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2008年9月 9日 (火)

プリンシプル・ベースの規制って何?

ハミルトン、残念だったね~(^^;)。25秒ペナルティーくって3位とは。フェラーリ・ファンはにんまりでしょう。

さて、小泉内閣のもとで強力に推し進められたはずの規制緩和ですが、最近はじわじわと規制強化の動きが進行しているようです。日本経済新聞の2008年9月8日朝刊の9面の「経営の視点」というコラムに、三宅伸吾編集委員が「静かに進む規制強化ールールは自ら創ってこそー」という記事を書いて、そのことを論じています。

三宅さんは官僚が精緻に作り上げた(と思われていた)ルールが規制緩和の進行でもうまく働いておらず、逆の方向に動き出している現状を描写しています。そして、今春、金融庁が預金預入機関の監督指針のひとつとして「誠実かつ職業的な注意深さをもって業務を行う」といった抽象的な理念を定めたことについて、「具体的にどのような規制が妥当なのかわからなくなったためだろう」という私のコメントを引用しております(>_<)。

なんや、この私のコメントは?

ちょっと私の発言の趣旨がわかりにくいかもしれませんが、三宅さんはここではプリンシプル・ベースの規制のことを言おうとしているのです。金融規制の世界では最近ずいぶんと強調されつつある「プリンシプル・ベース」の規制ですが、金融庁の監督指針はこの原則をいおうとしたと三宅さんは指摘し、私はプリンシプル・ベースという考え方が出てきた一つの背景として、複雑な金融取引の発達やIT化の進行により規制当局も追いつくことが難しくなってきたことも原因です、といいたかったわけなのです。それでは、「プリンシプル・ベースの規制」とは何なのでしょうか。わかったようでわからない、というのが素直な私の印象です。

技術革新や金融イノベーションの進行は、金融取引の事象を非常に複雑にし、そこでは非常に細かいルールをつくらないと、本来健全な取引も規制してしまうことになりがちです。いい例が、空売り規制です。証券会社の社内弁護士のときに細かく検討する機会がありましたが、一筋縄ではいきません。

そこで、規制を作るほうもよほど金融実務に通じていなければなりませんが、残念ながら金融庁に出向して立法を担当している若い弁護士や官僚は正直言って金融実務に通じていません。ここ数年、なんでそんな立法するの、という法律改正が私の専門とする分野で起こりましたが、そのたびに政省令レベルでなんとかセーフハーバーをつくってもらおうと社内弁護士、業界団体などの関係者が一生懸命当局に説明しているのが実情でした。しかし、法律がいちどできてしまうと、法律の中身を実質変更してしまうようなことを政省令で定めると、法律の委任の範囲を超えてその適法性が疑われることにもなりかねないということもあって、不満が残る政省令しかできないということが結構おきました。

プリンシプル・ベースは、例えば「投資家保護」という行動準則を定めて、そこから業者や業界団体がベスト・プラクティスを自分たちで自主的に検討してルールメイクしようという発想なので、「実務を知らない連中にわけの分からないルールをつくられるよりずっといい」というわけで業界一般的には歓迎されているのですが、ではそこにいう「プリンシプル」とはどんなものなのか、ということはちゃんと議論されていないように思います。それに、「プリンシプル」となるもの自体も、例えばEUの金融市場指令(MiFID)をみればわかるとおり、相当の年月を掛けてかなりの厚さになっていますし、また、英国のFSAのハンドブックをみれば分かるとおり、びっくりするほど分厚くなっており、いったいこれだけのルールを目の前にしたときの「プリンシプル」ベースの規制がどんな世界になるのか、私には見えていません。

ある著名な大学の先生が、「『プリンシプル・ベース』は下手をしたら裁量行政に後戻りしてしまう。官僚がいろいろなところに天下り、『プリンシプル・ベース』の名のもとに裁量権を行使しまくったらと思うとゾッとするので、自分はあまり大きな声でいわないことにしている」と話されたのを聞いて、「なるほど」と思ったことがあります。非常にたくさんの政府関係の仕事をされているので、びっくりもしました。

皆さん、英国FSAのハンドブックをみてから、プリンシプル・ベースの規制ってなんなんだろうか、よく考えたほうがよろしいのではないでしょうかね。これをみていると、しっかりしたルールが創られている土台があって、初めてできるように思うのですが。日本なんかパブコメさえ政省令1ヶ月前ですよ。もっと、この辺から考えたほうがいいのではないでしょうかね~。

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