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2008年9月に作成された記事

2008年9月30日 (火)

取締役の善管注意義務と経営判断の原則が本当に機能すべき場面

日曜日の晩に、内部統制ネタについて書こうと思っておりましたが、リーマン・ショックならぬフェラーリ・ショックに襲われて、ネタさえ忘れてしまいました。それにしてもホースをつけたままピット出口まで走ったマッサの姿に、まさに真っ青(おやじギャグ)。

それが少し回復いたしました本日、週間ダイヤモンド10月4日号を買ったところ、私とまったく同じ切り口で米国金融安定化法案を批判している記事をみつけました。なんとニフティのニュースにものっておりましたので、ごらんください↓。

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/diamond-20080930-01/1.htm

 

さて、前口上はこれくらいにして、前掲週間ダイヤモンドのトップ記事はMUFJと野村ホールディングスによる世界的金融再編への参戦についてでした。私個人としては、竹中平蔵さんと幸田真音さんの対談では経営能力についていまだに疑問視されていた日本の金融機関が、果敢な攻めを行う判断をしたことに、素直に拍手を贈りたいと思いますし、今後、世界市場での活躍を祈りたい気持ちです。

他方において、このようなタイミングにおいて極端に情報量が絞られており、しかも決断をするのに与えられている時間も極端に短い状況のなかで、巨額の出資や買収を決断するという仕事をするに際し、取締役が善管注意義務というタフな問題にどう向き合ったかに、とても興味があります。

取締役の善管注意義務については、おおむね以下のような理解が判例・通説といっていいかと思います(字体が違って恐縮ですが、私のロースクールの講義の準備ノートからのコピペです。下記の記述は経営法友会の「取締役ハンドブック」からほとんど引用させていただいております。この本、素晴らしいです)。

(ア) 取締役は業務執行にあたり、会社に対して善管注意義務をおっており、善管注意義務違反の業務執行行為により会社に損害が生じた場合にはその損害を賠償する責任をおう。

(イ) 取締役の業務執行は不確実な状況で迅速な決断を迫られることが多いので、善管注意義務が尽くされたかどうかは、行為当時の状況に照らし合理的な情報収集・調査・検討等が行われたか、および、その状況と取締役に要求される能力水準に照らし不合理な判断がなされなかったかを基準として判断される。

(ウ) 取締役に当該状況下で必要な情報収集等をへた事実認識や意思決定過程に不注意がなければ、取締役には広い裁量が認められる。


この原則の(イ)(ウ)の要件がみたされるかどうかが問題なのですが、実際の場面に照らしながら、どの程度の情報の収集が必要かつ合理的なのかという点、また、当該情報をどのように分析することが通常要求される能力水準に照らし不合理な判断かという点を考えるのは、それ自体まったく容易な作業ではありません。

ところが、日本の判例では、(イ)(ウ)の双方について裁判所がしばしば踏み込んで判断しています。しかし裁判官が本当に判断できる能力や経験をもっているかというと、どうみてもそうはいえず、また裁判官も最近では買収に関して素直にそう認めていると思われますが、そのような謙抑的態度が善管注意義務の問題について取られ続けるかどうかは読めません。

今回の金融再編劇は、金融ビジネスと信用秩序、金融商品と信用市場、投資銀行業務の動向とリスク管理、企業価値と買収・投資対価、エクジットなどについて幅広い知識をもったマネジメントでなければとても判断できるものではありません。こういう事例をみると、いかに(イ)の要件について裁判所が判断をするということが問題であるということがしみじみ理解されます。

江頭謙二郎教授はその著書や論文の中で、日本の判例の考え方が米国で発達した経営判断の原則からかけ離れており問題であることを指摘されていますが、こういう生きた事例のもとで、あとずけで当事者でないものがあの時の判断は正しかったのかどうかということを論じることが、あまりにも取締役を萎縮させてしまうことになることがよくわかります。取締役の善管注意義務は取締役を免責するためのシステムであることの意味を、よくよく考えるべきであると思った次第です。

2008年9月23日 (火)

米政府不良債権買取案に対する米国議会の議論に思うこと

以下の記述は、弁護士としての職分をこえておりますが、素人の個人的感想としてお読みいただければと思います。

米政府の不良債権買取案は、発表当初はダウの反騰をよびましたが、それと同じくらい月曜日はダウは下がりました。世界の株式市場でも株価は下がっています。原油先物市場に急激な資金流入があることを見ると共に、ドルの価格が下落しています。市場は、米国政府案に対してポジティブなサインを出していません。

今回の米政府の対応は、極力、金融機関に対する直接の資本注入は避け、そのバランスシート上、価値が下がり続けている不動産関連ローンと証券化商品をとっぱらってやるというものですが、考えれば考えるほど、スキームとして足りないのではないかと思ってしまいます。

もともと今回の危機は、基本的には急速な資産劣化による取引相手の財務状況に対する懸念から発生しています。相手方の信用リスク懸念の急激な高まりにより、取引が成立しなくなったり、スプレッドの急上昇がおこっているのです。これは、基本的には取引相手方にリスクを十分に取れるだけの資本があれば、解消される性質のものです。

また、証券化商品は、信用リスク懸念により本来デフォルトする可能性が少ない優先部分についてもプライスがつかないために取引が成立しないのであって、アンダーライング・アセットであるモーゲージのパーフォーマンスが若干悪くなったとしても、その大部分はプライスがついて然るべきものでしょう。だから証券化商品のパーフォーマンスよりも、本当は取引相手の信用リスク懸念のほうが問題としては大きいのではないかと思います。

そうだとすれば、まず必要なのは信用力に懸念が出ている金融機関への資本注入なのではないか、と思えます。いまの市場環境では、だれも資金を出してくれない状況であるから、公的資金による資本投入が必要になるわけです。月曜日に銀行株を中心に価格が急激におちたのは、金融機関に対する信用懸念が相当強いことの証明でしょう。

この点、共和党政権は、政府が資本注入してエクイティをもつことを極力回避する戦略をとり、不良資産買取でバランスシートを改善するだけで切り抜けようとしているとしか思えません。この案では、リバース・オークション方式で、安い値段で買取を申し出た金融機関の資産から先に買うというのですから、金融機関はここで損失をだすことを覚悟しなければなりません。今自分のところで評価している価格より安くださないと、買い取ってもらえないリスクがあるのです。そうなった場合には、その損失が大きいと、当該金融機関の財務情報の信頼性に疑問符がついて株価の急落により市場からアウトを宣告されかねず、それを恐れて、適切な価格で申し出しないリスクがあります。金融機関が痛んでいれば痛んでいるだけ、そのリスクは大きいと思います。

民主党の第三者機関による査定の要求は、この点からすると理由がありますが、他方、オークションによって資本注入をできるような権利が自動的に政府に与えられるとすると、もっと躊躇する機関が増えると思います。日本の98年のときの状況を思い出してください。どんな金融機関も政府の介入を極端にきらいました。米国ならば、いっそうそうであると思います。

ですから、私は破綻状態に陥った金融機関を公的管理におくS&L危機のときのようなメカニズムの復活が必要であると思います。私の記憶が正しければ、破綻認定された金融機関は接収され、その組織は連邦の特殊な金融機関の一部とされ、RTCが公的な管理人として入っていき営業を続けるという仕組みでした。水曜日にRTCの職員が現れて全資産を接収し、翌週月曜日には営業はストップせず継続されていくが、何ヶ月かの間に資産をどうするかという決定をして処理方法を決めていくというものでした。そして、バルク・セールで資産を売っていきましたし、一部は証券化して市場に売却しました。

破綻認定された金融機関が特別公的管理のような仕組みのもとで管理下におかれ、政府資金で資本注入をし、あるいは第三者の資本注入を行うことによって、取引をする相手方が信用リスクについて恐れる必要がなくなれば、すくなくとも当該金融機関の保有する証券化商品の優先部分について正常な市場メカニズムが働いてプライスがつくようになり、流動性が回復していくのではないでしょうか。そのような状態に、はやくもっていかないとバルク・セールも証券化も不可能で、米政府のバランス・シートの悪化のみをまねいてしまうだけとなります。買取の規模が大きいほど、流動性が回復しない市場環境で買取をつづけていけば、今度は米国債の格付け引き下げという事態が起こってきてしまうでしょう。これも日本が経験したことです。

こう考えると、リスクが少ない商品が正常なマーケット・メカニズムによりプライスがつくようにするためには、資本注入なしで買取だけでやるのは無理であると思わざるを得ないのです。

モルガン・スタンレーはMUFJが資本参加をするようですが、他の何百とある金融機関はそうもいきません。ワシントン・ミューチャルのような大きい金融機関は、公的管理にもっていく、資本注入を強制的にやる、というような思い切った仕組みを作らない限り、信用不安の根本を押さえ込むのは無理であると思います。それが日本のバブル処理からえた教訓ではなかったでしょうか。

また、資本注入をしたあとどうなるかも、日本にいい例があります。新生銀行の再上場によるリスクテイカーたる投資家の大きな利益を代表例とする、海外資本が得たリターンについては数多くの事例を米国民に示せます。CNNによれば、米国民は政府資金の投入は必要だと感じているが、その結果としてどの程度の負担が国民に発生するかを非常に懸念しているといいます。日本が経験したことは彼らを説得するには十分すぎるものであると思いますが、いかがでしょうか。

2008年9月21日 (日)

米政府の不良債権買取案に対する疑問点覚書

政府の総合的金融安定化対策原案が報道されています。報道によると、原案の骨子は以下のとおりということです。

  • 公的資金による不良資産の買取は最大7,000億ドル(約75兆ドル)
  • 2年間の時限立法
  • 米国内に本店を置く金融機関(銀行等と証券会社)
  • 買取の対象とするのは住宅ローン、商業用ローンのほか住宅ローンに関連する証券化商品で、本年9月17日以前に組成されたローンおよび商品に限定。
  • ヘッジファンドの保有する商品は対象から除外。外国金融機関も対象外。
  • 買取原始の調達は国債発行などによる連邦政府の資金。このため、連邦政府の法定借り入れ限度の上限を約10兆6,000億ドルから約11兆3,000億ドルまで拡大する。
  • 買取の権限はポールソン財務省長官に与える。

まだまだ、詳細がわからず、評価できる状態ではないですが、さしあたり検討すべきと思われる項目を備忘のために挙げておきます。

① 7,000億ドル(約75兆円)は十分な規模なのか

  • ファニーメイとフレディマックが保有または保証している住宅ローン債権の合計は約5兆ドル(約540兆円)。デフォルト率が近時は6%まで上昇しており、破綻懸念先までいれて全体の10%と仮定すると、住宅公社だけで不良債権の総合計は約5,000億ドル(約54兆円)。
  • ファニーメイとフレディマックが証券化してオフバラした住宅ローンがあるはずだが、それの残高はどれくらいか。デフォルト率と破綻懸念先までいれて全体の10%とすると、証券化された債券を保有する米国金融機関からすべて買ったと仮定したときき、予想される金額はいくらになるか。
  • このほかの米国の民間金融機関が保有する住宅ローンおよび商業用ローン(不動産関連)の総額と、そのうちの破綻懸念先債権・破綻先債権の総額はいくらになるのか(住宅公社以上なのではないか?)
  • それプラス民間の金融機関が証券化してオフバラにした債権の総額はいくらで、証券化商品のデフォルト率はどれくらいか。
  • また、民間の金融機関が保有している証券化商品のメザニン部分、劣後部分を表象する債券の額面総額はいくらか。

チェックポイントをあげていくだけで、この規模で十分かという点について不安が出てまいります。。。。。

② 買取の際の査定方法はどうするのか

  • 優先部分証券化商品について、取引ができず時価がいくらかわからくなっている状況で、証券化商品の買取価格をどうやって決めるのか。
  • メザニン部分、劣後部分についてはどうやって買取価格を決めるのか。はじめからゼロ評価か。
  • いつの時点で、価格決定をするのか。
  • 誰が具体的な時価評価にあたるのか。
  • ヒストリック・データが現実に起こっていることと乖離しているとき、なにが公正な価格の決定方法か。

③ 金融機関がオフバランスで実質保有している証券化商品は、本当に対象にしなくてもいいのか

  • ストラクチャード・インベストメント・ビークル(SIV)を利用して投資をしている場合は、SIVに対する融資や投資が、どの程度の金額にのぼり、またSIVが保有している証券化商品はどの程度の金額にのぼるのか。
  • SIVへの融資や保証は買取対象外なのか(追記:SIVに対するエクイティ投資は対象外と思われるが、融資・保証はSIVが不動産証券化商品への投資を目的としているときは、やはり対象外なのか)

④ 金融機関がレファレンス・エンティテイとなっているクレジット・デリバティブ取引はどれくらいあるのか。

  • レファレンス・エンティティである金融機関はすべて生き残るわけではないとすると(地銀やリーマンのような証券会社)、クレジットイベントが発生しそうなCDS取引の支払想定額はどれくらいにのぼるのか。
  • そのうち、破綻懸念の金融機関がヘッジによって他の金融機関にリスクを移転しているものの総額はいくら位あるのか。

⑤ 将来の回収方法はどうするのか。

  • RTCは破綻したS&Lの資産を全部接収し、優良資産の証券化を行うことにより、市場から投入した公的資金を回収したが、今回のスキームは不良債権の買取のみである。キャッシュ・フローのない資産を買い取っても、証券化はできないが、どうやって回収していくのか。
  • 将来の回収方法についての見込みがないと、財務省証券=米国債の格付けの低下に結びつきかねないが、その点について今、懸念すべき事項はないか。

書いていると、確かに「市場が疑心暗鬼」になってくる気持ちがわかりますね。米政府のプランの詳細が月曜日に明らかにされるでしょうから、じっくり見たいです。

月曜日の米国市場の動きを注目しましょう。

2008年9月19日 (金)

クレジット・デフォルト・スワップ取引の損失は様子見だって??

今日は調子いいのでもう1本書いちゃお~っと。

本日付の金融ファクシミリ新聞によると、リーマンをカウンターパティとするクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引について、取引で生じた利益をリーマンに請求しても焦げ付く可能性があることが問題となりはじめているようです。

CDS取引は、一種の保険で、レファレンス・エンティティの信用不安をクレジット・イベントといい、クレジット・イベントが発生したときは、プロテクション・バイヤーはプロテクション・セラーから予め定められたフォーミュラで計算される金額や定額の金額を受け取るというものです。

金融ファクシミリ新聞は、リーマンは消費者金融業者を相手に取り引きをしている金融機関などに、消費者金融業者を相手にするプロテクションを売っており、最近の信用リスクに対する不安からスプレッドがワイド化して、プロテクションを買った投資家は大きな含み益を得たとみられるが、リーマンが請求額を支払えなければ見込んでいた実現益を計上できないという不安があるので、「当面は様子見の投資家が多いと予測されている」と報じていますが、「えっ、どういうこと?」と思ってしまいます。

リーマンは一種の保険を引き受けているので、例えば、リーマンから不動産会社と取引している投資家が当該不動産会社をレファレンス・エンティティとするプロテクションを買って、その不動産会社が倒産したら、リーマンからお金を受け取れるわけですが、この将来発生するかもしれない請求権の履行の可能性は、リーマンの倒産により、限りなく低いわけです。また、現在のポジションが投資家のイン・ザ・マネーとしても、ISDAマスター・アグリーメントでカバーされているならばターミネーションが起こるのではないでしょうか。それであればその投資家の利益の支払いを求めても、リーマンには支払い能力がありません。

また、リーマンは、プロテクションを売っていたら、そのポジションのリスクヘッジのために他の金融機関からプロテクションを買っている可能性があります。この金融機関は、リーマンが倒産したことを理由にAETをトリガーしているでしょう。そうすると、この取引でイン・ザ・マネーになっているリーマンは金を受け取ることができます。

こう考えてくると、なんで多数の投資家が様子見をしているのか、よく理解できないのでありますが、どなたか、私の疑問に答えていただけるとありがたいと思います。なんか、誤解しているのかな~。

米国政府の不良債権買取構想はターニング・ポイントになるか?

新聞の論調はすべて、私の書いた方向へと流れていったようです。むろん、自分の意見の影響はゼロですが、すべての人の目に、米当局の失敗は明らかなのですね。

今朝の日経4面に、大和総研の武藤敏郎氏が公的資金注入の枠組みが必要と発言されています。基本的に同意ですが、米国では国法銀行の破綻の場合は、デリバティブ取引は政府が介入して他の金融機関にそっくりそのまま移す仕組みはあり、ただ、証券会社である投資銀行についてはこのような仕組みが整っていないのであると理解しております。作るのであるならば、このような仕組みとの組み合わせも考えるべきかと思います。

また、日経社説によれば、RTCのような仕組みをつくり不良債権処理を買い取るべきだというボルガー元FRB議長の提案が紹介されていました。

ここまで朝に下書きして、仕事をしてから仕上げようと思っていたら、米国政府が不良債権買取処理の枠組みの検討に入ったというニュースが入ってきました。しかし、その中身を読んでみるとまだ海のものとも山のものともわかりません。仮にRTCのような機構を構想するなら、資金の出し手は誰なのでしょうか?ポールソン財務長官もバーナンキFRB議長も、一言も公的資金を導入するとは言っておりません。また、その規模は?これもわかりません。

ポールソンとバーナンキは民主党、共和党の議会有力者にたたき台を示し、議会は超党派での政府との協力を約束し、ペロシ下院議長は「急いで動く、時間が重要(Time is essence)」と発言したと伝えられていますが、公的資金の導入については、伝統的に議会は反対の空気が強く、この間の状況の悪化でも、議会の空気は即簡単にOKの方向へはいかないと思われますので、この雰囲気には非常に違和感を感じます。

この手のプランの大枠も示すことなく、記者たちとインタビューして期待感を持たせる記事を書かせるのは老獪な政治家の常であります。当局者は、この手のニュースがトレーディング・ルームのTVに届いたとたんにどんなことがおきるか、お見通しなのです。投資銀行に勤務されたことのない方々にはわかりにくいかもしれませんが、ニュースのヘッドラインが流れたとたん、狩猟犬のようなトレーダーたちは一斉に買いに走ります。ほんの数秒でそのアクションはおこり、マーケットを巻き込んでいきます。トレーディング・ルームの「買いだ、買いだ!」と言う声、「いいか、マーケット・クローズのときは今日のポジションはクローズしろ」と利益の確定・鞘抜きを指示するトレーディング・ヘッドの声が聞こえるようです。

このような動きからダウは急騰したわけで、もちろんクロージング直前は値をすこし下げました。トレーダーたちには、構想の中身でもっとも重要な誰が資金を出すのか、どの程度の規模の買取資金が用意されるのかという点は全くわからない程度の情報を示して、マーケットを再びスペキュレーションの渦に巻き込んだのです。恐るべき、かつ見事な相場操縦ともいえます。

他方において、SECがマーケットに嘘の情報を流して空売りをかけた者がいるという疑いで捜査に乗り出したという報道がなされました。あたかも、数日間の相場の暴落は、リーマン救済をしなかったからではない、嘘のうわさを流した連中がやったんだ、といいたいばかりのようです。これは、情報操作をしているのではないかと私は疑いたくなります(ひねくれ者でしょうか)。

しかし、もし構想の中身が、公的資金が投入されず、例えば日本が最初やったような奉加帳方式であったりしたら、どうなるのでしょうか。また、不良債権の見積もりが不十分で、そんな規模の買取では、まったく効果として不十分とされたらどうなるでしょうか。マーケットは大変な失望売りとなるでしょう。それは現在、合併交渉を行っていると伝えられるワコビア、モーガン・スタンレーの株価にさらに悪影響を与えかねませんし、弱っているそのほかの金融機関の株価を直撃します。

私は彼らが議論している構想のもっとも重要な部分が、市場の期待を裏切らないことを心底祈りたいと思います。もし、公的資金の導入がなく、規模も不十分だったりしたら、市場のリアクションはこれまで以上になる可能性が大きいと思っております。そうなったときは、米政府首脳は万死に値するといえるでしょう。

<追記>

午後11時過ぎにCNNで中継された記者会見で、ポールソン財務長官は、プランは問題になっている不良債権を除去するだけの非常に大きい規模でなければならず、また、たとえタックス・ペイヤーの金を使ってもシステムの根本的原因の除去をおこなわなければならないと言明しました。これは公的資金導入により、相当規模の大きさの不良債権買取の仕組みを作らなければならないという宣言と受けとれました。疑ぐり深い私も、すこしほっとしました。他方、ポールソンは現在のレギュラトリー・システムは時代遅れで改革する必要があるといいました。財務省が用意する法案のパッケージはどのようなものなのか、また、議会は本当にOKするのか、が非常に注目されます。NYはがんがん上がり始めているようです。

<追記2>

今、ブッシュ大統領が、バーナンキ、ポールソン、コックスを引き連れて演説を終わりました。いままで聞いたブッシュの演説でもっともよかった、感心しましたね~。内容はポールソンの演説を全面的に支持するものでした。

2008年9月18日 (木)

AIGとリーマンはなんで取り扱いがちがうのか?-米当局の迷走ー

AIGに対する850億ドル(9兆円)の公的資金を使った融資による救済(政府がその約80%の株を取得できるオプション付き)が決まりました。AIG破綻のリスクがあまりにも大きいというのが、その理由であると報道されています。たしかに世界120カ国で事業を展開するAIGの破綻は、すさまじい影響があるでしょう。ですからこの決断は正しいと思いますが、なんでリーマンとちがうのでしょうか。

米国のアナリストの中にはAIGのこのような救済が節操がないと批判し、バーナンキFRB議長は何がシステミック・リスクなのか、明確に説明する必要があるとしています。例えば下記の記事をご覧ください。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-33801120080917

確かにポイントはそこにありますが、私はAIGを救済したのが問題ではなく、リーマン救済に公的資金を使わない決断をしたことが大問題であったと思います。ここにはシステミック・リスクについて、認識が不足していると思えるからです。リーマン・ショックによる市場の混乱があまりにも大きかったので、AIGについては公的資金を導入しなければ、米国発世界恐慌が現実化すると考えざるをえなかった.....それが今回のAIG救済劇の実体ではないでしょうか。

昨日、ブログにかいたリーマンのデリバティブ取引のエクスポージャーは、インターバンク間取引については、デリバティブ取引の有担保化が進んだためと、多くのデリバティブ取引がリーマンのインザマネー(つまりリーマンの勝ち)であるために、心配したほど大きくはないようです。市場関係者と話しましたが、デリバティブ市場の動きには、大きな影響がないようです。この点、CNNMoney.comによりますと、ベアー・スターンズの場合にはデリバティブのエクスポージャーが9兆ドルもあったのに対して、リーマンはその10分の1であったとしています。それが正しいとしても9000億ドル、100兆円です。1997年11月の日本の金融危機の際には、日本の金融機関のバブルの負債が100兆円とも150兆円ともいわれていましたが、それに匹敵する規模です。

http://money.cnn.com/2008/09/15/news/companies/why_bear_not_lehman/index.htm

もしリーマンがアウト・オブ・ザ・マネーであったら、公的資金導入なしでチャプター11に追い込むことなど不可能だったでしょう。リーマンのエクスポージャーはイン・ザ・マネーであったから、公的資金導入なしでも市場は耐えられると、米当局は読んだのではないでしょうか。

しかし、この読みはすでにサブ・プライム危機が市場に与えている心理的影響を、まったく軽視したものであったと思います。リーマンのチャプター11申請が発表されて以来、全世界の市場は暴落しました。ポールソン財務長官の楽観的なコメントとは逆に、市場は大変な混乱に陥ったわけです。日米欧の中央銀行が市場に供給した短期資金は1日で36兆円にものぼります。日銀は、本日も短期金融市場に3兆円の緊急流動性供与を行っています。ロシア証券取引所MICEXとロシア第2位の取引所RTSは、ついに取引停止に追い込まれています。米当局は、リーマンのような国際的投資銀行の破綻の影響をアンダーエスティメートしていたのではないでしょうか。

http://www.worldtimes.co.jp/news/bus/kiji/2008-09-17T191035Z_01_NOOTR_RTRMDNC_0_JAPAN-338043-1.html

日本市場を例にとって、リーマンのチャプター11が市場に与えた影響について見てみましょう。

本日の金融ファクシミリ新聞によると、短期金融市場ではリーマンによる無担保コールとCPの残高はなかったとされています。また、先にのべたとおり、日本のデリバティブ市場において、リーマンを相手とするデリバティブ取引の一括清算による金融機関の連鎖倒産の恐れは語られていません。

しかし、日銀が3兆円も流動性供給をしても、無担保コール市場は日銀の誘導目標の0.5%を上回る0.55%から0.70%程度で推移したといいます。20bps高い金利で調達しなければならないという事態は、金融機関同士が相手方のクレジットの状態に相当の疑心暗鬼になっている証拠でしょう(かつてのジャパン・プレミアムが想起されます)。

また、ブルームバーグは、日本の金融機関のリーマン向け融資及びリーマン発行の社債で回収不可能になる可能性があるものが約2500億円と報じています。この内訳は大手8行で1367億円、地銀32行で673億円、生保6社で993億円、損害保険会社5社が約150億円(ただし1社は未公表)ということです。地銀の中には、71億円も引っかかっているところがあります。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aRq7Rbv7jqGA&refer=jp_japan

これに加えて、16日に民事再生の申立がでた系列企業サンライズファイナンスとリーマン・ブラザーズ・コマーシャル・モーゲージの負債総額は7484億円であると報道されています。内訳は負債はサンライズが3640億円、コマーシャル・モーゲージは3845億円で、両者のビジネス上、資金調達は日本の金融機関によるローンと思われます。この負債総額はほとんど証券化される前の不動産物件やSPCに対するローンであるとすると、どの程度担保物件がとられているか疑問ですが、債権譲渡登記や不動産登記がなされていなければ担保権は対抗できませんから、これらの手続きが終了していなければ全額が再生債権ということになります。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=adCh.UIFv32Y&refer=jp_japan

以上に報道された日本の金融機関のすべての債権が回収不能としても、1兆円にみたないので、この程度なら日本の金融機関全体としてはリスクを飲み込めそうですが(地銀についてはあぶないと思われるところがでてくるとしても)、それでも市場は先にのべたとおりの反応をおこしているわけです。それは、相手方の信用リスクに対する懸念が引き起こしている信用収縮にほかなりません。ここでは、リーマン・ショックにより、大きな規模での信用収縮がはじまっているのです。

このような信用収縮が全世界の市場でおこり、米当局の「想定の範囲内」にまったくおさまらなかったために、AIGについては当初公的資金による救済を拒否していたFRBも、公的資金による救済に踏み込まなければならなくなったのではないでしょうか。

バブル崩壊のときに日本が手本とすべきとされたのは、S&Lの破綻のときの米国の手法でした。その時に、レッスンとして学んだことは、破綻状態の金融機関を長く生かしておくと後の処理が高くつくということ(日本はバブル崩壊後7年も当局がほっておいた)、また、早期処理については、思い切った公的資金の導入を含んだ措置が必要、という2点でした。今回の米当局は、日本に示した2つのレッスンを十分に生かしているとはいえず、また、さらに、その後のITの進歩や金融工学の発達によってリスクの所在が不明になった事態に、市場がいかに不安を抱え急速な信用収縮をおこすのかという点についても、認識が不足していることを示してしまったと思います。

これから、みんな覚悟して生活する必要がありそうですね、よほど大胆な勝負ができる人以外は。

2008年9月16日 (火)

リーマン・ブラザーズの破綻

ロンドンから今さっき帰ってきました。ロンドンでは、リーマン・ブラザーズのチャプター11の申立がトップニュースで流れていましたが、そのコンテクストはバークレイズ銀行が交渉からドロップした結果、リーマンが連邦破産法申請をせざるをえないとした、というものであって、それがどのような結果を及ぼすのかの分析がBBCでさえ欠けていました。現代金融の中心地であるロンドンでこのレベルの反応なのか、とちょっと意外でした。リーマンの経営破綻はおそるべき影響を及ぼす可能性があるというのに。

帰国してテレビをつけてみると、TV各局が早速熱心に状況を分析しており、さすがにバブル崩壊を経験した国だけあります。リーマンの日本法人も民事再生手続を申し立てて、負債の総額は銀行借入れだけで2000億円、主要行で各行200億円以上という報道ですが、どうもノンリコースローンの総額ではないかと思われるのです。デリバティブ取引に長くかかわっている私としては、リーマンが日本においてアレンジしたノンリコースローンの負債総額だけではなく、リーマン全体でいったいデリバティブ取引でどの程度のエクスポージャーを抱えているのか、またリーマンをレファレンス・エンティテイとするクレジットデリバティブの想定元本がどの程度なのかが非常に知りたいところです。

私は1998年当時、チェース・マンハッタン銀行東京支店の法務部長として、日本長期信用銀行の特別公的管理にともなうデリバティブ取引の処理にあたりました。日本の先進的銀行としてデリバティブ取引を盛んに行っていた長銀の破綻は、全世界の銀行の連鎖倒産を引き起こす恐れがありました。そのときの長銀のエクスポージャーがいくらだったかよくおぼえていませんが、ISDAマスター・アグリーメントですべてのデリバティブ取引がカバーされていたので、特別公的管理がISDAマスター・アグリーメント上、オートマティック・アーリー・ターミネーション(AET)、すなわち取引の自動解約・一括清算をトリガーする倒産事由=デフォルト事由に該当するのかどうかが真剣に議論されました。もし一括清算となれば、デリバティブ取引は勝ち負けのはっきりしたゼロサムワールドですから、取引の相手方で巨額の損失を抱えるところがでてくるかもしれません。そうすると、相手方である銀行がこんどは破綻に追い込まれ、破綻の連鎖が全世界に広がることを、日米政府当局は真剣におそれておりました。日米政府は相当の協議を行いました。日本政府はわざわざ長銀の債務は完全に履行されると公表し、また、ISDAマスター・アグリーメント上のデフォルト事由に該当しないとする長銀側代理人弁護士の意見書がばらまかれたのでした。

当時、特別公的管理の申立てはデフォルト事由に該当するという見解のほうが有力であったのですが、一括清算のトリガーを引いたのは1,2行で、あとの銀行はチェースを含め、デフォルトとしなかったのです。日本政府の債務履行の保証ともとれる宣言は効を奏し、デリバティブ取引の一括清算を起爆剤とする負の連鎖は発生しなかったのです。(追記:当時の記憶によります。もしかしたら一括清算のトリガーをひいたところはゼロで与信枠を切っただけだったかもしれません。あやふやな記憶で申し訳ありません。)

長銀の資産査定については、最近の長銀元首脳に対する有価証券虚偽記載罪の控訴審判決で検察側が敗訴し、そのことから長銀を破綻させたのは必要がなかったという方もおられるようですが、国有化にあたって政府がとった手段、また、公的資金の注入は、負の連鎖の発生を防止した点で賢明な判断であったと思います。

それに比較すると、今回のリーマンについて米国政府が公的資金の注入をためらっているのは理解に苦しみます。チャプター11でトリガーが引かれれば、リーマンクラスのエクスポージャーは大変なものであることが想定されるでしょう。確かに、リーマンの抱えている証券化商品のメザニン部分、劣後部分の劣化の懸念はあるでしょう。しかし、それであるがゆえに、リーマン支援を打診されている各国主要銀行は二の足を踏んでいるのであって、公的資金なしに支援策がまとまるはずもないと思います。もともとこんな事態になったのは、米政府が住宅バブルをほったらかしにしておいたことにあるのであって、いまや公的資金導入以外に手はないはずです。

リーマンよりはるかに影響度がすくないベア・スターンズには導入しているのに、いったいこのちぐはぐな対応は何なのでしょうか!米国政府金融当局の姿勢は、厳しく指弾されなければなりません。そんなことをやっているから、AIGの株価は急落。しかしこのままではAIGだけではすまないでしょう。リーマンとデリバティブ取引を行っている相手方はすべてエクスポージャーが現実化するのです。なぜ、米国政府は日本のバブル崩壊時の対処方法についての教訓のうち、重要なひとつを忘れているのでしょうか。

日本政府も米国政府に強く迫るべきではなかったかと思いますが、どのような働きかけがなされたのか、まったく報道がありません。ドルと米国債が急落すれば、甚大な被害をこうむるのは日本と日本国民そのものなのです。

リーマンのエクスポージャーが低いことを祈りたい気持ちですが、すでに日銀が2兆5000億円も市場に流動性をあたえなければならない事態に陥っているのは、日本市場にすでに相手銀行に対する疑心暗鬼が蔓延しているということの証左です。今後のマーケットの動向が注目されます。

<追記>

金融庁は「米国は弱い銀行は早く淘汰されるほうが市場が安定すると考えているのだろう」と評価したという記事がでています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080916-00000139-mai-bus_all

しかし、そんな見方はリーマンのエクスポージャーがどれくないなのかよくつかんでから言ってほしいですね。市場にそんな話がでてこないのは、当局もまだわかっていないということでしょう。あまりにも楽観的で、唖然とします。この記事によると、米当局の方針は「危険な賭け」と懸念を国際金融関係者が表明しているとありますが、同感です。

2008年9月13日 (土)

XLの倒産と英国のDIPファイナンスの関係は?

ロンドンに今来ていますが、ついた翌日に2つのビッグニュースが飛び込みました。ひとつは英仏をつなぐトンネルの火事で、これは物流と旅行者に大きな影響を及ぼしているようです。

もうひとつは英国第三のホリディツァーオペレーターのXLが倒産手続に入ったというビッグニュースで、英国のテレビはこのニュース一色でした。というのも、海外旅行中の1万9,000人ものツァー参加者が足止めをくってしまったからです。

倒産法の視点から興味があるのは、倒産が燃料の高騰とファイナンスを受けられなくなったことから、と報道されている点です。1万7000人もの従業員を解雇したと報じられているXLの事業規模からすれば、日本的感覚では民事再生でDIPファイナンスがついて、飛行機が全部止まってしまうようなことはないのでは?と思われるのですが、どういうことだったのか興味が非常にわきます。

米国では航空会社がチャプター11に立て続けに入りましたが、このときもDIPファイナンスでオペレーションは継続していたと記憶しております。英国の倒産法はほんのさわりだけしか知らないので、DIPファイナンスもなく、いきなりadministration、つまり清算に入ったのはどうしてなのか?数週間かけて検討したと清算人のKrollの代表者がBBCで説明していましたが、この変の事情はあまり明らかではありませんでした。英国にいる間に理解したいと思います。

(追記)

Wikipediaを調べましたら、こう書いてありました。

The administrator must act in the interests of all the creditors and attempt to rescue the company as a going concern. If this proves impossible he must work to maximise the recovery of the creditors as a whole.

これが正しいとすれば、非DIP型の再生手続にみえますね。

また、足止めをくった旅行者は8万5000人だそうです。フロリダ、ギリシャ、カリブ海諸島などでバカンスに出かけた人々が帰る方法を探しているようで、帰りついた人はまだ少数にとどまっています。XLは自前のパッケージツァーを自前の航空会社で提供していました。航空会社のオペレーターの倒産の影響の大きさはすごい!

2008年9月10日 (水)

内部統制の「重要な欠陥」と取締役の善管注意義務-頭出し予告編

財務報告に係る内部統制の「重要な欠陥」の意義については、本年7月の日本内部統制研究学会でも取り上げられ、実務的にも上場企業が内部統制構築から評価に入ってきている今の時期にとてもかなう、きわめて重要なトピックです。

このテーマについて、私は本年7月25日に一度講演をさせていただきました。そのときの準備で議論を整理して「いろいろ課題が多いな」と思ったのですが、上場企業の監査役として内部統制構築・運用を監査しなければならない立場でもあり、他人事ではすまないことになっておりまして、日頃から頭を離れません。

10月14日に『内部統制評価と「重要な欠陥」』というテーマで再度講演をすることになっておりますが、そのときまで先の講演以後、調べたことなど付け加えてお話をし、また参加者の方々と議論をしたいと思っておりますので、お時間のある方は是非お越し下さい。

さて、このスレッドのタイトルですが、これは「重要な欠陥」の意義が明確になったあと、さらによく検討しなければならないテーマです。これについて、最近、葉玉匡美先生が人気ブログ「会社法であそぼ。」で論じられています。

結論として、葉玉先生は、「重要な欠陥」、「記載される不備」、「記載されない不備」、「不備なし」という金商法の概念は、過失の有無とは直接の関係がない概念であり、せいぜい、重要な欠陥や不備を指摘されたことが、取締役の予見可能性を基礎付ける間接事実になるという程度のことであり、それをもって「重要な欠陥が善管注意義務になる」「重要な欠陥を是正する義務がある」という表現をするのは、法的には、不正確であるといわざるをえないとされております。

この葉玉説に対して私はやや異論があるのですが、明日からの海外出張のため、処理すべき仕事に追われていて、今これを書く時間がありません。タイトルだけの頭出しで申し訳ないのですが、自分に動機づけをするためにも、予告だけさせていただき、本日はご勘弁ねがいます。

(まだブログ立ち上げたばかりですから、期待される方もあまりおられないので、ほんとに「備忘」として書き込みました。)

2008年9月 9日 (火)

プリンシプル・ベースの規制って何?

ハミルトン、残念だったね~(^^;)。25秒ペナルティーくって3位とは。フェラーリ・ファンはにんまりでしょう。

さて、小泉内閣のもとで強力に推し進められたはずの規制緩和ですが、最近はじわじわと規制強化の動きが進行しているようです。日本経済新聞の2008年9月8日朝刊の9面の「経営の視点」というコラムに、三宅伸吾編集委員が「静かに進む規制強化ールールは自ら創ってこそー」という記事を書いて、そのことを論じています。

三宅さんは官僚が精緻に作り上げた(と思われていた)ルールが規制緩和の進行でもうまく働いておらず、逆の方向に動き出している現状を描写しています。そして、今春、金融庁が預金預入機関の監督指針のひとつとして「誠実かつ職業的な注意深さをもって業務を行う」といった抽象的な理念を定めたことについて、「具体的にどのような規制が妥当なのかわからなくなったためだろう」という私のコメントを引用しております(>_<)。

なんや、この私のコメントは?

ちょっと私の発言の趣旨がわかりにくいかもしれませんが、三宅さんはここではプリンシプル・ベースの規制のことを言おうとしているのです。金融規制の世界では最近ずいぶんと強調されつつある「プリンシプル・ベース」の規制ですが、金融庁の監督指針はこの原則をいおうとしたと三宅さんは指摘し、私はプリンシプル・ベースという考え方が出てきた一つの背景として、複雑な金融取引の発達やIT化の進行により規制当局も追いつくことが難しくなってきたことも原因です、といいたかったわけなのです。それでは、「プリンシプル・ベースの規制」とは何なのでしょうか。わかったようでわからない、というのが素直な私の印象です。

技術革新や金融イノベーションの進行は、金融取引の事象を非常に複雑にし、そこでは非常に細かいルールをつくらないと、本来健全な取引も規制してしまうことになりがちです。いい例が、空売り規制です。証券会社の社内弁護士のときに細かく検討する機会がありましたが、一筋縄ではいきません。

そこで、規制を作るほうもよほど金融実務に通じていなければなりませんが、残念ながら金融庁に出向して立法を担当している若い弁護士や官僚は正直言って金融実務に通じていません。ここ数年、なんでそんな立法するの、という法律改正が私の専門とする分野で起こりましたが、そのたびに政省令レベルでなんとかセーフハーバーをつくってもらおうと社内弁護士、業界団体などの関係者が一生懸命当局に説明しているのが実情でした。しかし、法律がいちどできてしまうと、法律の中身を実質変更してしまうようなことを政省令で定めると、法律の委任の範囲を超えてその適法性が疑われることにもなりかねないということもあって、不満が残る政省令しかできないということが結構おきました。

プリンシプル・ベースは、例えば「投資家保護」という行動準則を定めて、そこから業者や業界団体がベスト・プラクティスを自分たちで自主的に検討してルールメイクしようという発想なので、「実務を知らない連中にわけの分からないルールをつくられるよりずっといい」というわけで業界一般的には歓迎されているのですが、ではそこにいう「プリンシプル」とはどんなものなのか、ということはちゃんと議論されていないように思います。それに、「プリンシプル」となるもの自体も、例えばEUの金融市場指令(MiFID)をみればわかるとおり、相当の年月を掛けてかなりの厚さになっていますし、また、英国のFSAのハンドブックをみれば分かるとおり、びっくりするほど分厚くなっており、いったいこれだけのルールを目の前にしたときの「プリンシプル」ベースの規制がどんな世界になるのか、私には見えていません。

ある著名な大学の先生が、「『プリンシプル・ベース』は下手をしたら裁量行政に後戻りしてしまう。官僚がいろいろなところに天下り、『プリンシプル・ベース』の名のもとに裁量権を行使しまくったらと思うとゾッとするので、自分はあまり大きな声でいわないことにしている」と話されたのを聞いて、「なるほど」と思ったことがあります。非常にたくさんの政府関係の仕事をされているので、びっくりもしました。

皆さん、英国FSAのハンドブックをみてから、プリンシプル・ベースの規制ってなんなんだろうか、よく考えたほうがよろしいのではないでしょうかね。これをみていると、しっかりしたルールが創られている土台があって、初めてできるように思うのですが。日本なんかパブコメさえ政省令1ヶ月前ですよ。もっと、この辺から考えたほうがいいのではないでしょうかね~。

2008年9月 7日 (日)

スパ・フランコルシャンのドラマ

F-1のスパ・フランコルシャンのレースが終了しました。やはり伝統のスパ・ウェザーのせいで意外性のある幕切れとなりましたね。

予選4位と出遅れたフェラーリのキミ・ライコネンが2周目までマクラーレンのルイス・ハミルトンを抜いてトップにたって、ぐんぐん差をつけて、一時は6秒以上の差になったのに、最後の給油後はルイスにどんどんつめられていって、ラスト3周目となったとき、あの気まぐれなスパの空から水滴が落ちてきたときに最後のドラマが用意されていました。

ルイスがもう少しでオーバーテイクしそうになったのを、キミは最後のシケインで見事にルイスをプッシュアウトしました。外に押し出されシケインをショートカットしたルイスがホームストレッチで先行したため、一度先頭をキミに譲ったかのように見えました。しかし、キミの挙動が乱れたところをルイスは抜いていき、残り2周の周回にはいっていきました。

しかし、周回にはいってまもなく、おそらく雨のせいでコースアウトしたニコ・ロズベルグがコースに戻ろうとしてはいってきたのをルイスがよけようとして、その間隙をぬってまたキミが抜いていくというすざまじい展開。ルイスが大きく遅れたので、これはキミがいただきだ、と思った瞬間にスピン!あえなくスピンして左のウォールにノーズをあててリタイヤ。ルイスはそのまま雨のなか、滑る車をなんとか操作しながらチェッカー・フラッグをうけるという本当にドラマチックな展開でした。

いつも思うのですが、ルイスは非常に攻撃的ですね。直線でキミにポジションを返したのかどうかは本当に微妙だと思います。キミの挙動が乱れたのは、ルイスがポジションをちゃんと返さないままに車をキミのほうにすこし振ったためのように見えたのですが、現在、これを審議中というわけで、結果がどうなるか注目されます。もしルイスが失格になったらフェラーリのフェリペ・マッサが優勝になり、俄然有利になります。

これだからF-1はやめられません。

はじめまして

ともです。ブログをはじめることにしました。思いつくまま、自分の関心のある事柄を書きとめていこうと思っています。どんなことに関心があるかというと、

○金融商品取引法、会社法、内部統制、倒産法など

私の弁護士としての専門分野なので当たり前ですね。

○政治と経済

民なくして政治なし、政治なくして国家なしです。経済・金融政策次第で国は変わります。とっても大事なことですよね。

○F-1、フォーミュラニッポン、スーパーGT(SGT)などのカーレース

レースが好きでその魅力を皆さんと分かち合いたいわけです。

○ダイビング

海はきれいですよ!初心者ですが水中写真、がんばりたいです。

○歌舞伎と音楽

すばらしい日本の芸術、歌舞伎!感動して涙しちゃうことも多いです。音楽はクラシック中心ですね。

というわけでよろしくお願いします。

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