« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »

2008年10月に作成された記事

2008年10月23日 (木)

子会社・関連会社の内部統制の「重要な欠陥」と親会社の評価(1)

内部統制の「重要な欠陥」については、全社的な内部統制、決算・財務報告の業務プロセス、それ以外の業務プロセスのそれぞれについて評価するということになっていますが、子会社や関連会社の内部統制について「重要な欠陥」があると判断された場合に、親会社の内部統制にも重要な欠陥があることになるかという、ちょっと難しい問題があります。長くなるトピックですが。。。。。

まず、子会社について考えてみましょう。全社的な内部統制は、親会社を中心として連結ベースで整備し運用するということなので、企業集団全体を対象として評価の対象とするのが原則ですが、「内部統制報告制度に関するQ&A」問31では、実施基準II3(2)①の全社的な内部統制の形態は企業のおかれた環境や事業の特性等によってさまざまであり、企業ごとに適した内部統制を整備及び運用すべきだという考えを引いて、全社的な内部統制について親会社と差異のある取扱いを行うことも可能であるとしています。

問31の質問は、人材や組織の面で親会社ほど整っているわけではない子会社について全社的内部統制の「対応」に差が出てもよいかというものです。答えは差があっていいということなので、子会社の全社的内部統制のうち、少なくとも人材やリスク対応の組織について親会社ほどのレベルで整備できなくても認めるということなのでしょうか。

実施基準では、全社的内部統制の評価項目として42項目が例示されておりますが、たとえば統制環境の評価項目の中の「経営者は、信頼性のある財務報告の作成を支えるのに必要な能力を識別し、所要の能力を有する人材を確保・配置しているか」という項目の後段部分は「子会社の人材確保までは親と同じ基準で行うのは難しいので親会社の要員より能力が若干落ちてもやむをえない」という対応は許容されることになるでしょう。しかし、前段の「信頼性のある財務報告の作成を支えるのに必要な能力を識別し」という部分については変わらないと思われます。

こう考えると、42項目のそれぞれについて、何が違ってもいいのかをよく考えなければならないでしょう。ですからQ&A問31の回答は、あいまいすぎるように思います。

考え方としては、「親会社のような人材の確保と組織の確立は無理なのだから、できる範囲でやってください。子会社の規程類は親会社ほど整っていなくてもいいけれどある程度はないとだめだし、人材の知識経験は不足していても最低限のことはできる人はそろえてほしいし、また、組織は小さくてかつ兼任もやむをえないけど、期待される機能は果たせる程度にしてください。経営陣はそういう事情を考えながらも親会社の内部監査などを使ってうまくいっているかどうか意識してください。」、ということなのでしょう。

これは程度問題で、一定の基準など作りようがありません。各自が、自分の評価を説明できる準備をするしかないです。でも、こういう説明は金融業では金融庁相手にしょっちゅうやっていることなので、事業会社でできないというわけではないと思いますので、あまり悲観的にならずに(笑)。

また、実施基準は子会社の事業の特性にかんがみて、その子会社のみを対象とする全社的な内部統制の評価を行うことについて解説しています。

業務の性質によって全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制のどちらに重点をおくかが異なるとして、組織構造が相対的に簡素ならば全社的な内部統制の重要性が高くなることがあり、他方、社内の規定や方針、手続に準拠して行う業務の割合が高い子会社の場合は業務プロセスに係る内部統制が相対的に重要になるといっています。そして、その例として多店舗に展開する小売販売業務をあげています。うまい例ですね。

この例はわかりやすいのですが、42項目との関連で具体的に示してもらいたいですね。そうするともっと分かりやすくなるのですが。

全社的内部統制の評価は難しいと感じていますが、子会社の全社的内部統制評価はもっと難しく、ましてやそれが「重要な欠陥がある」と判断されると、親会社の内部統制にどう影響するかはもっと頭が痛いですね。

結局は、その子会社のグループにおける位置づけなどを考慮して、グループ全体からみて影響が少なければ親会社の内部統制評価には大した影響はないとすべきなのではないかと思います。

これに対して決算・財務報告に係る業務プロセスについては、親会社と子会社で評価基準を違えなければならない要素はあまりないでしょう。その他の業務プロセスについては、子会社の業務プロセスは影響度の大きさをみて評価対象となっているので、統制上の要点についての統制目標について実現できるかどうかという点や虚偽表示の発生可能性という点については、親会社と視線を変えず評価することになると思います。

今日はこの辺で失礼します。

2008年10月13日 (月)

日本GPにみるレピュテーション・リスクの回復の難しさ

本日、日本GPからゆっくりと帰ってまいりました。アロンソというドライバーの偉大さを非常に感じた一戦でした。それとともに、ハミルトンの第一コーナーの飛び込みの強引さに若さを感じました。

ところで、決勝前にINGルノーのパドッククラブから出てきたアロンソとちょうどばったりとあってしまいました。家内は目があったとたん、ぱちぱちと拍手をしだし、それにあわせて足早に歩くアロンソもぱちぱちと拍手をしだしました。私も拍手をしだしましたが、アロンソはあっという間にピットに繋がる階段へと去っていきました。1mの近距離からみたアロンソは本当にカッコよくて、風格さえ漂わせており、オーラで光輝いておりました。

さて、決勝が始まる前のメインスタンドをみて、がっかりしたのは、そこかしこに大きな空席が目立ったことであります。よくみると、第一コーナーのところにあるC1C2も満席ではありません。かつて日本GPでメインスタンドや第一コーナーに空席エリアがあるということなど見たことがありません。TV中継で見る限り、他のエリアでも空席が目立ったように思います。ヘアピンの自由席もずいぶんとゆとりがありました。

昨年度の運営については、ファンとマスコミから厳しい批判にあった富士スピードウェイでした。そのために20億円を投じて改修を行い、運営はきわめてスムースに終わったのですが、いかんせん、去年、会場でしんどい目にあったファンの一部は見放してしまったようです。関係者のご努力には敬意を表したいほど、立派なGPでしたが、一度傷ついた名声を回復することは、業種の如何をとわずいかに難しいことかとしみじみ思いました。

しかし、再来年にはぜひ満杯のGPにしたいものです。やはり、満席の日本GPが私は好きです。皆さん、来年の鈴鹿のあとの再来年は富士でお会いましょう!

2008年10月 9日 (木)

内部統制の不備に「軽微な不備」を分ける実務的意義はあるか?

そろそろ内部統制ネタを備忘録ふうに書いておきたいと思います。ただし、先にエントリーした「頭出し予告編」とは別の、内部統制の「不備」についてです。

内部統制の「不備」と「重要な欠陥」について、日本の内部統制報告制度のもとでも、「軽微な不備」、「不備」、「重要な欠陥」を分ける考え方があります。便宜上、「三区分法」と呼ばせていただきます。

丸山満彦先生や、TOSHI先生がブログで紹介された旬刊経理情報No.1194に記事を載せられている國井康成先生が三区分法の立場のようです。

三区分法はUS-SOXのSignificant Deficiencyが実施基準の「不備」だとしています。(八田先生はSignificant Deficiencyを「重大な不備」と訳されており、これは実施基準では取り入れていないと断言されているのですが。)

三区分法ですと、重要な欠陥に至る判断のプロセス過程はこうなります。

発見事項→有効な補完統制がある→「軽微な不備」

発見事項→有効な補完統制がない→金額的重要性が高い→発見可能性が低くない→「重要な欠陥」

発見事項→有効な補完統制がない→金額的重要性が高くない→質的重要性が高い→発見可能性が低くない→重要な欠陥(質的重要性が高くないときは「軽微な不備」になり、発見可能性が低いと「不備」になる)

これ、私は納得のいかない考え方です。私は、三区分法は、多分US-SOX法の判断過程をそのまま日本の内部統制報告制度にもちこんでいるものであると思います。

そもそも「発見事項」というのが変ですね。不備の判断の前にいきなり補完統制の有効性を判断して有効ならば「軽微な不備」になるというのも、実施基準のどこを読んでもでてきません。

実施基準の考え方だとこうなるはずです。

統制目標を達成できない→不備がある→金額的重要性が高い→補完統制が金額的影響を低減していない→虚偽表示の発生可能性が高い→重要な欠陥

統制目標を達成できない→不備がある→金額的重要性が高い→補完統制が金額的影響を低減している→質的重要性が高い→虚偽表示の発生可能性が高い→重要な欠陥

また「軽微な不備」は、内部統制報告制度に関するQ&A問60に取り上げられていますが、それによると、監査人が内部統制監査の過程で不備を発見したときに、会社の適切な管理者に対して報告しなければならないとされている点に関して、影響が非常に僅少な「不備」を「軽微な不備」とよんで、会社との取り決めで報告の対象としないとすることができるとされているだけです。経営者の有効性判断の基準の話ではありません。

詳しくは、私の10月14日の『内部統制の評価と「重要な欠陥」』という金融財務研究会主催のセミナーで解説させていただきますが、三区分法はUS-SOXの考え方で、実施基準では取られていないし、実務的にも意味はないと思っております。また、三区分説は実務で余計な負担を発生させていないかが気になっております。というのも、八田先生によれば、三区分法は米国で多大な負担を発生させたので、実施基準は2区分、つまり「不備」と「重要な欠陥」にしたとされているからです。

八田先生、この整理でよろしいでしょうか?

2008年10月 4日 (土)

米国金融安定化法成立で思う欧州と日本の対応

昨日、98年の金融危機の際にいっしょに仕事をしたクレジット・オフィサーの方と食事をしたのですが、日本の短期金融市場でさえ機能不全状態のようです。一週間先の資金決済のめどさえつかないというところに追い込まれている外国銀行もあるとか。

出し手の邦銀が昔いじめられたことの仕返しをしているというのは誇張としても、外銀に対する信用不安が増幅しているということでしょう。ノン・ジャパン・プレミアムが、金融安定化法案が下院で否決されてから加速して激しくなっているようです。日銀が3兆円も資金供給しているのにこれですから。まさに歴史は繰り返すということですが、今回のケースは98年が日本の市場というローカルな出来事だったのが、世界の主要市場でさまざまなことが起きているというスケールの大きな差があります。一日一日、新しいことが起こって目が離せません。

金融安定化法案が下院を通過し、大統領も署名し法律として成立しました。今後のシナリオとして、資産価値の更なる下落自己資本の毀損市場調達不可破綻というコースを経てしまう金融機関がでてくることはまちがいないと思いますし、また、不良債権売却自己資本の毀損というルートで破綻にいたる金融機関がでることも、まちがいないと思います。だから、こういう場合には、政策は二本立て、つまり、不良資産の公的資金による処理と、破綻しかけている銀行の公資金による国有化で対処しないと、システミック・リスクを回避することはできないと思います。金融安定化法はそこまでカバーしていないわけで、金融機能安定化法としては不完全です。しかし、今の米議会の様子ではめいっぱいということでしょうか。

この点、フォルテス銀行の100%国有化に踏み切ったベネルクス三国の対応とそうとうちがいますね。ヨーロッパ諸国のほうが資本注入を優先しているように見え、この政策のちがいの対比は非常に興味深いです。

民間資金による自己資本調達をさけぶ声は米国下院で相当ありましたが、非現実的でしょう。すでに数ヶ月前に資本調達に応じた投資家は大変な損失をこうむっています。公的資金の投入がないとこれ以上出てきそうもなさそうですね。しかも、長銀売却のときにやったような瑕疵担保条項といったような「おまけ」をつけてやらないと、民間はのってこないのではないでしょうか。ただ、米国の大手銀行はどこもかしこも大幅増資ですから、民間の金が本当にあるのかという心配もあります。

このような政策をうっても基本的には不動産市場における調整が終了しないと、回復軌道にはのらないでしょうね。景気もどんどんわるくなってしまうので、景気対策も必要になってしまいます。この部分は金利調整策も必要ですが、それは決定的ではなく、ある程度の財政出動が必要と思えます。ケインジアンの出番ですね。

視点をかえて、日本では、自民党が「金融市場の動向とその影響への対応に関するプロジェクト・チーム」を立ち上げ、また、民主党が金融機能強化法の2年限定復活などを柱とする対策案をまとめたという記事が、本日の日経新聞にでていました。

同じ日経に大手地銀の千葉銀行の業績予測下方修正が発表されていますが、リーマンで焦げ付いた債券50億円を含めた有価証券だけで144億円の損失を計上ということですので、千葉銀より規模の小さい地銀さんで傷ついてしまい、破綻懸念がでてくるところがでても不思議ではありません。しかし、それが金融機能を阻害するところまでいくかどうか。

たしかに準備をするにこしたことはないですが、日本が金融機能強化法を復活というニュースが流れると、市場が日本の金融システムにも懸念と受け取ってしまう可能性が高いと思いますし、局地的な地銀の破綻により日本の金融システムにすぐに危機が発生するとも思えないので、時期尚早という気がいたします。

しかし、今回のことで地銀再編には相当の弾みがつくでしょうね。地域経済のためにも強い地銀が必要ですし、政策立案担当者には重い課題が山積みです。

« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »