私は納得のいかない考え方です。私は、三区分法は、多分US-SOX法の判断過程をそのまま日本の内部統制報告制度にもちこんでいるものであると思います。

そもそも「発見事項」というのが変ですね。不備の判断の前にいきなり補完統制の有効性を判断して有効ならば「軽微な不備」になるというのも、実施基準のどこを読んでもでてきません。

実施基準の考え方だとこうなるはずです。

統制目標を達成できない→不備がある→金額的重要性が高い→補完統制が金額的影響を低減していない→虚偽表示の発生可能性が高い→重要な欠陥

統制目標を達成できない→不備がある→金額的重要性が高い→補完統制が金額的影響を低減している→質的重要性が高い→虚偽表示の発生可能性が高い→重要な欠陥

また「軽微な不備」は、内部統制報告制度に関するQ&A問60に取り上げられていますが、それによると、監査人が内部統制監査の過程で不備を発見したときに、会社の適切な管理者に対して報告しなければならないとされている点に関して、影響が非常に僅少な「不備」を「軽微な不備」とよんで、会社との取り決めで報告の対象としないとすることができるとされているだけです。経営者の有効性判断の基準の話ではありません。

詳しくは、私の10月14日の『内部統制の評価と「重要な欠陥」』という金融財務研究会主催のセミナーで解説させていただきますが、三区分法はUS-SOXの考え方で、実施基準では取られていないし、実務的にも意味はないと思っております。また、三区分説は実務で余計な負担を発生させていないかが気になっております。というのも、八田先生によれば、三区分法は米国で多大な負担を発生させたので、実施基準は2区分、つまり「不備」と「重要な欠陥」にしたとされているからです。

八田先生、この整理でよろしいでしょうか?

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コメント

中堅企業で内部統制の担当をしておりますtonchanです。
 本来、このような格調高いブログにコメントさせていただく身分
ではありませんが、すばらしいブログに敬意を表するためにも
少し現場の立場でお話させていただきます。

 企業の担当者のミッションは、期末段階で「重要な欠陥」を残さ
ないということになります。監査法人の評価としては分かりませ
んが、まず「軽微な不備」でも「不備」でも企業の担当者としては
区分する意味はありません。
 少なくとも私にとっては「重要な欠陥」かどうかが重要なので、
それ以外は全て許容範囲となります。その意味でとも先生の
まとめには同意できるものです。

>統制目標を達成できない→不備がある→金額的重要性が高い
 J-SOXの企業の現場からすると「RCM」の作成時点で、以上
の場合には補完的統制を準備し内部評価を行っておくという対応
が重要だと考えます。

 以上、中堅企業の担当者としての私見です。今後も先生の格調
高いブログを楽しみにしております。

Tonchan

どうもありがとうございます。格調高いブログであることにいまひとつ自信がありませんが、おほめいただき、恐縮です。

現場サイドのご意見は貴重ですので、今後もいろいろとご意見をいただけると幸いです。

今、TOSHI先生のところですこしコメントさせていただいた子会社・関連会社の内部統制の重要な欠陥が親会社の内部統制評価にどんな影響を与えるかを整理しているのですが、これが難物でしてまだアップできておりません。ちかじかアップしますので、ぜひご覧になってください。

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