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2008年9月21日 (日)

米政府の不良債権買取案に対する疑問点覚書

政府の総合的金融安定化対策原案が報道されています。報道によると、原案の骨子は以下のとおりということです。

  • 公的資金による不良資産の買取は最大7,000億ドル(約75兆ドル)
  • 2年間の時限立法
  • 米国内に本店を置く金融機関(銀行等と証券会社)
  • 買取の対象とするのは住宅ローン、商業用ローンのほか住宅ローンに関連する証券化商品で、本年9月17日以前に組成されたローンおよび商品に限定。
  • ヘッジファンドの保有する商品は対象から除外。外国金融機関も対象外。
  • 買取原始の調達は国債発行などによる連邦政府の資金。このため、連邦政府の法定借り入れ限度の上限を約10兆6,000億ドルから約11兆3,000億ドルまで拡大する。
  • 買取の権限はポールソン財務省長官に与える。

まだまだ、詳細がわからず、評価できる状態ではないですが、さしあたり検討すべきと思われる項目を備忘のために挙げておきます。

① 7,000億ドル(約75兆円)は十分な規模なのか

  • ファニーメイとフレディマックが保有または保証している住宅ローン債権の合計は約5兆ドル(約540兆円)。デフォルト率が近時は6%まで上昇しており、破綻懸念先までいれて全体の10%と仮定すると、住宅公社だけで不良債権の総合計は約5,000億ドル(約54兆円)。
  • ファニーメイとフレディマックが証券化してオフバラした住宅ローンがあるはずだが、それの残高はどれくらいか。デフォルト率と破綻懸念先までいれて全体の10%とすると、証券化された債券を保有する米国金融機関からすべて買ったと仮定したときき、予想される金額はいくらになるか。
  • このほかの米国の民間金融機関が保有する住宅ローンおよび商業用ローン(不動産関連)の総額と、そのうちの破綻懸念先債権・破綻先債権の総額はいくらになるのか(住宅公社以上なのではないか?)
  • それプラス民間の金融機関が証券化してオフバラにした債権の総額はいくらで、証券化商品のデフォルト率はどれくらいか。
  • また、民間の金融機関が保有している証券化商品のメザニン部分、劣後部分を表象する債券の額面総額はいくらか。

チェックポイントをあげていくだけで、この規模で十分かという点について不安が出てまいります。。。。。

② 買取の際の査定方法はどうするのか

  • 優先部分証券化商品について、取引ができず時価がいくらかわからくなっている状況で、証券化商品の買取価格をどうやって決めるのか。
  • メザニン部分、劣後部分についてはどうやって買取価格を決めるのか。はじめからゼロ評価か。
  • いつの時点で、価格決定をするのか。
  • 誰が具体的な時価評価にあたるのか。
  • ヒストリック・データが現実に起こっていることと乖離しているとき、なにが公正な価格の決定方法か。

③ 金融機関がオフバランスで実質保有している証券化商品は、本当に対象にしなくてもいいのか

  • ストラクチャード・インベストメント・ビークル(SIV)を利用して投資をしている場合は、SIVに対する融資や投資が、どの程度の金額にのぼり、またSIVが保有している証券化商品はどの程度の金額にのぼるのか。
  • SIVへの融資や保証は買取対象外なのか(追記:SIVに対するエクイティ投資は対象外と思われるが、融資・保証はSIVが不動産証券化商品への投資を目的としているときは、やはり対象外なのか)

④ 金融機関がレファレンス・エンティテイとなっているクレジット・デリバティブ取引はどれくらいあるのか。

  • レファレンス・エンティティである金融機関はすべて生き残るわけではないとすると(地銀やリーマンのような証券会社)、クレジットイベントが発生しそうなCDS取引の支払想定額はどれくらいにのぼるのか。
  • そのうち、破綻懸念の金融機関がヘッジによって他の金融機関にリスクを移転しているものの総額はいくら位あるのか。

⑤ 将来の回収方法はどうするのか。

  • RTCは破綻したS&Lの資産を全部接収し、優良資産の証券化を行うことにより、市場から投入した公的資金を回収したが、今回のスキームは不良債権の買取のみである。キャッシュ・フローのない資産を買い取っても、証券化はできないが、どうやって回収していくのか。
  • 将来の回収方法についての見込みがないと、財務省証券=米国債の格付けの低下に結びつきかねないが、その点について今、懸念すべき事項はないか。

書いていると、確かに「市場が疑心暗鬼」になってくる気持ちがわかりますね。米政府のプランの詳細が月曜日に明らかにされるでしょうから、じっくり見たいです。

月曜日の米国市場の動きを注目しましょう。

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